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2017.02.23

あそぶ

汚れるガンプラ ~ガンプラ製作編⑤~

デカール! まずは、きれいな水をくれぃ…。

©創通・サンライズ
少年の日、夢中になったホビーの「やり残し」を、大人の知力、忍耐力、財力でクリアせんとする本企画。ガンプラ編の最終局面を飾るべく、今回はガンプラ少年なら誰もが憧れたに違いない「リアル」な仕上がりを追求してみた。
「”あの頃”ホビー再入門」を最初から読む
前回までの挑戦で、一応グフ本体を完成させることができた。もちろん、これにてガンプラ編のミッション完了としてもよいのだが、第一次ブームを体験した当時の少年としては、やはりここで満足するわけにはいかないのである。
そう、いわゆる「リアルタイプ」を意識した加工だ。砂漠を、沼地を、そして宇宙を駆け巡った我らがモビルスーツたち。その機体には当然、激戦を物語る傷や汚れがあるはず。また、同型機による編隊を組む際には所属を識別するためのマーキングや、愛機を飾るデコ―レーションも施されていただろう。そんな空想をプラモで具現化するのが「リアルタイプ」な加工。ガンプラ少年たちは、プラモ専門誌に掲載された加工例や、当時販売されていた設定資料集などを参照し、慣れない手つきでマーキングや汚し塗装に挑戦したものだった。
まずはマーキングから始めよう。ガンプラのマーキングといえば、やはり欠かせないのが「連邦」や「ジオン」の所属であることを示す国章だろう。旧キット普及時は自分で描くしか術がなかった国章も、数十年の歳月を経た現在では専用のシールが販売されており、筆描きするより遥かに簡単かつ美しく入れることができる。今回は、水転写式シール『1/144 ガンダムデカール HGUC汎用-ジオン用』を使うことにした。最近のガンプラ向けのものだが、もちろん旧キットでも利用可能だ。
©創通・サンライズ
水転写シールという名に覚えがない人でも「デカール」と聞けばわかるはず。使いたいマークを切り取り、水に浸してから貼り付けるアレである。戦闘機やレースカー用のデカールをガンプラに流用していた人も多いのではないだろうか。
©創通・サンライズ
©創通・サンライズ
数十秒ほど水に浸し、ほどよくふやけたところでガンプラに貼り付け、綿棒で余分な水分を吸いつつ位置を調整する。自分で描かなくても綺麗なマークが入れられることから、サクサクとできる作業という記憶があったが、やはりきれいに貼り付けようとすれば、細かな気配りと忍耐力が必要とされるデカール貼り。雑に吸着させたり、よく乾かないうちに次の作業に移ったりすると、ズレや剥がれが生じてしまう。
しかしこの苦労があるからこそ、機体に見事ジオン公国章が入ったときの感動はひとしお。
©創通・サンライズ
どぅ~ですか!? この「リアル」な感じ。左肩の「03」は、もちろん「オッサン」の識別番号だ。胸に輝く公国章と、歴戦の勇士っぽさを演出する撃墜マークが、我ながら痺れるところである(これが撃墜マークなのか、実はよくわかってないけど)。

うろたえるな! これが地球の汚れというものだ

さぁついに、本当に、いよいよフィナーレとなる工程「ウェザリング(汚し塗装)をする時がやってきた。少年時代も専門誌の手順を真似て、くすみやサビを筆でこすりつける「ドライブラシ」に挑戦した記憶があるが、現在ではもっとお手軽に「リアル」な汚しを表現できるツールがあるという。

今回は「エンピツ感覚で簡単汚し塗装」ができるというパステル状の「Mr.ウェザリングライナー 錆色セット」(GSIクレオス)と、立体的な泥汚れの表現に最適という「ウェザリングスティック サンド」(タミヤ)を使用した。どちらも使い方は至極簡単だ。
©創通・サンライズ
ウェザリングライナーは文字通りエンピツ感覚。機体のエッジ部などサビや退色がありそうな部分に軽くこすりつけ、綿棒などでぼやかしていくだけ。こすりつける強さを把握すれば、筆者のような再入門者でも予想以上の成果が得られる。
©創通・サンライズ
一方のウェザリングスティックは、まさに泥がスティック状になったようなもの。ポンポンと軽く叩きつけ、その後適当に伸ばすことでリアルな泥や砂汚れ感が出せる優れものだ。
©創通・サンライズ
どちらも水性のためということと、完成した機体を直に持ちながら作業を続けたため、指や手の平で付けた汚れを剥がしてしまったり、思わぬ場所に汚れが広がってしまったりといった問題はあったが、それもまた愉しき哉。少年時代に組んだグフに、数十年の歳月で得た渋みを重ねていくような感覚で、臆せずグイグイと汚していった成果が、こちらである。
©創通・サンライズ
ミョミョミョ~ン、デデデ~ン♪ そんな効果音すら聴こえてきそうな堂々たる存在感! そして操縦者をほうふつさせるその威厳!! 調子に乗って泥をつけ過ぎてワンパクな感じになってたり、継ぎ目消しや細かい塗装に失敗してたりなどなど、至らぬ点は数えきれないほどあるといえば…ある。
©創通・サンライズ
しかし、それが何だというのか! 目の前には正真正銘、自分の力だけで創り上げた“俺の”ガンプラがあるのだ。今こそ間違いなく言える。浩二郎よ、これが数十年後のお前自身が、あの頃のお前に贈る“夢の”ガンプラなのだと!!
©創通・サンライズ
「気に入ったぞ小僧! それだけハッキリものを言うとはな…」
今では肩を並べる歳となってしまった、ランバ・ラルの声が聞こえたような気がする。製作期間約2ヵ月。ガンプラ再挑戦を経て、俺はまたひとつ、大人になれたのかもしれない。
幾多の困難を乗り越え、あの頃の自分に贈る「俺のガンプラ」は完成した。しかし、大人になった今の自分には、最後にひとつだけ気になることがあるのだった…。旧キットから数十年を経た現在、はたして「ガンプラ」はどのような進化を遂げたのか⁇ 次回番外編「再会、グフよ!」。俺は刻の涙を見る!!
文:石井坂浩二郎
協力:株式会社バンダイホビー事業部
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