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AIと共存する世界。マンガ『AIの遺電子』で向き合う、未来の倫理観

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ここ数年、AI技術の発展が目覚ましい。昨年開催された「プロ棋士vs.将棋ソフト」の対戦では、ついに人間が敗れてしまった。家庭にはAIを搭載したスマート家電が導入され、我々の生活を手助けしてくれている。一昔前は、フィクションの世界のものとして描かれていたAIが、実に身近な存在になりつつあるのだ。

それらの登場は、人間と同じような知性・感情を持つヒューマノイドがいる世界をも具体的に予感させる。おそらく、それは遠い未来の話ではないだろう。今回紹介する『AIの遺電子 RED QUEEN』(山田胡瓜/秋田書店)は、まさにそんな近未来を描いた作品だ。

『AIの遺電子 RED QUEEN』(山田胡瓜/秋田書店)

本作は昨年8月まで連載され、好評を博した『AIの遺電子』(全8巻)の続編。ヒューマノイドの専門医・須堂光(すどう・ひかる)が、彼らが抱える問題を治療し、人間とAIとの在り方に迫った物語である。

前作は、オムニバス形式でストーリーが展開。彼に助けを求めるのは、人間と同じように悩みを抱えるヒューマノイドたち。ある者は人間になれない自分を否定し、ある者は「感情」を取り除いてほしいと願う。須堂は彼ら一人ひとりの苦悩に向き合い、それを治療する。

そして、続編となる本作で描かれているのは、母親の「コピー人格」を探し求める須堂の姿だ。近未来では記憶の移植も容易になり、生活に困り“人格を売る”という闇取引も存在していた。自分のために人格を売って生活費を稼いでいたことを知った須藤が足を踏み入れたのは、内戦中のロビジアという国。やがて彼は、人間至上主義者とAI優先主義者が対立する紛争国で、大きな野望に巻き込まれていく。

本作の根底に漂っているのは、「AIとどう向き合うべきか」という根本的な問いかけだ。それに脅威を感じる者もいれば、悪用しようと企む者もいる。一方で、AIにも人格や人権を認め、人間同様に扱う者もいる。確かに、前述した棋戦のように、AIが人間の能力を凌駕することは起こりうることだろう。実際、その現実を危惧する声もある。しかし、それをなかったことにすることはできない。AIはすでに生活の一部となりつつあるのだから。そこで肝要となるのは、どう付き合っていくのか、だ。

本作では、多種多様な価値観を持つ人間、そしてヒューマノイドが登場し、AIが存在する未来との向き合い方に揺さぶりをかけてくる。彼らは、近い将来の我々の姿だろう。そして、その現実をより真正面から受け止めなければならないのは、これからの時代を生きる子供たちだ。

決して「おとぎ話」だと読み飛ばすことができない本作。著者がIT系メディアの元記者ということもあり、細緻にわたるリアリティは侮れない。親世代としては、子供たちが生きていくことになるかもしれない近未来の姿を、本作で予習しておく意味でも一読する価値があるといえそうだ。

五十嵐 大=文
’83年生まれの編集者・ライター。エンタメ系媒体でインタビューを中心に活動。『このマンガがすごい!2018』では選者も担当。

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