カラダ笑う薬膳 Vol.7
2019.12.27
HEALTH

年末豪華版! 早春に向けてパワー養う薬膳おばんざい5品

カラダ笑う薬膳●まだまだ老けちゃいないけど、若くもない。37.5歳ってそういう年齢。昔と同じように食って飲んで遊んだ朝は、昔と同じようには起きられない。いろんな曲がり角で悩める37.5歳は、中医薬膳をマスターする“薬膳ママ”の店に今日も行く。

人呼んで“薬膳ママ”。   この歳にもなれば起きる体のちょっとした不調を、会話で引き出した情報から、料理で和らげてくれる。

都内某所。飾り気はないが、温かみのある風情。ちょっと一杯ひっかけるにはちょうどいいおばんざい屋がある。あるのは、5人ほどが掛けられるカウンターのみ。旨いってのは当たり前なのだが、ここの女将がまたヒネリが効いていていい。
 
人呼んで“薬膳ママ”。
 
この歳にもなれば起きる体のちょっとした不調を、会話で引き出した情報から料理で和らげてくれる。今宵も常連客が暖簾をくぐる。おや、珍しく、いつもの男がもうひとり連れている様子。どうした風の吹き回しだろうか。

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カラダ笑う薬膳ママの店で、男2人の忘年会

ママ いらっしゃい、待ってたわ。珍しく予約の電話なんて入るからびっくりしちゃった。しかも2名なんて、飲み相手いたのね。

 ちょっと待ってよ。そりゃあいるよ。ここに連れてこないだけで。今年から配属された、おれの貴重な部下なのよ。1年の労をねぎらうべく、部下といえども接待、接待。2人きりの忘年会だよ。ママの店だって、さすがに年末は忙しいだろ? と思って予約したけど、その必要は……まぁ、なかったか。

ママ 失礼しちゃうわね、大繁盛よ。若者クンは何飲む? アナタはどうせ生ビールでしょ?

 そうそう。

部下 僕もセンパイと同じで。

ママ 外、寒かったでしょう。冷えるから、最初の1杯くらいにしときなさいよ。

 うるさいと思うだろ? でも、この店はママが体を気遣った料理を出してくれるんだよ。

部下 そうなんですね。独り身なんで助かります。落ち着いた雰囲気も気に入りました。

ママ あら、嬉しいじゃない。じゃビール、泡大盛りにしとくわね。はい、どーぞ。

 なんだよ、そりゃ。

部下 ありがとうございます(笑)。

 今年1年、お疲れ様。カンパイ。

部下 お誘い、ありがとうございます。はっくしょい。

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一年のストレス浄化にこの一品

ママ 今日はせっかくだから、まず、冬のおばんざいのセットね。いわゆる中医学で言うところの「五臓」にそれぞれ効くように5品アレンジしてみたから、しっかり食べて蓄えてね。若者クン、風邪っぴきみたいだし。
 
 粋な計らいだね。ありがたい。料理が豪勢とくりゃ今日で仕事納めにしたい気分だけど、納品が残ってるから、そうもいかなくて。年末はギリギリまで仕事なんすよ。
 
ママ 若者クン、大変な部署に配属になっちゃったね〜。

 それが出社は俺だけ。若者クンは、人事の方針もあって社休日の前日から休暇です。

部下 それでも有給1日使わされているんですよ。年度末に多忙の波が来る前に今のうちにとっとけ、って。なかなかブラックでしょう?

 上司の前でブラックって言うかなぁ。

ママ 立場違えばストレスも違うわね。まずは「香味野菜とカジキマグロの南蛮漬け」。

立場違えばストレスも違うわね。まずは「香味野菜とカジキマグロの南蛮漬け」

ママ これは、主に五臓でいう「肝」狙い。1年のストレスは、この料理で鎮めましょう。

<今晩の薬膳用語①>
五臓(ごぞう)=「肝」「心」「脾」「肺」「腎」からなる。中医薬膳の根幹をなす「臓象学説」に記される5つの柱。体に及ぼす役割や機能によって大きく分けられている。


部下
 ずいぶん本格的ですね。つまり「肝」に効くというのは、ストレスの発散にいいというわけですか。

ママ あら、お察しがいいのね。こちらさんとは大違い。

 こいつは国立理系卒の優等生。万年係長の俺なんかとは違って幹部候補なんですよ。

ママ あら、新たなイライラを生んじゃったかしら。「肝」に働きかける食材は、カジキ。専門的に言うと「疏肝」「理気」といった作用を備えているの。まさにストレスによるイライラや怒りっぽさを抑えてくれるのね。

<今晩の薬膳用語②>
疏肝(そかん)=ストレスや寒さで滞った気(=肝気鬱結)を疏散し解除する作用。

<今晩の薬膳用語③>

理気(りき)=気をめぐらせたり、気を下ろすことで気滞や気逆を緩和する作用。「疏肝理気」とひと単語として続けて使うことも。


部下
 完璧な料理ですね! しかもウマい! 1年のストレスもこれで発散っすね!

