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2018.01.16

あそぶ

読むと革靴をオーダーしたくなる!靴職人を描くマンガ『IPPO』

ビジネスパーソンの第一印象を左右する「靴」。それに命をかける職人を描いた『IPPO(イッポ)』から学ぶ、靴の大切さ
ビジネスパーソンにとって、身だしなみは非常に重要なものだ。スーツ、時計、カバンなど、どうしても身につけているアイテムの良し悪しで判断されてしまう場面は少なくない。とりわけ気を配っておきたいのが「革靴」。センスや清潔感、社会的な立場ですら如実に表れてしまう。
『IPPO(イッポ)』(えすとえむ/集英社)
今回紹介するマンガ『IPPO(イッポ)』(えすとえむ/集英社)は、そんな靴をテーマにした作品だ。
主人公となる一条歩(いちじょう・あゆむ)は、弱冠22歳の靴職人。同様に職人だった祖父の仕事ぶりに魅せられ、自身も同じ道を歩んでいくこととなった。本作は、歩が靴職人として少しずつ成長していくさまを追いかけたマンガである。
「IPPO」と命名された自身の店を開いた歩のもとには、日々さまざまな客が訪れる。義足になってしまった元モデルの女性、亡き父と同じ靴を求める男性、プロポーズの指輪代わりに靴をオーダーする同性カップル……。歩は彼らの内なる声に耳を傾け、世界に一足しかない注文靴を丁寧に作り出す。
そこには既製品にはない素晴らしさがある。履きやすい、足が疲れない、というのはもちろんのこと、自分のために作り出された靴は、持ち主をまだ見ぬ場所へと連れていってくれるような「魔法」を持っているのだ。
自分のための特別ななにかを手に入れた時、誰もが気の引き締まるような思いを覚えるだろう。それが仕事へのモチベーションに繋がることだってある。ビジネスパーソンにとって品の良いものを身につけるということは、他者からの好印象を得ると同時に、自身の中に眠る活力を呼び覚ますことともイコールなのだ。
また、本作を通読すると、靴にまつわるさまざまな知識が得られる。物語中にさりげなく専門用語が散りばめられ、それらが自然と入ってくる仕掛けになっており、もはや革靴の教科書と言っても過言ではないだろう。
本作は全5巻で完結している。歩は、冒頭のエピソードから「良い靴とは何か」を問い続けてきたが、最後に出した答えはなんなのか。ラストエピソードで、余命わずかな祖父に靴を作り上げる歩。本作には、職人としての哲学を追う、仕事モノとしての側面もある。ビジネスの最前線で生きる男性の心に沁み入るものだろう。
ブランド品や流行のデザインに左右されるのではなく、自分の足にフィットした世界に一足しかない靴。そこには、ビジネスパーソンにとって大きな価値があるに違いない。本作を読めば、これまで以上に靴の重要性がわかるはず。そして、人生で一度くらい、自分だけの靴をオーダーしたくなるかもしれない。ぜひ、歩が開いた「IPPO」のトビラを叩いてみてもらいたい。
五十嵐 大=文
’83年生まれの編集者・ライター。エンタメ系媒体でインタビューを中心に活動。『このマンガがすごい!2018』では選者も担当。



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