学芸大学の蕎麦バルで、人見知りの看板娘がSupreme(最高)だった
看板娘という名の愉悦 Vol.67
好きな酒を置いている。食事がことごとく美味しい。雰囲気が良くて落ち着く。行きつけの飲み屋を決める理由はさまざま。しかし、なかには店で働く「看板娘」目当てに通い詰めるパターンもある。もともと、当連載は酒を通して人を探求するドキュメンタリー。店主のセンスも色濃く反映される「看板娘」は、探求対象としてピッタリかもしれない。
学芸大学駅に東京学芸大学はない。1964年に小金井市へ移転した。ちなみに、お隣の都立大学にも東京都立大学(現・首都大学東京)はない。1991年に多摩ニュータウンへ移転している。
そんな雑学はさておき、今回訪れたのは東横線の学芸大学駅。駅から徒歩5分で看板娘が待つ「立呑地酒蕎麦 学大角打」に到着した。

「角打」とはいえ酒屋ではない。椅子もある。あくまでも雰囲気なのだ。

看板娘は……、

ドリンクメニューを開くと「トーインサワー」なるものがある。東京飲料という会社が販売しているサワーだそうだ。

看板娘が「唐辛子の辛さとジンジャーの旨みが癖になる」という「ハイ辛」にしよう。
看板娘、登場

和江さん(41歳)。もともとはこの店の常連客だったが、店長から「ウチで働かない?」というお誘いを受けて、昨年12月からスタッフになったそうだ。

さて、フードメニューも美味しそうだ。

しかし、ここは店名にもあるように蕎麦がウリなのだ。本来はシメで食べる客が多いそうだが、今日は最初から行きたい。

これに「マグロの青唐しょうゆ和え」(600円)を合わせる。

この店にはいくつかの系列店があり、蕎麦は武蔵小山の蕎麦バル「ちりん」で毎日打っている。


こちらは元蔵人が店主で、厳選した日本酒をすべて500円以下で提供するというからすごい。
さて、看板娘だ。和江さんは埼玉県越谷市出身。
「子供の頃は友達と市内の『しらこばと水上公園』に行くのが好きでした。自転車で30分ぐらいかかるんですが、公園に着いたらレンタサイクルで遊んで、また自転車を漕いで帰る。いま考えるとなんかヘンですね」
現在の趣味はお菓子作り。甘いものは苦手だが、作りたい欲が湧き出るんだそうだ。

旅行も大好きで、印象的だったのはイタリアだという。
「カラフルな家が並ぶ町なみで有名なブラーノ島に行ったんですが、夜中に着いたらホテルが閉まっていて、しょうがないから朝まで船着き場でぼんやりしていました」。
カフェでパスタを注文したら法外な金額を取られたうえに不味かったなど、あまり楽しそうな話は出てこないが、こうしたトラブルこそが旅行の醍醐味なのかもしれない。

店長の柳澤良輔さん(32歳)に、そんな和江さんの印象を聞いた。
「自分で人見知りと言う割には、誰とでも打ち解けるタイプ。みんなから好かれていますよ」
ところで、この日はキリンビールの営業部長と酒販会社榎本の営業部員が来店していた。

おふたりに「取材でお騒がせしてすみません」とご挨拶をすると、なんとキリンの方が生ビールをご馳走してくれた。銘柄はもちろんキリンのハートランドだ。

ありがたい生ビールを飲み干したタイミングで柳澤さんが言う。
「うちは日本酒にも力を入れているんですよ。日替わりで常時18種類の銘柄を揃えています」

おすすめを尋ねると「三茶店の店主が以前働いていた蔵の『いづみ橋』はいかがですか?」。

いただきましょう。

徳利と猪口に見覚えのあるロゴが……。
「ちゃんとした公式グッズなんですよ。オーナーが買ってきました」
お酒も料理も、そして看板娘も実にSupreme(最高)である。和江さんはこの店で働くのが非常に楽しいそうだ。
「長い付き合いの飲み友達にも会えるし、バイトというよりは遊びに来ている感じ。お金をいただくのが申し訳ないです」。

では、最後に読者へのメッセージを。

【取材協力】
立呑地酒蕎麦 学大角打
住所:東京都目黒区鷹番2-21-9
電話:03-5708-5145
www.instagram.com/2012gakudaikakuuchi/
石原たきび=取材・文