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2017.07.08

ライフ

東京でマンションを買ったことがないのに、沖縄で不動産投資

同世代で資産運用をうまくやっているヤツはどんなことをしているのか……。30代後半、IT系スタートアップ企業で部長職をしているTさんは、33歳で結婚したとき、趣味の車や無軌道なお金の使い方をしてきたせいで、貯金はほぼゼロ。
ところがここから6年ほどで、ふたつの沖縄のマンションを保有して毎月20万円の不動産収入を得ているほか、不動産売買で頭金を作り、都内の超一等地にある8000万円の自宅マンションを購入するなど一気に資産家に。なんとも、うらやましい状態にいます。
Tさんに一体、何が起きたのか。全6回にわたってお届けする、Tさんが「こっそりうまくやっている」マネー運用術、今回は第2回です。
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東日本大震災での妻の言葉がきっかけで、不動産購入を真剣に考えることに

IT系スタートアップ幹部のTさん「東京でマンションを買ったこともないのに、いきなり沖縄ですよ」
Tさんにとっての大きな転機は、東日本大震災でした。子どもが生まれたばかり、ということで不安も大きかったのかもしれません。震災直後、奥さんが「東京を離れたい」と言い出したのです。
「このときは周囲でも、夫婦で意見がぶつかったという声をよく聞きました。男はどうしても真っ先に仕事に頭が向いてしまうんですよね。僕も“まあまあ、とりあえず落ち着けよ”なんて思わず言ってしまって、“あなたは真剣に考えていない”と叱られたりして」
少なくともわかったことは、奥さんは本気だ、ということでした。ごまかすことなど、とてもできそうにない。このままでは、本当に離婚なんてことにもなりかねない、とコトの重大さに気付いてきます。
「では、どうすりゃいいんだ、と思っていたら、妻が突然、沖縄のマンションのパンフレットを持ってきたんです。沖縄で高級リゾートマンションを売り出していて、移住を前提にこれを買いたい、と」
何を言ってるんだ、ありえねぇ、とは思いつつも、ぐっと飲み込んで、とりあえず、沖縄の現地を見にいくことにしたそうです。
「オレも本気でちゃんと考えているんだ、ということを見せないと、と思ったんですよね。もしかしたら、現地を見に行ったら、気が済んで“そうは言ってもね”みたいな話になるんじゃないかな、という期待もあって」
ところが現地でモデルルームを見た奥さんは、ますます盛り上がってしまいました。このままだと、本当に買うことになってしまう。Tさんは焦りました。
「那覇にほど近い海の見える新築のマンションです。そりゃ、買って住めたらいいよな、とは思いましたよ。でも、東京でマンションを買ったこともないわけです。それなのに、いきなり初めて買うのが、住まないかもしれない、使わないかもしれない沖縄のマンションなんですよ。仕事は東京にあるわけですから。意味がわからない」

不動産は保有するものではない、と信じ込んでいた。でも沖縄の市場環境は、ちょっと違っていた

Tさん「奥さんの本気度に圧され、猛烈にシミュレーションしたんです」
夫婦の話し合いが再び始まりました。しかし、話は行ったり来たり。「100歩譲って一時移住するにしても、賃貸でいいだろう」と思いきや、東京の人が想像するような「大手ディベロッパーが売ってるふつうのマンション」は数えるほど。沖縄では超高級物件扱いで数も少ないとわかりました。
「橘玲(たちばな・あきら)さんの本に『家は賃貸なら、地震が来ようが地価が暴落しようが解約すれば良いだけ。不動産はリスクに強い企業やファンドが保有して個人はそれを賃貸するのが合理的』と書いてあったんです。僕もそれを信じ込んでいて、そうだよな、不動産なんて買うもんじゃないと思っていたんです。
しかし結局、Tさんは沖縄のマンションの購入を決断します。
「いやもう、猛烈にシミュレーションもしたんですよ。いったいどんな費用が必要になるのか、知っておかないと心配じゃないですか。当たり前ですが購入する場合の心配は、毎月の管理費や修繕積立金、固定資産税の負担がバカにならないこと。そしてもし維持できなくなった際に売れなかったり、購入額を大きく下回って大損をする可能性がないか?ということでした」
その流れでTさんは、沖縄のマンション事情を徹底研究することになります。詳しく知るには現地に行くしかない、と一人で沖縄に飛び、不動産屋を何軒も周って物件を詳細に調査しました。そして、驚くべきことがわかったのです。
「びっくりしましたが、いくつかの物件は、中古になっても値段が落ちないどころか値上がりしていることに気づいたんです。。新築のときより高く売られていた。賃貸の物件が少なかったのも、これで合点がいったんですが、そもそも沖縄には集合住宅に高いお金を出すような文化があまりないらしく、大型のマンション物件が少ないんです。しかも自宅から海が見えるのを喜ぶのは旅行者だけ。むしろ地元の方には塩害や台風被害が嫌われ、東京の人間が夢見るようなオーシャンビューで交通の便がよい立地のマンションは希少なんです」
後に売却によって、わずか5年で1000万円以上の利益を得ることになるTさんの不動産運用は、ここから始まりました。自分でも想像もしなかった、奥さんの「沖縄にマンション買って」という声に真摯に向き合ったことが、Tさんに福音をもたらしたのです。しかもマンション購入は、これまた、まったく想像もしていなかった「新たな収入」をも、もたらすことになったのでした。
(第3回へ続く)
取材・文/上阪徹
1966年、兵庫県生まれ。アパレルメーカーのワールド、リクルート・グループなどを経て、94年よりフリーランスに。経営、金融、ベンチャー、就職などをテーマに、雑誌や書籍などで幅広く執筆やインタビューを手がける。著書に『成城石井はなぜ安くないのに選ばれるのか?』(あさ出版)、『僕がグーグルで成長できた理由』(日本経済新聞出版)、『職業、ブックライター。』(講談社)、『成功者3000人の言葉』(飛鳥新社)、『リブセンス』(日経BP)など。


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