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2017.03.21

ライフ

オリンピック最有力! 19歳プロサーファー五十嵐カノアの今とこれから

今、日本で最も注目を集めているサーファー、それが五十嵐カノア。
日本人の両親が移住したカリフォルニアで生まれ育ち、プロサーファーとして、サーフィンのプロツアーを運営する組織WSL(ワールドサーフリーグ)による世界最高峰のツアー、CT(チャンピオンシップツアー)をフォローしている。
このCTは世界の精鋭、わずか34名だけが参戦できるツアー。初年度となった2016シーズンをカノアは見事20位でフィニッシュし、その高い実力から未来の世界チャンピオンという声も聞こえてくる。2020年には22歳であることから、東京オリンピックにおける日本代表選手としての活躍も期待されている。
しかし周囲の声をよそに、彼の目は3年後ではなく、これから始まる2年目のCTに注がれている。ツアー緒戦は3月14日(火)〜25日(土)の日程で行われるオーストラリアでの「クイックシルバー・プロ・ゴールド・コースト」。大会会場へ向かう直前に日本を訪れたカノアに、現在の心境を聞いてみた。

ー今年もツアーが始まります。未知の世界に挑む直前だった昨年と2年目の今年、心境に違いはありますか?
去年は何も分からない状況だったので、ちょっと緊張していました。小さい頃から試合には多く出てきていたし、初めて参戦する試合でも楽しめていたんですけれど、CTは少し違いましたね。やはりプロサーファーにとって最高峰の場所。夢にまでみた場所での時間がいよいよ始まることで、少し考え過ぎてしまったのかもしれません。でも今年は2年目なので、去年の経験をいかして、リラックスして臨みたいですね。
ー昨年の経験をもとに迎える2年目、使用するサーフボードに変化はありますか?
違いは多いですね。なかでも浮力が違います。サーフボードの形状は、長さ、幅、厚さ、浮力で数値化するのですが、僕の浮力は昨年の24.8リットルから今は27.2リットルとなりました。単純にカラダが大きくなったことが理由です。体重は6キロくらい増えましたね。身長そのものが伸びたし、あとは毎日のサーフィンや週3〜4回のフィジカルトレーニングでカラダが変わりました。今は身長180センチ、体重75キロくらいです。
ー弊誌オーシャンズの読者には海好き、サーフ好きの30代、40代が多くいます。19歳のカノアくんにとって、30代、40代の男性はどのようなイメージですか?

プロサーフィンの世界に、その世代のすごいサーファーはたくさんいるんです。
オーストラリアのタジ・バロウは38歳で、昨シーズンに引退するまで20年近くCTで活躍していました。ケリー・スレーターは45歳。ケリーは今も世界チャンピオンを狙おうとしている実力者で、おっさんというイメージはまったくないですよね。
ーそのケリーとは幼少期から親交がありますよね。今も覚えているアドバイスはありますか?
12歳くらいの頃に言われたことで、サーフィンだけは楽しんでやるのが大切、というのがあります。みんなから同じようなことは言われるんですけど、ケリーのニュアンスはちょっと違って、楽しんでやっていればいろんなプレッシャーはなくなるし、トレーニングも楽しんでできる、というもの。それだけは覚えておいてね、という感じでした。ただ、僕はまだ12歳だったから、その時はなんとなく聞いていただけ。言葉の重みを感じるようになったのは最近です。活躍して注目されればメディア対応も多くなるけど、サーフィンを楽しんでいれば大丈夫だよ、とも言われました。
ー今回、メディア対応の数は多かったと聞きました。
でも、いきなり多くのメディアに囲まれたわけではないので、大丈夫です。子供の時から取材は受けていて、徐々にその数が増え、今があるので。カメラを向けられても気にならないというか、あまり意識しないで済んでいますね。
ーカノアくんが日常を過ごすカリフォルニアは、サーフィンが多くの世代で楽しまれています。若い世代をあまりビーチで見かけない日本の状況について、何か思うことはありますか?

カリフォルニアでは昔からサーフィンが楽しまれて、歴史やカルチャーが育まれてきました。60歳や70歳でもサーフする人がたくさんいて、しかも一番いい波に乗ろうと若い人たちとバトルしている感じです。自分の写真を残そうとカメラマンをビーチに連れてくる人もいますしね。日本も、オープンマインドで歴史やカルチャーを築いていくことが大切なのではないでしょうか。今サーフィンを楽しんでいる人たちが、サーフィンを続けながら歳を重ねていけば、いつかはカリフォルニアのような光景が生まれるように思います。特にサーフィンが東京オリンピックで種目化されて、ブームとなれば、もっと多くの人に注目されます。そうして、オーシャンズ世代の子供たちが、お父さんと一緒に海へ行くようになれば、日本のビーチも賑やかになりますよね。
ーそのオリンピックについて、カリフォルニアでは注目されていますか?
種目化が決まった当初はものすごく盛り上がったんですが、最近は「あの話はどうなったの? 本当にやるのかな?」という感じが多いかな。選手の選ばれ方、大会のフォーマットなど、情報が少なすぎて関心は低くなっていますね。ただ、まだ3年あるので、その間にシステムを築いて、きちんと情報を発信してもらえると、多くのサーファーにとっての明確な目標になっていくと思います。
ーこれからの3年はどう過ごしていきますか?
今、フォーカスすべきはCTです。オリンピックの前に世界チャンピオンになりたいし、世界チャンピオンとして挑んだオリンピックで金メダルを取りたいですからね。世界チャンピオンとして金メダルを取った最初のサーファーになることが、僕の大きな目標です。
ーその目標のためにしていかなければならないことは、何でしょう?
経験、知識を増やしていくことですね。大会会場の波への知識、対戦するサーファーの分析を今より細かく。まだ19歳だから、ちょっとずつやっていれば、いいリズムで成長していけると思います。
ー最後に、19歳が思う格好いいファッションについて教えてください。

綺麗なシューズと、パリッとしたシャツを合わせるような品のあるスタイルが好きです。ボードショーツとビーチサンダル、ボサボサの髪の毛で海に行くような感じはあまり好きではないかな。僕にとってビーチは仕事場でもあって、会社員の人が職場にスーツを着て行くように、ちゃんと綺麗な格好でビーチに行きたいと思っています。サーファーはヒッピーというイメージが強くありますよね。でも僕はそのイメージは嫌い。まだ19歳と子供ですけど、そういうスタイルを続けて結果も残していけば、綺麗に、格好良くというスタイルがサーファーの主流になっていくんじゃないかな。ケリーもその点は、ちょっとレイドバックしちゃってますよね。僕は若々しく、クリーンにいきたいです。
五十嵐カノア
1997年10月1日、カリフォルニア生まれ。日本とアメリカの国籍を持つ。ホームスポットはハンティントンビーチ。日本から移住したサーファーの両親のもと、3歳でサーフィンを始める。その3年後には、初出場したローカルコンテストで初優勝。以降、アマチュアシーンを席巻。全米チャンピオンにも数度輝いた。2016年、18歳でWSLによる世界最高峰ツアーのCTへ参戦。今年、2シーズン目を迎える。


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