37.5歳からの愉悦 Vol.96
2019.06.06
FOOD&DRINK

大井町の立ち飲みバーで、看板娘の実家猫が“ワイルド”だった

看板娘という名の愉悦 Vol.68
好きな酒を置いている。食事がことごとく美味しい。雰囲気が良くて落ち着く。行きつけの飲み屋を決める理由はさまざま。しかし、なかには店で働く「看板娘」目当てに通い詰めるパターンもある。もともと、当連載は酒を通して人を探求するドキュメンタリー。店主のセンスも色濃く反映される「看板娘」は、探求対象としてピッタリかもしれない。

飲食店にとって店名は重要だ。これが刺さると印象はずいぶんアップする。

例えば、「ワイルドミーちゃん」。最高ではないか。一刻も早く店名の由来を知りたい。取材班は大井町へと急いだ。

大井町駅
大井町駅にはJR、大井町線、りんかい線が乗り入れ。

駅からすぐの場所に、東小路、平和小路、すずらん通りというディープな飲み屋街が広がっている。

東小路
東小路の入り口。

この狭い路地の中に「ワイルドミーちゃん」を発見。

外観
そろそろと階段を下りる。

猫のラベルのドイツワインのボトルに花が活けられていた。あとになってわかるが、これも店名の由来にまつわるヒントだ。

店外に置いてあるワインボトル
「ゾンメラッヒャー・ジルヴァーナ」という辛口の白ワインの空き瓶。

店に入って、さっそく看板娘にご挨拶。おつまみ付きの「ちょい飲みセット」を注文し、お酒はホワイトホースのハイボールにした。

ハイボールサワー
強炭酸水で割られたハイボールがサーバーから出る。

角でもブラックニッカでもなく、ホワイトホースであるというのもこだわり。樽の中でまろやかに熟成されるという。

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看板娘、登場。

看板娘
「お待たせしました〜」

平方のぞみさん(28歳)。ここ、「ワイルドミーちゃん」の店長だ。

フードメニュー
フードメニューはこちら。

いかにも本日のおすすめ的な「まぐろの角煮」も追加でいただこう。

ハイボールと料理
計1150円の美しい世界。

日替わりのおつまみは左から、ポテサラ、サラミ、ナムルという布陣。なお、この店は今年3月にオープンしたばかりだという。そこに至る経緯を聞いた。

「この建物は実家です。1階は祖父母の代から続くお寿司屋さんで、2階、3階は住居。地下はスナックとして営業していました。でも、長年やっていたスナックを閉めることになり、母が私に『なんかお店やらない?』と言ってきたんです」

金井寿司 外観
1階は焼き寿司と穴子の笹焼きが有名な「金井寿司」。

憧れだったアパレルの世界で働いていたのぞみさん。当初、仕事を辞める気はさらさらなかった。しかし、自分で理想の店を作る面白さには抗えない。

お父さんとのぞみさん
ここでお父さんが様子を見に来た。

上下で働く父と娘という構造も面白い。立ち飲みバーと寿司屋の父娘はしご酒もオツである。なお、先ほど食べた「まぐろの角煮」はお父さんがブロックで仕入れたまぐろで作ったものだった。

「東小路のお店はほとんどトイレがなくて、公衆トイレを使うのが一般的。うちはきれいなトイレがあるのが自慢で、1階のお寿司屋さんと兼用です」

それにしても、お隣は今や飛ぶ鳥を落とす勢いの「晩杯屋」。

晩杯屋 外観
古き良き「晩杯屋」の雰囲気を残す貴重な店。

また、すぐ近くには肉屋が営む人気立ち飲み店、「肉のまえかわ」もある。

肉のまえかわ 外観
夕方から外に人があふれるほどの盛況ぶり。

のぞみさん、よくこの場所で立ち飲み屋をやろうと思いましたね。

「地元だから友達の溜まり場が作れるかもって思ったんです。あと、若い人はチェーン店の飲み屋さんに行っちゃうから、そういう人たちも取り込めればいいなと」

ほぼ居抜きなので開店資金も安く済む。かくして、約10年続いたスナックはのぞみさんの感性がほとばしる立ち飲みバーへと変貌を遂げた。

スナック時代の内観
スナック時代の内観。
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店名「ミーちゃん」の秘密

そうだ、肝心の店名の由来を聞いていない。

「よく聞かれるのでトイレの壁に貼ってあります」

店名の由来
「オーナー」とはお父さんのこと。

ミーちゃんは昔住んでいたマンション近くの公園でお母さんが拾ってきた猫。最初は非常におとなしかったという。

素敵な飼い主に巡り合ったミーちゃん。

「でも、あるとき脱走して帰って来なかったんです。3カ月後に『肉のまえかわ』の横でニャーニャー鳴いているのを私が発見。すぐに母を呼んでふたりで押さえつけながら連れて帰りました」

ところが、ミーちゃんは“ワイルド”な猫になっていた。小さかった鳴き声は「ギャー!」という叫びに変わり、飼い主ですら触らせてくれない。

ワイルドなミーちゃん
牙を剥くミーちゃん。

「野良猫の社会でいろいろと揉まれたんですかね。生き抜くための変身かもしれません」

「ワイルドミーちゃん」というキャッチーな店名はお母さんの案だ。

開店祝いの日本酒
高校時代の同級生が開店祝いにくれた手書きラベルの日本酒。

ちなみに、のぞみさんはお酒が大好きで酔うと大胆に転ぶらしい。膝のアザの写真も見せてくれたが、ワイルドすぎて掲載できない。

そんな彼女の特技は意外にも水泳。小学校時代は50m背泳ぎでジュニアオリンピックにも出たというからすごい。

また、地元だけあって、昔からの友人との付き合いも続いている。下は今年のゴールデンウィークに高校時代の友人たちと大阪に遊びに行ったときの写真。

「大阪城とか通天閣とか、いろいろ行きました」

友人との旅行写真
右端の人、ブルーノ・マーズに似ている。

一緒に働いているスタッフにのぞみさんの印象を聞くと、「こうしてほしいということを察してやってくれる」「やさしいからシフトの融通を効かせてくれる」などのコメントが返ってきた。

職場仲間と談笑
女性ばかりで和気藹々とした職場です。

さて、そろそろお会計をしよう。のぞみさん、読者へのメッセージをお願いします。

看板娘からのメッセージ
やはり機嫌が悪そうなミーちゃん。

 

【取材協力】
ワイルドミーちゃん
住所:東京都品川区東大井5-3-5 地下1階
電話:03-3474-8977
www.instagram.com/wild_meechan/

石原たきび=取材・文

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