Camp Gear Note Vol.39
2020.04.19
LEISURE

シベリア生まれの持ち運べるサウナ「モビバ」とは?

モビバ

「Camp Gear Note」とは…

耳の早い皆さんはご存知の通り、世は空前のサウナブーム。昨年はサウナをテーマにしたTVドラマまで作られたほどだ。

アウトドアでも、サウナに入ることがちょっとしたムーブメントになっている。テント型のサウナを使って、大自然のさまざまな場所でサウナを楽しむ、サウナーが増加中なのだ。

モビバ
数あるテント型サウナの中でも、モビバの「バックパックサウナRB170M」はどこにでも持ち運べる注目モデル。
モビバ
ご覧の通り、バックパック型の収納バッグに必要な道具一式が収まる。総重量はわずか12.8kg。どこへでも背負っていける。

「テントサウナ」とも呼ばれるこの移動式スタイルは、元々、フィンランドで軍隊が遠征地でも風呂代わりに楽しめるよう開発された簡易式サウナがベースとなったもの。

一般的にはテントの中で薪ストーブを焚いてサウナストーンを温め、そこに水をかけることで蒸気を発生させるというシンプルな構造を採用している。

テントサウナの2大生産国は、フィンランドとロシアである。今日は、シベリアでアウトドアレクリエーション用に生み出されたロシアンサウナテントのトップブランド「モビバ(mobiba)」の歴史を紹介しよう。

NEXT PAGE /

航空機の機械エンジニア×航空計器の科学者の出会いからスタート

モビバ
背負えるということは、こんな場所にだって設営可能ってこと。

モビバは、2005年にロシア・シベリアでアレクサンドロヴィッチ夫妻によって立ち上げられた家族経営の会社だ。

夫妻が出会い、結婚したのは、1980年代にまで遡る。製鉄所で働き、金属製錬所のワークショップを率いていた父を持つアレクセイは当時航空機の機械エンジニアとして、ロケットの電子部品の設計を手掛ける科学者の両親を持つイリーナは航空計器の科学研究所で働き、それぞれ忙しい毎日を送っていた。

モビバ
極寒のシベリアでは、より精巧な造りが求められる。夫妻が手掛ける帽子は完成度が高く、あっという間に人気になった。

1980年代の後半になるとペレストロイカが始まり、ソビエト連邦は大きな転換期を迎える。軍用航空機の注文は日に日に少なくなり、若い夫妻は新しい職を探す必要に迫られた。

そこで2人は1991年に縫製企業を設立。服やバッグ、帽子などを手掛け始めた。中でも彼らが天然毛皮を用いて作る帽子は、品質の高さとデザインの精巧さが話題を呼び、寒冷地用のレディースハットとしてすぐに人気を博した。創業からわずか4年後、1995年には10人の従業員がいたことからも、その成功のほどがわかるだろう。

NEXT PAGE /

カナダ移住計画を機に、キャンプ製品の開発職へ

しかし、’90年代に入ると、ロシア経済の下降に伴い、シベリアの治安は急速に悪化。彼らが住む街でも、起業家や役人が路上で暗殺される事件が多発していたそうだ。

そこで夫妻は、2000年にロシアからカナダへの移住を決意する。だが、カナダ大使館で移住のための面談を受けるには長期間待たねばならなかった。

その面談を待つ間にも、何かパートタイムの仕事をせねばならない。そこで、持ち前の金属加工技術と縫製技術の専門知識を買われてアレクセイが誘われたのが、モバイルキャンプ製品の開発職だった。

モビバ
友人と共に、手探りの状態でプロトタイプの設計に励むアレクセイ[右]。

彼に与えられた仕事は、キャンプ用入浴システムの開発である。当時のキャンパーや旅行者は、木材やプラスチックフィルムを利用して簡易的な自家製のお風呂を作ることはあった。しかし、クライアントが求めていたのは数十分で組み立てられるような携帯用のサウナだった。

当時、世界中のどこにもこのような製品は存在していない。どのような形にすればいいのか。はたまた作ること自体が可能なのか。誰にも想像できない状態から開発はスタートした。

翌年、アレクセイが仲間と試行錯誤の末に完成させたのが、下の写真にあるモバイルハウス型サウナのプロトタイプである。

モビバ
これぞテントサウナの原型。開発当時から、現在の製品にかなり近いフォルムであることがわかる。
NEXT PAGE /

偶然のハリケーンがブランドの評価を高めた

「モバイルテントサウナは、単なるストーブのあるテントではなく、国や文化を超えた国際的な商品になるに違いない」。

このプロダクトに可能性とニーズを見出した夫妻は、カナダへの移住を断り、2003年にブランド名を「モビバ」と定め、工業製品の展示会へと出展を始めた。

モビバ
発表初年度から、モビバのテントはさまざまな展示会で賞を受賞した。

同年、モビバのモバイルバスプロジェクトは、シベリアでもっとも権威のある展覧会で金賞を受賞する偉業を達成することとなる。

実は展示会は会期中に強力なハリケーンに見舞われた。ほかのすべての企業のテントが倒れたり、変形し、鉄骨のパビリオンさえ壊れる中で、モビバのテントだけが無事にハリケーンを乗り越えたことが評価されての受賞である。

アレクセイは、航空機の胴体と同じ方法でテントを設計しており、その強度はほかのテントの比ではないことが偶然にも証明されたのだった。

モビバ
本国では軍の遠征用にも使える大型テントも発表している。

翌年には、首都モスクワの展示会にて軍や政府の災害支援のための巨大な遠征用テントを発表。モバイルバスのアイデアなど数々の特許も取得した。

そして、2005年に満を辞して夫妻はモビバを設立する。以降、ヨーロッパ各地を中心に、急速にその名を知られるようになっていく。

NEXT PAGE /

どこで張るのも自由。自分専用サウナを手に入れてみては?

モビバ
家族でサウナ付きのキャンプに出かけるのは、ロシアでは当たり前の光景。

現在へと時を戻そう。近年のロシアでは、テントサウナを持ってアウトドアに出掛けることは、ひとつのレジャーとしてすっかり定着している。

週末にファミリーキャンプに出かけるのと同じ感覚で、テントサウナを車に積み、思い思いの大自然の中で汗をかく時間を満喫しているのだ。

モビバ
フィンランド式に比べて、ロシア式サウナは温度の高さが特徴。必然、サウナ後の水浴びは格別だ。

お気に入りのサウナに足を運ぶことも憚られるこのご時世。サウナ禁断症状が起こっている方も、少なくないのではないだろうか。

自分だけのサウナテントがあれば、好きな場所で、心ゆくまで汗をかくことができる。モバイルサウナこそ、全世界のサウナー達に救いの手を差し伸べるプロダクトなのである。

モビバ
今や世界各国へと製品を供給する一大ブランドへと成長を遂げた。アレクセイも貫禄十分な風貌に!

[問い合わせ先]
ファイヤーサイド
0120-46-7877(平日9:00〜17:30)
www.firesidestove.com

連載「Camp Gear Note」一覧へ

「Camp Gear Note」
90年代以上のブームといわれているアウトドア。次々に新しいギアも生まれ、ファンには堪らない状況になっている。でも、そんなギアに関してどれほど知っているだろうか? 人気ブランドの個性と歴史、看板モデルの扱い方まで、徹底的に掘り下げる。 上に戻る

池田 圭=取材・文 宇佐美博之=写真

# Camp Gear Note# サウナ# サウナテント# モビバ
更に読み込む