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2017.08.04

からだ

それ「睡眠負債」かも? 眠りと仕事効率の深くて怖〜い関係


日本生活習慣病予防協会によると、「慢性的な不眠」に悩まされているのは日本人の5人に1人。読者のなかにも「最近寝つきが悪くなった」「早朝に目が覚めてしまう」など、“睡眠”にまつわる悩みを抱えている人がいることでしょう。果たして睡眠の質を高めることはできるのでしょうか? さまざまな角度で検証していきます!
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前日しっかり寝たはずなのに、身体がだるく、日中に眠くなってしまう……という経験はありませんか? それは、知らず知らずのうちに“睡眠負債”が溜まり、寝不足に陥っているサインかもしれません。仕事のパフォーマンスにも少なからず影響を及ぼす寝不足の見極め方と解消法について、新橋スリープ・メンタルクリニック院長の佐藤 幹先生に聞きました。

休日の“寝だめ”も寝不足のサイン、2時間以上の寝坊は要注意

「十分な睡眠がとれているかどうかの判断基準は、“活動中のパフォーマンスに影響がないか”というところにあります。一方で、自分では眠れているつもりでも、日中デスクワークをしていて眠気が出るようであれば、睡眠不足である可能性が高いです。特に、週末に平日よりも2時間以上長く寝てしまう人は要注意。平日を慢性的な寝不足状態で過ごしている可能性があるため、日々の生活のなかで眠る時間をどうにか確保しなければなりません」
佐藤先生いわく、睡眠不足解消のためには、休日に平日よりも長く睡眠をとる必要がありますが、起床の時間には気をつける必要があるそうです。つまり、起床の時間を遅くしすぎないことを心がけたほうがよいそうです。
「遅く起きる場合でも、いつも起きている時間+1.5時間まで。昼ぐらいまで寝ていると、脳が時差ぼけ状態になってしまいます。また、休日はついつい昼寝をしたくなるものですが、午後3時以降に60分以上の昼寝をしてしまうと夜寝つきが悪くなり、結果、翌日は寝不足のまま仕事を再開することになる。ですから昼寝する時間にも注意が必要です」

日々のわずかな寝不足も「睡眠負債」として溜まっていく

なお、わずかな睡眠不足でも、日々それが続くと「睡眠負債」という形で蓄積されていくといいます。
「たとえば、『午前3時に眠って翌朝7時に起きる』という日があったとしても、それが1日だけなら寝不足にはなりません。しかしそのような生活が続くと『睡眠負債』が溜まり、日中の生活に影響してきます。自分ではパフォーマンスが保てているつもりの人でも、実はそれは眠気に“慣れている”だけの場合も多い。ケアレスミスが増えるなど、何らかの悪影響が考えられます」
なかには、短時間睡眠でも精力的に活動できる「ショートスリ―パー」を自認する人もいるが、それもほとんどの場合は“気のせい”であると佐藤先生。
「確かに『ショートスリーパー』と言われる人も存在します。ただし、いても数%とごくわずか。ほとんどの人は無理をして、睡眠時間を少なくしている可能性が高いです。若いうちはあまり眠くなかったりするので仕事もやれてしまうのですが、仕事中に『眠いな…』と感じる場合は、睡眠時間が足りていないと思っていいでしょう」

5時間睡眠が続く人は、ほろ酔い状態で仕事をしている!

「“睡眠負債”が及ぼす影響については、具体的なデータがあるんです」と佐藤先生が示してくれたのは、睡眠不足が脳に与える影響を示す資料。睡眠不足時は、アルコールを摂取した時と同様に、脳の機能が低下するといいます。
【睡眠不足時の脳の状態】
・5時間睡眠の場合 ⇒ “ほろ酔い”状態
・17時間覚醒状態が続く ⇒ 血中のアルコール濃度0.05%の状態
・24時間覚醒状態が続く ⇒ ビール大瓶1本を空けた時の状態
日本では、血中アルコール濃度0.03%で酒気帯び運転になりますが、17時間覚醒状態が続いた場合の脳の機能低下はそれ以上ということになります。“寝不足”の影響は、思ったより深刻なようです。
とはいえ、平日に決まった睡眠時間を確保するのが難しいという人もいるでしょう。多忙なビジネスマンが寝不足を防ぐために、できる対策はあるのでしょうか。
「午前中に眠かったり、パフォーマンスが悪いと感じたりしたら、小刻みに仮眠を取るようにしましょう。またカフェインは、脳内の睡眠物質であるアデノシンを阻害することで、覚醒を促す効果がありますが、夕方以降の摂取は、夜の睡眠が浅くなってしまいますので注意が必要です。結果、日中にまた眠くなってさらにカフェインを取って……という悪循環に陥ってしまうのです。パフォーマンスを上げるためには、昼休みの10分でもいいので仮眠を取り、平日の“睡眠負債”を少しでも解消したほうがよいでしょう」
さらに、通勤時間や移動時間の合間の仮眠も有意義だといいます。
「移動時間こそ貴重な勉強時間」と、新聞やスマホをチェックすることもあるでしょうが、仕事場で眠気を感じている人は、ただ目を閉じるだけでも立派な“朝活”になりそうです。
取材・文/周東淑子(やじろべえ)
 
取材協力/新橋スリープ・メンタルクリニック 佐藤 幹先生
東京慈恵会医科大学卒業後、同大学精神医学講座入局。2003~2010年、同大学付属病院本院精神科外来勤務。睡眠障害を中心に精神科領域全般における診療を行なう。睡眠学を専門とし、睡眠時無呼吸症候群、ナルコレプシー、時差ぼけ、不眠症などの研究を行う。特に不眠症に関しては認知行動療法を取り入れた治療法を研究している。2010年、新橋スリープ・メンタルクリニックを開設。日本睡眠学会認定医。


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