37.5歳からの愉悦 Vol.92
2019.05.09
FOOD&DRINK

恵比寿の焼酎居酒屋で、看板娘と「おくさん」シリーズを堪能した

看板娘という名の愉悦 Vol.64
好きな酒を置いている。食事がことごとく美味しい。雰囲気が良くて落ち着く。行きつけの飲み屋を決める理由はさまざま。しかし、なかには店で働く「看板娘」目当てに通い詰めるパターンもある。もともと、当連載は酒を通して人を探求するドキュメンタリー。店主のセンスも色濃く反映される「看板娘」は、探求対象としてピッタリかもしれない。

男も30代半ばを越えると、若い女の子より人妻の色気のほうにグッとくることが多い。今回訪れたのは、そのままズバリ「となりのおくさん」という何とも心くすぐられる店名の焼酎居酒屋だ。

恵比寿駅西口から徒歩3分。明治通りは渋谷橋交差点の手前、住所は広尾になる。

外観
黒壁に白い暖簾というシックな外観。

昨年5月にオープンしたこの店は、宮崎の神楽酒造と企画した麦焼酎「となりのおくさん」シリーズをメインに展開している。運営するのは商品企画・OEM・PRなどを手掛けるネットワークファッション。また、グループ会社には恵比寿に本店を構える小籠包専門店「京鼎樓(ジンディンロウ)」がある。

ディスプレイ
ディスプレイ代わりに美しい焼酎ボトルが並ぶ。

店内を覗くと看板娘がカウンターを拭いていた。

看板娘の姿
彼女も奥さんなのだろうか。

席に座ってお酒のメニューを見る。主力の麦焼酎「となりのおくさん」と鹿児島のさつま無双という会社が作る芋焼酎の「いまかの」「もとかの」が並ぶ。さらに、その横にはこれまた神楽酒造が同店限定で提供する琥珀色の麦焼酎「駐在員のおくさん」。

メニュー
若干、頭がクラクラしてきた。

しかし、ボトルに貼られたラベルは従来の焼酎のそれとは一線を画すモダンなデザインだ。

ボトルキープ
右から、隣、駐在員、今、元。
メニュー
コンセプトにブレがない。

何はともあれ、まずは「となりのおくさん」だろう。メニューにはさまざまな飲み方が載っているが、看板娘いわく「シンプルなソーダ割りがおすすめ」とのこと。お値段580円。それをいただきます。

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「お待たせしました〜」。

今回の看板娘は札幌出身の由伊さん(33歳)。奥さんではなく独身だった。

「大学入学を機に上京して、卒業後は和歌山県で保育士の仕事をしていました。何となく田舎で働きたかったんです。あと、北海道育ちとしては東京の暑さが辛すぎて。結局、和歌山も暑かったんですが(笑)」

保育士の仕事は4年で辞めて東京に戻り、縁あってこの店の立ち上げスタッフとして働くようになった。保育士時代の園児や父兄とは今でも親交があるという。

由伊さん、料理は何がおすすめですか?

メニュー
どれも美味しそうなのである。

「うちのシェフが作る料理は本当に何でも美味しくて。個人的にも飲みに来るんですが、最近感動したのは『黒豚のレタス巻き』です」

黒豚のレタス巻き
非常に手間がかかるため「幻のメニュー」らしい。

ここで、由伊さんが胸に付けているネームプレートが目に入った。

ネームプレート
ちゃんとおすすめが書いてある。

「あ、でも今なら熊本の千興ファームから取り寄せた新鮮な馬刺しも美味しいです」

最終的には、「さくらユッケ」(980円)と「もとかのの気まぐれ唐揚げ」(950円)を注文。

食事
こうなった。

旦那が留守の隣家で奥さんの手料理を食べるかのような背徳感がある。ユッケは文句なしの絶品、唐揚げは懐かしいチューリップ型だった。

チューリップ
「気まぐれ」だけあって毎回味付けや形が変わる。
シェフ
寡黙なシェフが作る絶品料理、ほかのものも食べてみたい。

料理以上に感動したのが「となりのおくさん」。ソーダで割ると甘みと香りがほどよく立ち上がる。水のように何杯でも飲めそうで、ある意味危険なお酒だった。

ふと、フロアを見ると由伊さんが2人の女性と談笑している。彼女たちは運営チームのスタッフだった。

スタッフ
中央が田代さん、右が池上さん。

「となりのおくさん」「いまかの」「もとかの」の命名者は社長だが、田代さんは「駐在員のおくさん」をプロデュースしたという。そして、池上さんはこれらの美しいラベルデザインを担当している。

「駐在員はインバウンド狙いですね。空港の売店に置きたいんですが、なかなかハードルが高くて」(田代さん)

「ラベルのイラストはマウスで描いているんですよ。ペンタブだとあの味は出ないと思います」(池上さん)

なお、田代さんは由伊さんのことを絶賛する。

「よく気が付くし、新人の面倒も見てくれる。何か困ったことがあったら、いつも由伊ちゃんに相談しているんです」

鉄観音タピオカミルクティー
「鉄観音タピオカミルクティー」を買ってから出勤するのが恒例。

そんな看板娘はおばあちゃんっ子でもある。

「片親だったこともあって、春休みや夏休みはずっと千歳のおばあちゃんちに泊まっていました。家業の焼肉屋をよくお手伝いしたりとか。こないだも帰省したとき、一緒に日帰り温泉に行ったんです」

おばあちゃんと看板娘
そのときの記念写真。

心温まるエピソードも聞けた。

「半年ぐらい前にふと外を見ると、おばあちゃんが店の外観をスケッチしているんです。『暖簾がきれいだから描いてるの』と言っていて。当時は赤い暖簾だったんです。寒い日だったから店長があったかいお茶を差し入れていました」

絵画
やがて届けられた完成品はトイレに飾られている。
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さて、お代わりは田代さんの思い入れがたっぷり詰まった「駐在員のおくさん」にしよう。

駐在員のおくさん
ソーダ割りで680円。

ウイスキーの樽で長期貯蔵されたという麦焼酎は、「となりのおくさん」と比べてやはり主張が強く華やかな味わいだ。同じ酒造の商品ながら、飲み比べてみるとじつに面白い。

そして、田代さんは次の一手も準備していた。初めての男性バージョンで、梅肉がたっぷり入った梅酒「となりのハンサム」だ。5月22日にプレスリリースを出すというから、当記事がどこよりも先駆けたスクープとなる。

となりのハンサム
今回も池上さんのマウステクが光る。

お酒が大好きで何でも飲む。好きな肉の部位はハツとタン。カラオケの十八番はあいみょん。いつかは結婚したい。

やがて「おくさん」になるであろう看板娘を取り巻く平和な世界を堪能したところでお会計。最後に読者へのメッセージをお願いします。

看板娘からメッセージ
「絵心がなさすぎて恥ずかしい」と照れていました。

 

【取材協力】
となりのおくさん
住所:渋谷区広尾1-16-2 VORT恵比寿Ⅱ1F
電話:03-6277-3846
https://bar-tonaoku.jp

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石原たきび=取材・文

# となりのおくさん# 恵比寿# 焼酎# 看板娘
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