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2017.09.14

あそぶ

一生の悦びを味見する。初心者こそ「海上釣り堀」で開眼すべし!

程良く管理された自然が、初心者には丁度いい。狙うは、高級魚!
「一日幸福でいたかったら、床屋に行きなさい」
「一週間幸福でいたかったら、結婚しなさい」
〜「一生幸福でいたかったら、釣りを覚えなさい」
——中国のことわざ
40代も視野に入ってくると、そろそろ一生付き合える趣味のひとつやふたつは持っていたくなるもの。その候補として、入り口は手頃でかつ極めれば奥深い釣りは非常に魅力的な存在と言える。
しかし、ほかの趣味とは異なり肝心の相手である魚の顔を拝むことなく1日が終わるということも当たり前にあるのが釣り。
始める前から「釣れない時間もまた楽しい」なんて境地に至っている人なんていないだろう。普段は忙しく働くオッサンにとって、貴重な休日を無為に過ごす可能性のある点はこの趣味を始めるに至るまでのネックである。
そのために、釣れることが(ほぼ)約束された釣り堀があるわけだが、「それはそれで達成感に欠ける(気がする)」などと理由をつけて、やらずの二の足を踏んでしまいがちな趣味とも言えるかもしれない……。

遊びのプロに聞く。初心者のはじめの一歩にふさわしい釣り場とは?

釣りに関わることとなると、常にハイテンションのうぬま先生
「何ごちゃごちゃ言ってんの! そもそもニンゲンには狩猟本能があってね。それは避けられない特性で、捕獲、捕食……、つまり釣って捌いて食べるというDNAに刻まれた欲求を満足させるのに極めて手軽で恰好な趣味が“釣り”なわけ。比較的安価で始められる割にドーパミン、セロトニン出まくりでコスパ考えると最強の趣味といえるでしょ。OK、オーケー。そんな迷える小魚ちゃんな君たちをぴったりの釣り場まで連れていってあげるから、次の土曜、あとでメールする場所に集合すべし!」
いきなりのハイテンションで現れたのが今回の先生、齢50を過ぎた遊びの達人、うぬまいちろう氏である。いや、「遊び」といっても夜遊び、オネーチャンがらみではない。スカパーなどで釣り番組の司会も務めるなど、ローコスト系アウトドア遊びの達人であるお方なのだ。
さて指定された場所とは、「J’sFishing」という神奈川県三浦市は城ヶ島にある海上イケス釣り堀であった。
城ヶ島の観光活性化を目的としたプロジェクトにも関わっている「J’sFishing」。スタッフが初心者にも丁寧に教えてくれる。魚が掛かったら、網ですくって針まで外してくれる親切っぷり!
「これから釣りを始めたい、なんて初心者におすすめの釣り場のひとつが海上釣り堀。まあ、ここは掘ったわけじゃ無いから生簀なんだけどそれは置いといて。なんたって、普通は船に乗らないと釣れないようなマダイやカンパチ、ブリなどの高級魚が手軽に釣れるのが素晴らしいじゃない! 水面を境界に、繰り広げられる魚との心理戦。一匹釣れば数千円ゲット! なんて思えばこんなに本気になれるレジャーはほかにないよ、マジ最高!」
相変わらずのハイテンションに若干引きつつも、周りを見ればわからなくもない気がしてくる
内湾に浮かべられた生簀がいわゆる“釣り堀”となっており、柵の向こうはすぐ海。潮風も心地良く、非日常を味わうにも最高のロケーション。なのに、足場は綺麗で安定しており、ええ。自然とこちらもテンションが上がってきましたよ!
エサ、狙う水深などひと通りの説明を受けながら30分。訪れた魚のアタリを逃さず、見事に真鯛を釣り上げたのは、今回の取材で唯一の釣り初心者の編集I氏。やっぱりビギナーズラックってあるもんですね。
間をおかずに、ライターも1匹真鯛をゲット。こちらはひと通りの釣り経験はあるものの、やっぱり食べて美味しく、買えばお高い魚が釣れるとテンション上がりますね、マジ最高!
なお、釣った魚は血抜きをしないと、持って帰ってもおいしく食べられないが、こうした施設では血抜きまで行ってくれるのもうれしい。(J‘sFishingでは、より高度な神経抜きまでやってくれる!ありがたや)
いきなり真鯛ゲット! 誰しもつい、笑顔がこぼれてしまう

自然の営みも感じる釣り堀で、癒される休日

「大型魚の引きは別次元だからねえ。それでいて、こうした施設はほぼ湾内にあるから、外海が少し荒れても釣りになるし。それに釣り場の直ぐそばにトイレもあるのがなにげに重要。女性連れでも困らないし。そうだ、今度はカノジョでも誘ってきなさいよ……」
いつしか、先生の講釈が耳に入らなくなるぐらい(失礼!)、狙う魚の潜む水中に意識が集中していることに気づく。その時、目に映っていたのは、勝手に生簀に入ってきて餌となってしまっている、キビナゴという小魚の群れ。そして親指サイズのイカが、さらに小さい魚を追っている姿……。
施設自体は人工のものであっても、生簀の網一枚外はまごうことなき自然の海。網の目を通して、こうした小さな生き物が行き来し、自然の営みも垣間見ることができる。いやあ、魚が釣れていない時間も確かにいいもんですな。
イケスに勝手に入り込んでいたネンブツダイの稚魚。他にも目を凝らせば、カワハギ、イシダイの幼魚など放流魚ではない自然の魚も多く見られる
ところで、こちらJ’sFishing は年末年始も一部の日を除き営業している。そんな時期にまで、お客さんが入るのかと疑問に思ったが、案外予約は多いそう。
まずカンパチ、ブリ、シマアジなどなど。さまざまな魚が泳ぐなか、最も多く放流されているのが真鯛。初心者でも比較的簡単に釣れるという。
そこで、年末には、正月料理で使う鯛を自分で釣りたい人。また、年始には、年明けから縁起の良い魚「鯛」を釣って「おめでタイ」とゲン担ぎを目的にとするお客さんが多く来るとのこと。
日本の伝統行事と絡めた使い方ができるなんて、これも海上釣り堀ならではの魅力でしょう。
ちなみに、取材日の釣果は2匹。釣り初心者の編集Iがファーストフィッシュであり、最も大きな魚となった。なんと、うぬま先生はボウズ……。
まさにビギナーズラックを地で行く釣果となった。これで味をしめて、本気でハマるという人が多いんですよね。だから海釣り堀は面白い!
宇都宮雅之=取材・文
うぬまいちろう=写真
<プロフィール>
うぬまいちろう
1964年生まれ。メインワークのイラストレーションの制作のほか、各誌で絵と文と写真による連載、執筆を掲載中。サンヨーナイロン・フィールドテスター。スカイパーフェクTV、つりビジョンの『トラウトキング』。解説&司会進行として出演中。クルマに船舶などの乗り物全般、釣り、サカナ料理、漁業、アウトドア、そして昭和B級サブカルチャーには特に造詣が深い。釣り関連書籍多数。近著『漁港食堂』(オークラ出版)も好評。

<スポット情報>
海上イケス釣堀「J’sFishing」
住所:神奈川県三浦市三崎町城ヶ島650-70
電話番号:046-854-9891
営業時間:9:00〜16:00
火曜定休(祝日の場合は翌水曜) ※不定休アリ(公式サイトで確認のこと)
料金例:体験コース(1時間)入場料540円+遊漁料(竿1本につき)2700円ほか、釣り放題コースなどアリ詳細は公式サイトにて確認。
http://js-fishing.com


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