 若いってのは単純でいいや。こっちはさ、上からパワハラに気を付けろ、ってどれだけ若手にシルキータッチで接していると思ってんだか。

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1年を労う“ハツ”スルおばんざい

ママ まぁまぁ。続いて2品いくわよ。「ニラと干し海老のおひたし〜黒ごま風味〜」と「鶏ハツとレバーの甘辛生姜煮」ね。中医学で“冬の臓器”といわれる「腎」は、老化にも深く関係していて、温めることが肝心。

ニラと海老は、温性の食材のうえに「温陽補腎」の機能を持っていて、身体を温めてパワーをつけるのに打ってつけの存在なのね。これがずばり「腎」に効くってわけ。

「ニラと干し海老のおひたし」は、最後に振った黒ごまがキモ。
「ニラと干し海老のおひたし」は、最後に振った黒ごまがキモ。
刻み生姜の彩りが美しい「鶏ハツとレバーの甘辛生姜煮」。
刻み生姜の彩りが美しい「鶏ハツとレバーの甘辛生姜煮」。

 いかにも温まりそうだわ。あ、2杯目は焼酎お湯割りで。

部下 「腎」イコール、そのまま西洋医学の腎臓という話ではなさそうですね。

ママ カンが鋭いわね。生命の源である「腎精」を蓄えるという、生きる活力そのものを司る臓器。冬に冷えやすい「腎」を養って全身を温めることで、身体そのものを強くするということよ。黒ごまの「滋陰」については学習済みよね。

 「滋陰」ってのはバリアだったな。風邪からの病み上がりで冷えやすい今の俺にはちょうどいいね。

ママ あら、よく覚えてたわね(笑)。 

<今晩の薬膳用語④>
温陽補腎(おんようほじん)=体を温め、「腎」の機能を補う効能。
 
<今晩の薬膳用語⑤>
腎精(じんせい)=腎が蓄える精。生まれもった「先天の精」と、食で補い生命活動を維持する「後天の精」からなる。これらが万全であることが健康の源。


ママ
 ハツは文字通り、心臓。五臓の「心」に働きかけるの。レバーには「補腎」効果があり、隠れ食材のアサリには精神を安定させる働きがあるのよ。生姜も温性の食材だから、温まるのは言わずもがな。

部下 ここでも1年の労苦を労ってくれてるなんて! “ハツ”スルなおばんざいだなぁ。

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身体想いなシメで未来の活力を

ママ 若者クン、よっぽどお気に召してくれたわね。しかもアンタ、オヤジギャグのお株まで奪われてるじゃない。次は、「くるみ味噌の焼きおにぎり」でお腹を満たしてね。

次は、「くるみ味噌の焼きおにぎり」でお腹を満たしてね。
 
部下 これは……味噌に何かヒントが隠れてますね。味噌が身体にいい話はよく聞きますから。

ママ そうそう、このメニューは「脾」狙いで、味噌とうるち米にお腹を整える効果があるんだけど、「補腎」効果のあるくるみと和えることで、冬の臓器「腎」への効果アップね。 

 こりゃ、うまいなぁ。腹もちも良さそうだ。俺、これお代わり!

部下 僕もいただきます! 

ママ 人気でよかったわ。最後は「大根と干し柿の紅白なます」。デザート感覚で少し甘めにね。

人気でよかったわ。最後は「大根と干し柿の紅白なます」。デザート感覚で少し甘めにね。
 
部下 これは、残った最後の五臓だから「肺」になるのか。やっぱり風邪引きやすい季節だからってことですね。

ママ あなた、本当に飲み込みがいいわね。大根も干し柿も「潤肺」効果があって風邪対策にちょうどいい。和えている柿は、干し柿だから温性になるし、トッピングに散らしたキンモクセイの花、桂花も体を温めてくれるるのよ。

<今晩の薬膳用⑥>
潤肺(じゅんぱい)=肺に潤いをもたらす効能。免疫を司る臓器「肺」を労ることで、体の防衛力を高めることができる。

 

部下 実際、病み上がりのセンパイから風邪うつされそうですもんね、俺。センパイ、仕事中もマスクしてくれないからなぁ。新手のパワハラですかね?

 そんだけ口が達者なら俺のほうがタジタジだよ。若者は強いや。

ママ いいコンビじゃないの。

男 ママ、年末の素敵なおもてなし、ありがとう。おかげで男2人のシケた忘年会にならずにすんだよ。

部下 本当です。ありがとうございました。センパイのどんな武勇伝聞かされるのかってドキドキしてましたから。女将の薬膳授業は、食べて学べて最高っすよ。はっくしょい。

ママ 若者クン、大丈夫?

部下 はい。今晩、薬膳いただいたから、もう治りますよね?

 な、わけないだろ!

 

■薬膳ママ 小池美枝
アール・ド・ヴィーヴル代表。国際中医薬膳師。中医薬膳茶師。中医薬膳の講師や執筆のほか、ブランドコンサルティングやPR業務も手掛ける。かつて、某スイス時計ブランドのPRを長年務めた経歴もあり、年に一度のバーゼル ワールドでは「小池さんの手作りおにぎり」が、取材者たちの間で名物になった過去も持つ。

※なお、おばんざい屋は架空のお店です。本当にこんな店があったらなぁ。

山本 大=写真 髙村将司=文 

# おばんざい# 忘年会# 薬膳ママ
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