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2017.07.24

ライフ

どうしても合わないケアマネ、変更してもらえる?


あまり考えたくはない未来の「もしも」が、人生には必ずある。夫婦のこと、子どものこと、両親のこと、会社のこと、健康のこと、お金のこと、防災のこと――心配しだすとキリがないけれども、見て見ぬフリをするには、僕たちもそう若くはない。今のうちから世の中の仕組み、とりわけセーフティネットについて「知っておくこと」は、自分の大切な人たちを守るためにも“大人の義務教育”と言えよう。37.5歳から考える未来の「もしも」、全6回にわたり「家族の介護」について考えていきたい。
「37.5歳のもしも……家族に介護が必要になったら?」を最初から読む
介護の悩みは、家族にとっては打ち明け辛いもの。相性の合わないケアマネであれば、なおさらだ

ケアマネジャーの仕事は、ケアプランをつくるだけではない

本人・家族にとって大切なパートナーであるケアマネジャー。でもケアマネがどんな仕事をしているのか、専門的すぎてよく分からない方も多いのではないでしょうか。ケアマネが行う一連の業務プロセスを「ケアマネジメント」と言いますが、まずはその流れを説明してみたいと思います(なるべく専門用語を使わずに書きます)。
ケアマネジメントには、大きく4つの流れがあります。1)利用者の状況把握と課題・ニーズの整理 2)適切なケアプランの作成 3)サービス事業者との調整 4)ケアプラン目標に対する実績がどうだったかの評価 になります。
もう少し言えば、「現在どんなことで困っているのか、今後どんな生活を実現したいのか」を整理した上で短期・長期の目標を決める。そして目標を実現するためにどのような介護サービスや本人・家族の自助努力が必要かを決めて関係者合意のもとに実行し、その振り返りを定期的に行う――といった流れです。うーん、まだややこしいですかね。

ケアマネが「話を最後まで聞いてくれない」「勝手に決めつける」のはNG

ケアマネは介護保険サービスを利用する際にケアプランを作成してくれる人、という理解は間違いではないものの、それはあくまで業務の一部。本来のケアマネジメントは「利用者が地域の中で自立した生活を送るために、それを阻害している要因を見つけ、その課題解決を継続的に図っていくもの」ですので、極端にいえば介護保険サービスを使わずに課題解決しても良いのです。
また、本人・家族が持っている「強み」を活かし「生きる力」を最大限に引き出すような働きかけを行うことがケアマネジメントの目的とされているので、ケアマネと本人・家族の関係は、お互いに信頼できる対等なパートナーであることが本来望ましいといえます。
もし担当ケアマネに対し「話を最後まで聞いてくれない」「原因を勝手に決めつける」「必要ない介護サービスまで強要された」「そういうことになっていますので、と言うだけで説明があいまい」といったことを感じたときは、そのケアマネの一連の業務のどこかに問題がある、と考えていいでしょう。

担当者変更を申し出るならば管理者か地域包括支援センターへ

では担当ケアマネに問題があるとして、どうしてもそのケアマネとの相性が合わない、信頼できないとなったときに、担当者変更を申し出ることはできるのでしょうか。結論から言えば、できます。ケアマネが所属する組織には基本的に「管理者」もしくは「苦情受付窓口」がありますし、その地域を管轄する地域包括支援センターに相談することもできます。変更したいと思った理由を感情論にならないよう、なるべく事実ベースで伝えるようにしてください。
ただし申し出をすれば、必ず変更されるわけではありません。第三者が間に入ることで現在のケアマネとの関係が修復したり、誤解が晴れることもあります。また変更希望の際、ケアマネを指名することもできますが、ひとり当たり担当する人数の上限が原則35人なので、指名したケアマネが空いておらず希望が通らない場合もあります。
多くのケアマネさんは、専門職としてプライドをもって利用者本位で動いてくれるはずですが、どうしても人間同士ですから、相性が合わないこともあります。本人・家族が我慢して心に不満をためこんでしまう前に、すみやかに第三者に相談されることをおすすめします。
次回は「お世話になったケアマネに金品を渡してもいい?」について書いてみたいと思います。
取材・文/藤井大輔
リクルート社のフリーマガジン『R25』元編集長。R25世代はもちろん、その他の世代からも爆発的な支持を受ける。2013年にリクルートを退職し、現在は地元富山で高齢者福祉事業を営みながら、地域包括支援センター所長を務める。主な著書に『「R25」のつくりかた』(日本経済新聞出版社)
 


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