OSSANs IN ACT あの役に学ぶオッサン美学 Vol.1
2017.01.25
LIFE STYLE

『マーヴェリックス/波に魅せられた男たち』/40代サーファーの野生的なヒゲが、たまらなく格好いいワケ

オッサンの醸し出す哀愁さやチャーミングさに惹かれる若い女性は意外と多いという。しかし、女性ならではの「ツボ」を理解するのはけっこう難しい。そこで、映画に精通する女性ライターに、オッサン主演映画とその俳優の魅力を伺ってみた。所作や独特の雰囲気、生き様など、作品の役柄から見る「格好いいオッサン」とは一体どんな人物像なのか。それを知れば、「オッサンの格」がまた一つ上がるかもしれない。

初回は元弁護士の肩書きを持つハリウッドスター、ジェラルド・バトラー。実話を基にしたサーフィン映画で、伝説の若手サーファーの師匠を演じた彼。「サーファー=チャラいって思われてる?」なんて考えは古いかも。ぐっとくるポイントを聞いてみた。

 

【今回の先輩オッサン】


ジェラルド・バトラー(フロスティ・ヘッソン役)/『マーヴェリックス/波に魅せられた男たち』

 

甘いマスクと肉体美で『オペラ座の怪人』『300〈スリーハンドレッド〉』に出演

独身貴族を貫くハリウッドスターのなかに、40半ばを超えた、スコットランド出身のジェラルド・バトラーがいる。188㎝の長身と甘いマスク、そして舞台出身の確かな演技力の持ち主だ。大ヒットミュージカルの映画化『オペラ座の怪人』(2004年)の怪人・ファントム役で世界的にブレイク。その後、『300〈スリーハンドレッド〉』(2007年)では鍛えられた彫刻のような身体で迫真の演技を披露し、映画俳優の地位を強固なものにした。

ほかにも『完全なる報復』(2009年)といったサスペンスものから、ロマンス、アクションなど幅広いジャンルで活躍しているが、やはり『300〈スリーハンドレッド〉』の役柄とマッチョ体型は強烈だった。最近のゴシップ写真ではオッサン特有の中年体型がカメラに収められてしまったが、それでも、私のなかでジェラルド・バトラーのイメージはセクシーマッチョのナイスガイのままだ。

 

男として、海を愛する者として、子どもにも真っ直ぐ向き合う姿勢がいい!

そんなジェラルド・バトラーが『300〈スリーハンドレッド〉』から5年後、43歳のときに出演したのが映画『マーヴェリックス/波に魅せられた男たち』(2012年)。世界最大級の大波“マーヴェリックス”に挑んだ実在のサーファー、ジェイ・モリアリティの半生を描いた作品である。俳優ジェラルド・バトラーはこの映画で、主人公・ジェイを天才サーファーへと導く師として、伝説のベテラン・サーファーのフロスティ・ヘッソンを演じている。

師として、男として、海を愛する者として16歳のジェイに“マーヴェリックス”の攻略方法を教えていく。たとえば「鍛えていない子どもは(プロボクサーの)タイソンとは戦えない」というセリフ。修行ないまま現場に立つことはできないと教え、これはサーフィンだけでなく社会人にも通じるものがある。セリフの一つひとつに説得力があるのはジェラルド・バトラー自身がその言葉を胸に持っているからだろう。だから映画のなかで圧倒的な存在感を放っているのだ。

フロスティが最初に教えるのは、人格の基礎で、「肉体・精神・感情・魂」という4本の柱についてだ。まずは肉体=体力をつけることと、挑む相手(波)を調査することから“マーヴェリック”の攻略は始まると語っている。つまり、大きなことに挑戦するには、何ごとも「基礎」が大切であるということだ。

 

男が脱毛する時代だからこそ、野性的なヒゲがたまらなくセクシーに見える

ジェラルド・バトラーは役を通して「サーファーとしての強さ」を表現しているが、もともと身体を鍛えることは好きではないという。だが役を魅力的にするための努力は惜しまない。というのも彼はもともと法律を学んでいたが、俳優になる夢を捨てきれずに、7年間法律を学んだ後に再び俳優を志している。悩み抜いて決めた俳優の道だからこそどこまでも極めようとする、彼自身の真面目な姿勢がそのままフロスティに活かされているようにみえる。

今回は『300〈スリーハンドレッド〉』のような肉体美ではないものの、何十年もサーフィンをしてきた男の身体、スポーツで鍛えた身体に仕上げている。男性も永久脱毛をしてしまう時代ではあるけれど、それを好む女性は案外少ない。その反面、ジェラルド・バトラーの野生的なヒゲはたまらなくセクシーだと思う。

もう一つオーシャン世代に注目してほしいのが、フロスティのファッション。舞台であるカリフォルニアの海にぴったりな大人なサーフスタイルを披露している。肩の力が抜けたダウンベスト×デニムシャツの組み合わせなど、ぜひ参考にしてほしい。

 

強い男が一瞬見せる弱さに、女性は愛しさを感じる

ジェラルド・バトラー自身は独身だが、映画のなかで見せる愛妻家な姿も女子的にはキュン的ポイント。教えを守らない主人公ジェイを危険に挑むからこそ真剣に叱るシーンで、感情的になってしまうフロスティをなだめるのは妻の役目。そして愛する妻には頭が上がらないところ、妻にたしなめられるときのちょっぴりシュンとする表情や仕草……、強い男が見せる一瞬の弱さに女性は愛しさを感じる。実生活では独身だが、「妻と約束したから」「妻がすべてだ」と愛情たっぷりのセリフがとてもよく似合う。

 

「サーファー=チャラい」は誤解かも。家族想いのオッサンは最高に格好いい!

一般的にサーファーというと何故か「チャラい」イメージを持たれがちだが、この映画では、サーファー男子、とくに長年サーフィンを続けてきたフロスティのようなオッサンがめちゃくちゃ格好よく見えてくる。その格好よさはどこから生まれているのか──。それはきっと、若い頃は無茶もしたけれど、40代になって家族を持ったいまは妻と子どものためにも危険な波には乗らない、と愛情を優先させていることではないかと。フロスティのその決断、その優しさ、オッサンだからこそできる行動は最高に格好よくて、ホレる!

【Information】

『マーヴェリックス/波に魅せられた男たち』

ブルーレイ / DVD発売中、デジタル配信中
発売元:ウォルト・ディズニー・ジャパン
©2013 Twentieth Century Fox Film Corporation and Walden Media, LLC. All Rights Reserved.

ライター
新谷里映(しんたに りえ)

映画ライター、コラムニスト。女性誌「ESSE」、映画誌「J movie magazine」「CINEMA SQUARE」、ウェブ「cinemacafe.net」「NYLON JAPAN」「T-SITE」などでインタビュー、コラムなどを執筆。日テレ「PON!」の映画コーナーやラジオに出演するほか、映画のトークイベントのMCとしても活動中。http://rierieshintani.tumblr.com/

次回を読む

# 映画
更に読み込む