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職場の20代に「異動させられるなら辞めます」と言われた

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職場の20代がわからないVol.13
30代~40代のビジネスパーソンは「個を活かしつつ、組織を強くする」というマネジメント課題に直面している。ときに先輩から梯子を外され、ときに同期から出し抜かれ、ときに経営陣の方針に戸惑わされる。しかし、最も自分の力不足を感じるのは、「後輩の育成」ではないでしょうか。20代の会社の若造に「もう辞めます」「やる気がでません」「僕らの世代とは違うんで」と言われてしまったときに、あなたならどうしますか。ものわかりのいい上司になりたいのに、なれない。そんなジレンマを解消するために、人材と組織のプロフェッショナルである曽和利光氏から「40代が20代と付き合うときの心得」を教えてもらいます。

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「配属リスク」を恐れる若手に、オッサン世代はどう対処すべきか

今回のテーマは「配置」です。いかに若手人材を本人の希望するところや、適したところに配属してあげることができるのかについて、考えてみます。新卒採用で、特に大企業に決まった内定者の間でよく使われる言葉に「配属リスク」というものがあります。これは、全体としては安定した大企業に入ったことに満足していても、大企業だからこそ部署や職種、地域含めて、「どこに飛ばされるかわからない」という不安を表現したものです。

この「飛ばされる」という言葉自体に、大都市圏や本社の花形部署、花形職種以外になることが嫌だという言外の意があります。我々オッサン世代には、「どんな仕事でも頑張りますと言うのが若手だろう」「何でもやってみなければ、わからないよ。とりあえずやってみる、が基本だ」などと言いたくなる方もいるかもしれませんが、そんなことを言っていると「この社畜上司!」と思われるのが関の山です。


過半数の若手が「どこにも行きたくない。グローバルなんてもっての外」

配属を「リスク」だと感じ、「希望が満たされないのであれば辞める」というほどの強硬姿勢をもつ若手が増えている背景には、さまざまな原因が考えられます。まず、日本の少子化も長く続き、一人っ子も多く、地元や親元から離れたくないという人が増えています。むしろ親が離さないというケースも多いでしょう。

また、グローバル化がいくところまでいった現在においてさえ、「海外で働きたくない」という人が6割を超えている(産業能率大学による最新調査)状況です。留学や旅行はしても、海外では働きたくないという人が過半数なのです。採用ページなどでグローバル展開をうたっている会社は多々ありますが、自分たちはそれがアピールのつもりでも、若手からすれば「えー、海外にいかなきゃいけないなら嫌だな」と逆効果。要は、若手は“自分が育ったところから、どこにも行きたくない”のです。まず、これが地域間異動や出身地以外の地域への配属への壁となる若手の思考です。


大人に「何がやりたい」と問われ、「やりたいこと」を捏造する若手たち

もうひとつの背景は、最近のキャリア教育や就活にあります。そこでは、我々オッサン世代をはじめとする大人たちが、口を開けば「君は何がやりたいの?」と問い続けます。若手は最初、その言葉に恐れをなします。というのも、そんなものは無いからです。これまで2万人の若手の面接をし、今でも日々相談を受けている私の感覚からすると、20代前半時点で「本気でやりたいこと」がすでに存在している人は1〜2割ではないでしょうか。逆に、もっとも多い悩みが「やりたいことがわかりません」です。

私は、「やりたいこと」は探すようなものではなく、「気がつけばそこにあるもの」だと思っているので、パッと考えて無いなら無いのでしょう。そして、それは決してネガティブではなく、あらゆるキャリアのチャンスにオープンな状態なのですから、それでいいのです。それなのに、大人が散々「何がしたい」と聞くので、何かなくてはいけないと真面目に考えた若手は、自分の志向を即席で作り、「僕はこれがやりたいのだ」と自己洗脳して、「捏造されたやりたいこと」を信じ込むのです。そんな若手が、意にそぐわぬ配属には抵抗するのは当然でしょう。


採用後に無理やり転勤を納得させるのは難しい。現地採用の強化が根本的解決策

さて、現状や原因がわかったところで、どのような対処をすればよいでしょうか。働く場所、地域が変わる転勤については、正直、私もものすごく実効性のある解決策は持っていません。「付き合っている人がいるので、転勤は嫌です」とか、「友人と離れたくない」と主張する若手に、「遠距離になって気持ちが離れるなら、それは本物じゃないのでは」「LINEとかでいつでも話せるじゃないか」などと諭そうものなら、パワハラ扱いされるリスクがあります。

「地方に行けば、組織も市場も規模も小さいし、人手不足で何でもしなければいけないので、ひとつ上の仕事ができて成長するぞ」とか、「大都市よりも物価も安いしお金がたまるぞ」とか、一部の人には魅力に思ってもらえるかもしれませんが、それ以上に「どこにも行きたくない」と考える人の方が多いことでしょう。

ですから、根本的な解決策は配置ではなく、採用にあります。採った後に考えを変えてもらうのはかなり難しい。できるだけ現地で必要な人を必要な数だけ採用できるように頑張るということです。


若手の「捏造されたやりたいこと」を、矛盾だらけでも否定せずに傾聴すべし

ただし、若手が考え方を変える可能性はまだ残っています。

というのも上述の通り、本人希望はそもそも根っこの無い「捏造されたもの」かもしれないからです。それを若手に気づいてもらえれば、「確かに、今まで思い込んでいた自分のやりたいことに、こだわりすぎない方がチャンスをつかめるかもしれない」と思ってもらえるかもしれません。そのために、若手が自分にとって大事だと思い込んでいることを、まずはしっかりと聞き出すことです。

その際、矛盾だらけでも、事実誤認があっても、即座に否定したり修正したりしてはいけません。まずは、若手が何を思い込んでいるのか、誤解しているのかわからなければ、それをひっくり返すことができないからです。

とにかく、考えていることをすべてダウンロードしてもらうために、ひたすら聞き続けましょう。「なぜ、その仕事をしたいのか」「それはどんな経験からそう思ったのか」「他にも同じことを満たせる仕事はないのか」「新しい部署や仕事ではそのことは満たせないのか」。これらの質問を、詰問調にならずに、ゆっくりと優しく聞いてあげて、自分で答えを探してもらうのです。

そして、どれだけ探しても、そこに根本的な答えが見つからなければ、ようやく自分の考えに根っこはなく、そこまでこだわる必要がない、と思ってくれるかもしれません。


曽和利光=文
株式会社 人材研究所(Talented People Laboratory Inc.)代表取締役社長
1995年 京都大学教育学部心理学科卒業後、株式会社リクルートに入社し人事部に配属。以後人事コンサルタント、人事部採用グループゼネラルマネジャーなどを経験。その後ライフネット生命保険株式会社、株式会社オープンハウスの人事部門責任者を経て、2011年に同社を設立。組織人事コンサルティング、採用アウトソーシング、人材紹介・ヘッドハンティング、組織開発など、採用を中核に企業全体の組織運営におけるコンサルティング業務を行っている。


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