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2017.04.03

ライフ

こんな部下どうする? レベル10「介護での離職が懸念される部下」

「介護離職ゼロ」の言葉の意味、あなたは正しく理解していますか?

「介護離職ゼロ」の意味を正しく理解している人が半数に満たない――そんな見出しが2016年に新聞を賑わしたことがありましたが、オーシャンズ世代のみなさんなら、当然正しく理解できていますよね。それでは、問題です。
「そんな部下でもイケてる上司でいられますか?」を最初から読む
「介護離職ゼロ」について、次のうち正しい記述を答えよ。
(A)介護の現場で働く介護職の人の離職をゼロにするため、賃金や労働環境を向上すること
(B)介護が原因で現在の職場から離職してしまう人をゼロにするため、支援や制度を整備すること
答えは、、、
(B)になります。
間違えて理解していたあなた、別に恥ずかしがることはありません。このコラムをきっかけに修正してもらえばいいだけです。どちらかというと、政府のスローガンがわかりにくいことに問題があると思いますので。肝心なのは「介護離職ゼロ」を実現するために、上司として何ができるか、です。
(※ちなみに、(A)の介護職の離職防止対策も当然行われているのですが、そのことは「介護離職ゼロ」ではなく「介護職の処遇改善」と言われています)
厚生労働省がまとめた事例集『仕事と介護 両立のポイント』には、「どうしたら、介護をしながら働き続けられるのか?」の問いに対し、5つのポイントを整理しています。
①職場に「家族等の介護を行っていること」を伝え、必要に応じて勤務先の「仕事と介護の両立支援制度」を利用する
②介護保険サービスを利用し、自分で「介護をしすぎない」
③ケアマネジャーを信頼し、「何でも相談する」
④日ごろから「家族や要介護者宅の近所の方々等と良好な関係」を築く
⑤介護を深刻に捉えすぎずに、「自分の時間を確保」する
①については、上司の立場なら「いつでも相談してくれればいいのに」と思うかもしれませんが、介護で悩んでいる人が最初につまずくのは、「誰に相談すればよいのかわからない」ことです。特に「職場には迷惑をかけられない」「給与も下げられたくない」「親のことで人の世話になるのは恥ずかしい」といった気持ちが邪魔をして、会社や上司に相談することをためらう人が多いのです。
さて、あなたならこんな部下、どのように対処しますか?
「介護を経験した上司でなければ、部下の介護の悩みを理解できないのでは」と考えている人もいるかもしれませんが、そんなことはありません。

「決してあきらめずに、仕事との両立を一緒に考えていきましょう」と職場環境の支援に徹する

まず上司として理解してほしいのは、「育児・介護休業法」と、それに基づいた職場の「仕事と介護の両立支援制度」の内容です。法律で定められている介護休業や介護休暇、所定労働時間の短縮等の措置、介護休業給付金などに加えて、企業によっては法律を上回る内容の制度もありますから、少なくともその概要は人事担当に問い合わせて情報を入手しておきましょう。
次にメンバーが集まる朝礼や会議のときに、「ウチの会社も、育児・介護休業法に基づいて××といった支援制度ができました。もしそういった支援制度を活用したい、といったことがあれば、上司の私、もしくは人事担当へ相談してください」と伝えるとよいと思います。制度のポイントがまとまった資料を配布しながら伝えるのも有効だと思います。そのとき「介護の問題は、いつ突然やってくるかわからないこと」「制度を活用しながら働き続けることは、決して恥ずかしいことではないこと」を伝えられると、さらに良いでしょう。
そして、実際に部下から介護についての相談を受けたとき。注意してほしいのは、変に同情・共感の気持ちを示すこと。あなたに介護の経験がある場合は別ですが、そうでないのなら「わかるよ、大変だよね、辛いよね」などとは言わない方がよいです。「わかりました。決してあきらめずに、仕事との両立を一緒に考えていきましょう」と、あくまで職場環境に対する支援に徹するのが正解です。そして支援内容の具体的な相談は、あなた一人ではなく人事担当も必ず巻き込みましょう。加えて家庭での介護支援には、適切な介護サービスのプランを考える専門職であるケアマネジャーがいます。場合によっては、部下の許可をとった上で、人事担当とケアマネジャー間で情報交換を行うことも良いと思います。詳しい情報を得られることで、より適切な職場での支援が実現できる可能性が高まりますので。
もしもあなたが「介護は大変なものだから、離職するのも仕方ない」との考えの持ち主だとしたら、今すぐその考えは改めた方がよいでしょう。育児も介護も、個人や家庭の頑張りだけではなく、社会や会社が一緒に支えていく時代に、私たちは生きているのですから。
次回はレベル11「元上司だった人が部下」です。
取材・文/藤井大輔(『R25』元編集長)
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