たのしい睡眠 Vol.16
2020.06.09
HEALTH

「素早い判断」「的確な指示」「短時間集中」……。“仕事ができる脳”が喜ぶ睡眠時間とは?

たのしい睡眠

「たのしい睡眠」とは……

「徹夜で仕事した」自慢は愚の骨頂だ。決してエラいことでも何でもなんでもない。寝不足になれば脳の機能は停滞し、判断力が鈍り、かえって仕事の効率が落ちてしまう。そもそも今どきそんなことを声高に言う人、下手すりゃ職場で浮いてしまうんじゃないだろうか……。

真に仕事ができる人間ほどよく眠るものだ。今回はその理由を解説していこう。

 

連続稼働に弱い脳には、最低6時間の休息が必要だった

仕事量が多く、残業をしても一向に仕事が終わらない。その結果、会社に泊まり込んだり、自宅で徹夜作業をしたり……。誰しも一度は体験したことがあるのではないだろうか?

人間の活動時間は平均で18時間程度と言われているが、脳は連続稼働に非常に弱い臓器で、休ませることなく使い続けると疲労して、情報処理能力が著しく低下してしまう。

「仕事のできる脳」を維持するうえで必要な睡眠時間は7~9時間、少なくとも6時間と考えられている。

眠りの前半は言語的な記憶の定着や、不必要な記憶を削除する時間帯。脳は不快な記憶を削除・緩和することにより、ストレスから体を守ろうとする。つまり、眠りについてから割と早い時間帯に目覚めたりすると、不快な気持ちや怒りの感情が翌日まで持ち越されて、イライラが続くことになる。

眠りの後半は、記憶を整理して必要な記憶に付箋をつける時間帯だ。この時間帯の睡眠に問題があると、ひらめき力や判断力が低下してしまう。

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仕事のイライラや職場でのトラブルもよく眠ることで改善できる

たのしい睡眠

こうしたイライラした感情の持続や判断力の低下は、仕事にも大きな影響を及ぼすことは想像に難くないし、職場での人間関係もスムーズにいかなくなる。

その要因のひとつが「前頭連合野」という脳の一部位の過労にある。前頭連合野はおでこの裏側あたりに位置し、情動のコントロールや、論理的な判断、将来の予測をする際に働く部位。ここの機能が低下すると、やる気や協調性が欠如したり、先を見据えた冷静な判断を下すようなことができなくなってしまう。

もし徹夜仕事が続くようなことがあれば、仕事の効率が下がるだけではなく、“心”の不調を引き起こして些細なことでイライラたり、職場の人間関係に過度なストレスを感じるようになるリスクが高まってしまうということだ。

前頭連合野の機能低下を防ぐ唯一の手段がまさに睡眠で、睡眠不足になると前頭連合野は疲弊して機能不全に陥ってしまうので、しっかり休ませるには、最低6時間は睡眠をとり、かつ睡眠の質を上げることも必要だ。

現代人の睡眠の質を下げる原因のひとつと考えられるのが「運動不足」である。人間は適度な肉体疲労を感じていないと寝つきが悪くなり、睡眠が浅くなってしまう。定期的な運動習慣のない人は、例えば通勤時にできるだけ階段を使うなどの工夫をして、体を動かす意識を持ってほしい。

また、朝食を決まった時間にとる習慣も効果的だ。毎朝食べる習慣をつけることで体内時計がリセットされ、夜になると自然に眠気がやってくるようになる。ちなみに、朝食を抜くと「睡眠ホルモン」(メラトニン)の材料となる「セロトニン」の分泌が滞ることがわかっている。セロトニンの材料はたんぱく質なので、朝は卵や牛乳、乳製品、納豆をはじめとした大豆製品などを意識して食べるようにしたい。

●仕事の効率を高める良質な睡眠のための7カ条
①12~15時の間に、15~20分の昼寝をする。
②睡眠時間は少なくとも6時間は確保する。
③脳を興奮させるスマホやパソコンの使用は就寝1時間前まで。
④高たんぱくの朝食を食べる。
⑤運動不足を避ける。
⑥休日も平日と同じ時刻に起きる。
⑦平日に睡眠不足気味の人は、休日の12~15時に90分の昼寝をする。

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「たのしい睡眠」
日本生活習慣病予防協会によると、「慢性的な不眠」に悩まされているのは日本人の5人に1人。読者のなかにも「最近寝つきが悪くなった」「早朝に目が覚めてしまう」など、“睡眠”にまつわる悩みを抱えている人がいることでしょう。果たして睡眠の質を高めることはできるのでしょうか? さまざまな角度で検証していきます!上に戻る

篠原絵里佳=監修
管理栄養士/睡眠改善インストラクター/上級睡眠健康指導士。総合病院、腎臓・内科クリニックを経て独立。長年の臨床経験と抗加齢医学の活動を通し、体の中から健康を作る食生活を見出し、最新情報を発信している。アスリートの栄養指導経験も豊富で、食事と睡眠の観点から健康にアプローチする「睡食健美」を提唱。

楠田圭子=取材・文

# たのしい睡眠# 仕事
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