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2018.06.20

ライフ

ジムニーに乗って気まま旅。男の憧れを描くマンガ『北北西に雲と往け』

「大人のCOMIC TRIP」を最初から読む

気の趣くままに旅路を紡ぐ。それは男にとって、永遠の憧れだ。何にも縛られず、風のにおいや雨の気配、夜空の美しさなどが、くっきりと輪郭を持ち、より鮮明になる。非日常のなかに身を置くことで、普段は見過ごしてしまいがちなものに気づくことができるかもしれない。

『北北西に雲と往け』(入江亜季/KADOKAWA)は、そんな旅情をかき立てる作品だ。主人公は17歳の探偵・御山 慧(みやま けい)。アイスランド島を舞台に、愛車を駆って気ままに仕事を続けている。

『北北西に雲と往け』(入江亜季/KADOKAWA)

17歳とはいえ、慧の男っぷりは相当なもの。ときにクルマが横転してしまっても慌てることなく、堂々と野宿を決め込む。沸かした湯でコーヒーを淹れ、焼いたウインナーをパンに挟み食す。淡々とした描写にもかかわらず思わず引き込まれてしまうのは、そこに「自由」が描かれているからだろう。

予測不可能なトラブルにも臨機応変に対応する。それこそが、旅の楽しみのひとつと言えるかもしれない。

また、彼が愛車として選んだのが「ジムニー」であることも心をくすぐる。無駄をそぎ落とし、走破性を重視した武骨でシンプルな日本車。これもまた旅の相方にふさわしい。

ちなみに、慧は「クルマと会話する」という特殊能力を持っており、作中でも時折意思疎通を図る様子が描かれる。いささかファンタジックではあるものの、それはつまり男と車との間には絆が芽生えるということのメタファーだ。

ひとり旅をテーマにしたかのような本作だが、物語が進むと、慧の弟・三知嵩(みちたか)が何らかの事件に巻き込まれていることが明らかになる。そして、真相を追う慧。ミステリーとしても読み応えがあるのも、本作の熱いポイントだ。

レジャーシーズンも目前。若さと自由を存分に謳歌する主人公に己を投影し、旅路を胸に描いてみるのも、また一興といえるかもしれない。

五十嵐 大=文
’83年生まれの編集者・ライター。エンタメ系媒体でインタビューを中心に活動。『このマンガがすごい!2018』では選者も担当。



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