OCEANS × Forbes JAPAN Vol.20
2020.08.11
FOOD&DRINK

ハンバーガーで寄付も。常識を覆す「サステナブルバーガー」の世界

当記事は、「Forbes JAPAN」の提供記事です。元記事はこちらから。

下北沢一番街商店街内に店を構える「BURGERS TOKYO」

7月20日は「ハンバーガーの日」。1971年7月20日、アメリカ発祥のファストフード店であるマクドナルド日本第1号店が東京・銀座にオープンしたことを記念して定められた日だ。

日本にハンバーガーを初上陸させたのは、第二次世界大戦後に横須賀空軍基地などに在留した米軍だと伝えられている。その後、マクドナルドやモスバーガー、ロッテリアなど、私たちにおなじみのチェーンストアが生まれたのは高度経済成長を遂げつつある70年代のこと。それから約半世紀がたち、現在ではハンバーガーはラーメンやカレーと並ぶ「第3の国民食」とまで呼ばれるようになった。

2000年代からは、材料を厳選し手間暇をかけて作るグルメバーガーがブームとなり、「安くて手軽」という従来のイメージとは異なる新しいジャンルのハンバーガーが続々と登場している。

今回はその中でも「ハンバーガー=ファストフード」という概念を覆す「サステナビリティ」に着目した最先端のハンバーガーを紹介しよう。

ハンバーガー×寄付 下北沢の「BURGERS TOKYO」

東京のハンバーガー激戦区のひとつである下北沢から徒歩約5分。下北沢一番街商店街内に店を構える「BURGERS TOKYO」は、「新しいトーキョースタイル」をコンセプトに掲げるバーガーショップだ。

特に興味深いのは、ハンバーガーを1つ購入するごとに、ケニア共和国の首都・ナイロビのスラム街に建つ学校「シープケア・コミュニティ・センター」へと、給食1食分相当の金額が寄付されるという仕組み。寄付は国際NGO「ハンガーゼロ(日本国際飢餓対策機構)」を通じて行われている。

「BURGERS TOKYO」のオーナーである新田拓真は、ボタニカルインテリアブランド「Urban Green Makers」も手がける株式会社USTUSの代表であり、飲食業界への参入は今回が初めてだという。

現在30歳の若手経営者である新田は、2013年に「Urban Green Makers」を立ち上げ、植物を用いたインテリアを1つ購入するごとに3円~30円がアフリカの植栽活動に寄付される仕組みを展開してきた。

「BURGERS TOKYO」のオーナー新田拓真

2019年10月にオープンした「BURGERS TOKYO」の取り組みは、これの飲食版である。新田が「ハンバーガー×寄付」という形の事業に最初に興味を持ったきっかけを聞くと意外な答えが返ってきた。

「私が育った故郷は宮城県石巻市雄勝町という港町なのですが、 ご存知の通り石巻市は東日本大震災で甚大な被害を受けた地域の1つです。 特に私が住んでいた雄勝町は津波により、家はもちろん町ごと跡形もなく流されてしまいました。その時の町の状況はとても悲惨で、かつての日常生活はすっかり失われてしまっていました。

食料や飲み水すらもままならない生活を初めて目の当たりにした時に、日本は先進国だからなんとか復興していけるけれど、何も食べ物がないような悲惨な状況が日常的に続いている発展途上国の人々は一体どうやって生きているんだろうと考えるようになりました。

日本人は震災時には寄付をする人も少なくないですが、貧困で食料を手に入れられない世界の子ども達に継続的に寄付を行なっている人は多くありません。たくさんの人が支援を継続的に行うようにするにはどうすればよいかと考えた時に、寄付を日本人の日常に馴染ませる仕組みが必要だと思いました。『1つのバーガー、1つの支援』という発想はそこからきています」

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ボタニカルなインテリアが空間を演出。壁にはNAOHIRO YAKOの作品が掛かる

「BURGERS TOKYO」が目指す支援の仕組みとは、毎日の食事が自然と途上国への支援に繋がっているような環境だ。東京に住んでいる人びとの食事を楽しみたいという気持ちをそのまま支援へと繋げることが必要だと新田は考える。また店舗をこれから増やしていくことで、東京を超えて支援の輪を広げていきたいと語る。

国際NGO「ハンガーゼロ」の近藤高史は、寄付先であるケニアの「シープケア・コミュニティ・センター」の現状について次のように語る。「新型コロナの影響はケニアでも深刻な被害をもたらしています。感染者の数は日に日に増加しており、いつまで続くのかわからないという不安に押しつぶされそうになっていると聞いています。そのような中で、BURGERS TOKYOさんのように日本人とケニアの子供たちのあいだの架け橋となって、金銭的な支援を行う活動が出てきていることにとても感謝しています」

