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2018.05.25

ライフ

職場の20代に「副業していいですか」と言われた


職場の20代がわからないVol.14
30代~40代のビジネスパーソンは「個を活かしつつ、組織を強くする」というマネジメント課題に直面している。ときに先輩から梯子を外され、ときに同期から出し抜かれ、ときに経営陣の方針に戸惑わされる。しかし、最も自分の力不足を感じるのは、「後輩の育成」ではないでしょうか。20代の会社の若造に「もう辞めます」「やる気がでません」「僕らの世代とは違うんで」と言われてしまったときに、あなたならどうしますか。ものわかりのいい上司になりたいのに、なれない。そんなジレンマを解消するために、人材と組織のプロフェッショナルである曽和利光氏から「40代が20代と付き合うときの心得」を教えてもらいます。

「職場の20代がわからない」を最初から読む



 

若者の会社への帰属意識は、年々低下している


今回のテーマは、「帰属」です。「史記」の「忠臣は二君に仕えず」という考え方は転職も一般化した現代では遠い昔の価値観ですが、それでも「副業」と聞くと、同時に二君に仕えているかのように感じて違和感を持つ我々オッサン世代もいまだ多いのではないでしょうか。

一方、若者はそうではないようです。ここが自分の「居場所」「ホーム」だ、と帰属意識を持つ場や組織のことを「準拠集団」といいますが、若者は会社や職場をそうとは思わないようになってきています。デロイトトーマツコンサルティングの調査によれば、「現在の属する企業に勤務する期間は」という質問に対し最大2年間と答える人が年々増え3割にまでなっています。「今の会社で働き続けたいですか」という質問も、「できれば今の会社で働き続けたい」という回答が2015年には6割超だったのが、2018年には5割程度と1割減となっています。

 

帰属意識が低下すると、若者がどんどん制御不能に


会社への帰属意識の低下は、何をもたらすでしょうか。ひとつは、会社が社員の行動を制御しにくくなります。人は自分が「準拠集団」と信じているところの、価値観や信念や行動規範を守ろうとするものです。会社が準拠集団でなくなれば、会社の中で評価されたいとか、承認されたいとかもあまり思わなくなります。そのため、会社が掲げる企業理念やビジョンや戦略などを、自分も実現することに尽力しようとはなかなかなりません。

残るのは、自分にとっての利益がどうか、ということ。会社がどうなろうが構わない。自分の給料がどうなるか、働き心地はどうなるか、という利己的なメリットだけに焦点が当たり、会社の全体最適を考えた協調行動を取ろうとはしなくなります。最終的にシナジーがなくなっていけば、組織の生産性は落ちていくかもしれません。このように、若者の会社や職場への帰属意識の低下は、ある面では業績を下げる要因になります。

 

低下している理由のひとつに「働き方改革」がある


では、なぜ若者の帰属意識が低下してきたのでしょうか。ひとつは単純な理由ですが、終身雇用(超長期雇用)がとうに崩壊し、「会社への忠誠心を。最終的には会社があなたのことを守るから心配するな」という会社と社員の心理的契約がなくなってしまったからでしょう。会社はemployment(雇用)を保証するのではなく、employability(雇用される能力)を保証するという方針が多くなってきています。そうなれば、帰属意識も低下するのは当然でしょう。

また、これに輪をかけて帰属意識の低下を促進するのが、いわゆる「働き方改革」です(念のため先に述べておきますと、これからの話は「働き方改革」の否定ではなく、副作用のことです)。「働き方改革」のテーマはたくさんありますが、特に本稿に関係するのは、「残業制限」ではないかと思います。そういうとおそらく「一緒に働く時間が減るから」ということをいうのではと思われるかもしれませんが、私が思うのは別の問題です。



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