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2018.12.24

たべる

「酒造りの神様」の手掛けた日本酒が、再び飲める奇跡

「一年の計は元旦にあり」という諺にもあるように、何事も”始め”が肝心。酒もまた同じく。2019年、最初に飲む一杯でいかに気持ち良くなって、1年の初速をつけるか? なんて酒飲みの言い訳をつけつつも、ぜひ口にしたい日本酒が登場する。
それが、その道70年の杜氏・農口尚彦氏(85歳)が手掛けた「LIMITED EDITION NOGUCHI NAOHIKO 01 VINTAGE 2017」である。
「LIMITED EDITION NOGUCHI NAOHIKO 01 VINTAGE 2017」 770ml 3万5000円/農口尚彦研究所 info@noguchi-naohiko.co.jp
ボトルデザインは、農口氏と同郷の、石川県を代表するアーティスト大樋年雄氏によるもの。彼は江戸初期から続く窯元の名門、大樋長左衛門窯11代当主でもあり、その作品は、日本現代工芸美術展において内閣総理大臣賞を受賞するなど、国内外で高い評価を受けている名工だ。
重厚感のある漆黒ボディはアシンメトリーにデザインされ、従前の日本酒らしさはゼロ。革新性を見て取れるこうした部分にも、大量生産とは無縁な杜氏の魂が込められているのだ。
ボトルとは対照的に、化粧箱はハレの日に相応しいホワイトとゴールドが基調となっている。シンプルながらも気品漂う佇まいで、贈答用としても最高の選択だろう。
農口尚彦氏 撮影:中川正子
知らない人のために補足すると、農口氏は、日本酒好きの間では知らぬ人はいないと言われる存在で、黄綬褒章を受章するなど70年に及ぶ酒づくりの中で伝説が絶えることのない杜氏。なかでも彼の名声を確固たるものとしたのは、「山廃(やまはい)仕込み」と「吟醸づくり」の醸造技術だ。

山廃仕込みとは、じっくり時間をかけて一から酵母を醗酵させる昔ながらの醸造技術のこと。あまりに手間暇がかかるため、戦後の日本では酵母に乳酸を添加した速醸酛が主流となり失われつつある技術だったが、農口氏はより味わい深い酒を求めてこの技術を復活。日本酒好きたちの間で話題となり、山廃仕込み復権の立役者となった。
さらに1970年代当時、主に鑑賞会出品用のみ造られていた大吟醸酒の市販化にも取り組み、好き者だけが味わえていた”極上の酒”をみんなのモノにした。その後、JAL国際線ファーストクラスで提供される初めての日本酒として、彼が造った大吟醸酒が選定されるなど、日本酒界における彼の功績を挙げればきりがないほど。
モダンな佇まいの農口尚彦研究所。ギャラリースペースやテイスティングルーム「杜庵」も併設されている。
2015年に高齢のため酒づくりを引退した彼だが、人生の集大成とも言える最高の日本酒を作るため2017年、85歳にして現役復帰。自身の持つ技術や精神、生き様を研究し、次世代に継承することをコンセプトにした酒造、「農口尚彦研究所」を故郷である石川県に開業した。
酒造では若手醸造家の育成にも力を入れている。
そんな農口尚彦研究所が2017年度に醸造した酒の中から、最高のロットを選りすぐり約1年間じっくり熟成させたのが「LIMITED EDITION NOGUCHI NAOHIKO 01 VINTAGE 2017」。こちらは先入観を持たずに楽しんでほしいという想いから、酒の精米歩合などの製造方法に関しては非公開。非常に気になるが、杜氏のアイデンティティである米の旨みを感じさせるキレの良い味わいであることは間違いないだろう。

発売日は12月25日(火)。厳選に厳選を重ねた酒であるため、数に限りのある限定販売となるのはご察しの通り。一般流通はほとんどないと言われているので、「一年の計を元旦に」と思っている人は、農口尚彦研究所の公式サイトを即チェック。そしていい正月をお迎え下さいませ。
 
[問い合わせ]
農口尚彦研究所
info@noguchi-naohiko.co.jp



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