「BURGERS TOKYO」のハンバーガーは、まるでステーキを食べているかのような肉の旨みと質感が楽しめる。「超肉感」と言われるだけあり、パティは男性でも十分に食べ応えがあるサイズだ。塩胡椒だけで食べてもシンプルにおいしいが、備え付けのカスタマイズソースで自分好みに「マッシュアップ」してもおいしい。

 

 
 
 
 
 
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地元の野菜だけで作る「ヴィーガンスタイルバーガー」

千葉県柏市にあるハンバーガーショップ「VIBES」は、地元の新鮮な野菜を使ったハンバーガーを提供する知る人ぞ知る名店だ。

店主の石井和哉は麻布迎賓館のフレンチレストランで厨房を経験した後に、人形町の人気ハンバーガー店「BROZERS’」で修行。2011年からは「VIBES」を立ち上げる。外苑前に店をかまえた「GORO’S★DINER」の元オーナーシェフでグルメバーガー界の「巨匠」としてリスペクトされる吉澤清太らとタッグを組んで、業界初のハンバーガーの教科書『ハンバーガーの発想と組み立て』(誠文堂新光社)の出版にも携わるなどの実力派だ。

動物性の食材を使わない「Vegan Style Burger」は茄子を素揚げする油からこだわっている

地元の畑で採れた鮮度の高い野菜だけを使った「Vegan Style Burger」は、動物性の食材を一切使用しないながらも、ハンバーガーならではの食べ応えがある一皿。

ハンバーガーというと肉汁が滴るビーフの旨味が最大の魅力だと感じる人も少なくない。そのためヴィーガン向けのバーガーを作るにしても、どうしても植物性の食材でいかに「肉っぽさ」を生み出すかという発想になりがちであるが、「VIBES」の「Vegan Style Burger」はその常識を覆す。

動物性の食材を使わない「Vegan Style Burger」は茄子を素揚げする油からこだわっている
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店主の石井は「ヴィーガンの方でも食べることができるハンバーガーを作ろうとすると、ソイミートを使っていかに本物のビーフの味に近づけるかという発想になりがちですが、その場合、ソイミートの味で全てのお客様に満足していただけるのかという難しい問題があります。また、せっかくの植物性の旨みをなぜわざわざ肉に寄せなければならないのかという疑問もありました」と明かす。

「Vegan Style Burger」のベースとなる翡翠茄子。とれたての野菜の旨味は肉に勝るとも劣らない

「肉を食べる人にもヴィーガンの人にも両方においしく食べてもらえるものを提供したいと考えるなら、肉を使わずに野菜の旨みを最大限に活かしたハンバーガーを作るのが正解なのではないかと考えています。VIBESでは地元の畑でとれた新鮮でおいしい野菜を仕入れていますし、素揚げやおひたしなど日本には野菜をおいしく食べる調理法がたくさんあります」

素揚げにした翡翠茄子をベースに、シャドークイーンを使った蒸かし芋、トマト、モロヘイヤのおひたし、ビーツの浅漬け、千切りにした黄色いカボチャ・コリンキーが、豆乳のフォカッチャバンズで挟まれる。ピリッと辛い山椒のソースが全体の味を引き締めるアクセントだ。

ハンバーガーというと欧米の食べ物というイメージがあるが、野菜の旨みを活かしたハンバーガーの場合、応用できる日本料理の技は少なくない。肉の代わりの茄子の素揚げや、ピクルスの代わりのビーツの漬け物など、日本独自の調理法がビーフに負けないハンバーガーを作るうえで武器となる。

「VIBES」に野菜を提供している菜園「自然野菜のら」では、千葉県我孫子市の畑で農薬・除草剤・化学肥料不使用で野菜を育てている。野菜をおいしく食べてもらおうと考えた場合、「地産地消」であるというポイントは外せない。近くで取れた新鮮な野菜を食材として選ぶことは、栄養学的にも、サステナビリティの観点からも理にかなっている。

「自然野菜のら」の中野牧人によれば、翡翠茄子のおいしさは「ふわっとした肉質にあり、その肉質が火を入れた際のトロトロ感につながる」という。適切な水分と養分で大きく育てて、いいタイミングで収穫することが大切だ。「今年の梅雨は雨が多かったので、みずみずしく肉質柔らかでおいしく育っています」

「自然野菜のら」の畑。ビーツやコールラビなどの珍しい野菜も生産している

グルメバーガーがブームとなり10年以上が経過したいまも進化が止まらないハンバーガー。ファストフードというイメージは次第に薄れていき、これからはサステナブルな社会を支える新しい国民食のひとつとなっていくのかもしれない。今後も進化していくハンバーガーの世界に要注目だ。

 

渡邊雄介=文

記事提供:Forbes JAPAN

# ヴィーガン# サスティナブル# ハンバーガー# フォーブス
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