新宿の日本ワインバルで、和み系の看板娘が最高金賞を受賞した
看板娘という名の愉悦 Vol.32
好きな酒を置いている。食事がことごとく美味しい。雰囲気が良くて落ち着く。行きつけの飲み屋を決める理由はさまざま。しかし、なかには店で働く「看板娘」目当てに通い詰めるパターンもある。もともと、当連載は酒を通して人を探求するドキュメンタリー。店主のセンスも色濃く反映される「看板娘」は、探求対象としてピッタリかもしれない。
「今、日本のワインが熱い!」という声をよく耳にするようになった。気合いが入った店も続々と登場している。その中の一軒が「新宿 葡庵(ぶあん)」。

最寄駅は新宿御苑か新宿三丁目。がんばれば新宿駅からも歩ける。

店内を覗くと、看板娘らしき女性の姿が見えた。

ここの売りは、日本各地のワイナリーから直接仕入れたワインを格安価格で飲めること。看板娘にオススメを聞くと、「美味しいシャルドネがありますよ」。

こちらは、大分県安心院(あじむ)町の安心院葡萄酒工房が作ったワイン。この町には、イモリが四肢を広げた形状に似ている「イモリ谷」があり、そこから命名されたという。

「『マツコの知らない世界』でも、“世界から注目を浴びている至極の日本ワイン”として紹介されました」
それは期待が持てる。


そして、今回の看板娘は大学院生の夏衣さん(23歳)。専攻は生命工学。それは、どんな学問なんですか?
「私は医療現場で使う素材の研究をしています。例えば、心臓の穴を塞ぐパッチを絹糸の成分で作ったりとか」
すごく難しい研究ということだけはわかった。

さらに、中高時代はオーケストラ部でフルートを吹いていた。高校卒業後は活動をいったん休止したが、昨年はOGが集まって文京区のホールで演奏会を行ったそうだ。

これまで、飲食店でのアルバイト経験は?
「実家を除けば、このお店が初めてです」
実家?
「あ、実家は両親が営むお蕎麦屋さんなんです。小さい頃から手伝っているので、常連さんからは『大きくなったねえ』って言われます」
趣味は古着屋巡り。今日のシャツも古着だ。

なお、今までお酒といえば無難にカシスオレンジなどを飲んでいたそうだが、ここで働き始めてからワイン、とくに日本のワインの美味しさに目覚めたという。

「ワインのイメージががらっと変わりました。日本で作っているから日本人の口に合うんじゃないかとも思います。作り手さんの情熱を伝えられるようになるのが目標ですね」
素晴らしい。ところで夏衣さん、フードのオススメは何でしょう?

いいね。「釜石産ホヤときのこのオリジナルハーブバター焼き」も追加し、お代わりのワインは山形県朝日町の「ナイアガラ」を。こちらは、今年の日本ワインコンクールで最高金賞を受賞した「柏原ヴィンヤード遅摘みマスカットベリーA」を造ったワイナリーの逸品だ。

フードメニューには、「日本ワインに寄り添う食材を各地から取り寄せ、丁寧に作り上げた一品を是非お召し上がりください」とある。看板に偽りなしのお味です。
ところで、店内では若い女性グループが盛り上がっている。あまりにも楽しそうなので、許可を得て写真を撮らせてもらった。

ここで、店長の木嶋さんとスタッフの鈴木さんも登場。看板娘の印象を聞く。
「最初は高円寺店にお客さんとして来てくれたんですが、接客していて楽しかったんですよ」(木嶋さん)
接客していて楽しい客。僕もこれを目指したい。
「お店の空気が和みますね。話していると、こちらも自然に笑顔になるんですよ」(鈴木さん)
こちらも高評価だ。

店内には、かわいいコルクアートがあった。こちらも、夏衣さんの作品だ。

「あ、これも見てください!」

ところで、そのイカダみたいなのは何ですか?
「鍋敷きのつもりで作ったんですけど、ボンドでくっつけただけなので耐熱性に不安が。改良の余地ありです」

というわけで、日本のワインの美味しさとそれに合う食事、そして看板娘の愛され具合に感動した取材となった。ごちそうさまです。

では、最後に読者へのメッセージを。

【取材協力】
新宿 葡庵
住所:東京都新宿区新宿2-7-1
電話番号:03-3351-0141
www.m2dining.com/archives/240
石原たきび=取材・文