2018.02.05
LEISURE

軽んじるヤツは笑われる。コンビニが“上質”の集積地になる理由

未知のコンビニVol.1
身近すぎる存在は、軽んじられる。コンビニなんて、その最たるモノ。「まさかこんなモノが潜んでいたなんて……」。いつもは見ない隣の棚を違う視点から眺めれば、そんな発見が数多ある。さて、知らないと損をする、コンビニの魅力を深掘りしていこう。

物心ついた頃から当たり前のようにあるコンビニ。便利な存在な反面、なんとなく割高で“間に合わせ”的なイメージをお持ちの方もいるのでは? けれど、今のコンビニは“何でも買える”のは当たり前、さらなる次元へと足を踏み入れている。

連載第1回となる今回はまず、なぜコンビニに注目すべきかを深掘りする。これを知れば見方が変わるに違いない。日頃はあまり気付かない進化したコンビニについて、コンビニ記者の吉岡秀子さんに聞いた。

 

“他社との差別化”という使命が生み出した、ハイクオリティ商品の数々

「そもそもコンビニは、“競合他社と差別化しなければいけない”という宿命を背負っている業態。各社ともハイクオリティの商品を作るという目標があります。そのため、商品開発のために一流メーカーが集まり、限られた棚の中には高品質の商品がズラッと並んでいるのです」。(吉岡さん・以下同)

コンビニはコンパクトな売り場で勝負するため点数は少ないが、各社の特色を打ち出した高コスパ商品を売り物としている。もとよりコンビニの商品ラインナップは、高いクオリティを求めたものが選抜されていると心得ておくべきなのだ。

また、コンビニは商品を“売る”業態で、“作る”システムは持っていないので、商品を開発する際にはコンペを開くことが多い。各メーカーが持ち寄った技術力の中から、もっとも商品や客層に合ったものを選択するため、ここもクオリティがグンと上がるポイントとなる。つまり、小さな店舗の中には、最新技術が集結しているとも言える。

 

震災以降、コンビニは「商店」から「生活インフラ」に変化

コンビニが超高コスパ商品の集積地であることは理解できたが、吉岡さんは「コンビニは、いまや物販だけの店ではない」とも話す。

「東日本大震災以降、コンビニは物を買うだけの店ではなく、生活インフラとして認識されてきています。震災のタイミングで、これまであまり来店していなかったシニアや女性、『高いから使わない』と敬遠していた人が、コンビニを見直し、客層も広がってきているんです」。

震災後、被災地域の商店は営業を止めざるを得なかったが、コンビニは強固な物流網と他地域の工場からの応援もあり、いち早く弁当などを並べることができた。また、ほとんどの店舗に蓄電システムがあるため、計画停電の影響をあまり受けず、交番より安全性が高いという気付きももたらした。近くて便利なだけでなく、緊急時に生活を支える基盤になることを証明したのだ。

もともと幅広い商品が揃い、税金や光熱費も支払える便利さがあったが、震災後はクリーニングサービスやイートインスペースを提供するコンビニも増えてきている。暮らしの拠点となり始めているコンビニのサービスや商品をくまなく知っておけば、いざというときに頼りになるだろう。

「昔は『コーラを買う』といった目的買いの人がほとんどだったので、“コンビニの滞在時間は3分”が定説だったんです。でも、今は時間の使い方も働き方も変わって、ゆっくり買い物をする場所になってきています」。

 

“健康志向の高まり” “IoT”時代の流れを汲み取ったサービス展開も

吉岡さん曰く、「コンビニは、その時代のライフスタイルに合わせて“変わる”業態である」という。

「残業ゼロを目指す動きがある現代は、深夜に腹ペコのビジネスマンがコンビニに行くことも減っています。そのため、ドカ食い系のお弁当ではなく、帰宅後のちょい飲みに適した高品質のお酒や総菜が増えてきているのです」。

一店舗で、平均2500~3500点の商品が並ぶ。一見膨大な数のようだが、これらは世の中のニーズに応じて超厳選された逸品ばかり。雑誌コーナーには、景気がいいときは財テク系の書籍、不況の間は癒し系写真集や名言集が並ぶ。棚を見るだけで景気の状況やトレンドが押さえられるコンビニには、ビジネスのヒントが隠されているとも言える。

「糖質制限ブームの影響で米飯があまり食べられなくなっている今、おにぎりやパンも変化してくるでしょう。これまでコンビニとは相反するテーマだった“健康”を掲げて、変わっていくはずです。今はドラッグストアでもおにぎりが買える時代なので、コンビニ以外の店舗との差別化も図られていくと思います」。

ローソンでは1月23日から、1/2日分の野菜が摂れるチルド弁当・調理麺「もっと! 野菜シリーズ」が発売され始めた。まさに、健康志向の高まりに応じて、開発された商品だ。

最近では、IoTやAIを活用した次世代コンビニの構築も始まっている。つい先日、AmazonはAIを利用したレジが必要のないコンビニを発表したが、ローソンもこれに追随する動きが見られる。これこそ、時代の流れやライフスタイルの変化に即した結果のひとつと言えるだろう。「2020年、東京オリンピックぐらいまではコンビニが激変していくと思う」と吉岡さんは語る。

トレンドをいち早くキャッチし具現化しているコンビニ。ただ漫然と買い物をするのではなく、マーケティング視点で考えると、仕事に生かせるヒントが見つかるかもしれない。さらに、ハイクオリティな商品が並んでいることを知れば、割高なイメージも払拭されるだろう。日常的に買うものだけでなく、普段見ない棚もチェックしてみると、新たな発見がありそうだ。

次回からは、吉岡さんの推薦によってハイクオリティな商品たちの具体例をお届けする。各業界のトップランナーたちの技術の粋をご覧いただきたい。

 

【取材協力】
吉岡秀子
コンビニ記者、フリーライター。関西大学社会学部卒業後、会社員生活を経て、フリーライターとして独立。2000年代前半からコンビニ業界に密着した取材を続け、ビジネスや暮らしに役立つコンビニ情報を、各メディアや講演を通じて発信。著書に『セブン-イレブン 金の法則』(朝日新書)など多数。

 

取材・文=有竹 亮介(verb)

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