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2017.11.23

たべる

銀座で至高の天国を味わえる“ネオな”角打ち「君嶋屋」

「ネオ角打ち」という名の愉悦Vol.8
酒屋の店頭で飲むスタイルを「角打ち」と呼ぶ。「四角い升の角に口をつけて飲むから」「店の一角を仕切って立ち飲み席にするから」など名称の由来は諸説あるが、いずれにせよプロの酒飲みが集うイメージ。一般人には少々敷居が高い。しかし、最近では誰でも入りやすい新しいタイプの角打ちが続々と登場している。そんな「ネオ角打ち」の魅力に迫る連載です。
商売をしている者なら誰もが一度は出店したい街、銀座。この街にもネオ角打ちがあると聞いた。東京駅と有楽町駅のちょうど真ん中あたり。店は外堀通りに面している。
上には高速道路が走る
上には高速道路が走る
店の名は「君嶋屋」。横浜の本店は1892年創業という老舗だ。
応対してくれたのは店長の神村彰子さん
応対してくれたのは店長の神村彰子さん
笑顔がとてもチャーミングで、割烹を開いても人気が出そうな方だ。
「2006年に丸の内に支店を出したんですが、2013年にここ銀座に移転。それを機に角打ちスタイルを導入しました」(神村さん、以下同)
2016年には恵比寿アトレに3店舗目を出店したが、神村さんによれば、「今はやっておりませんが以前の横浜本店は昔ながらの角打ち、銀座は現代風で近隣で働くサラリーマンのお客様が多く、恵比寿は客層がさらにお若くてワインが中心です」とのこと。
まだ19時だが、店内は早くも賑わっていた。ちなみに、開店は午前10時半。銀座にも朝から飲める天国があるのだ。
「初めて来ました」という男女のグループ
「初めて来ました」という男女のグループ
「ムーミンってカバだっけ?」「妖精じゃない?」という話で大いに盛り上がっている。
お酒のラインナップは約7割が日本酒で、残りが焼酎とワイン
お酒のラインナップは約7割が日本酒で、残りが焼酎とワイン
1杯目は何にしようか。神村さんにオススメを聞く。
「ハイヤーボールはいかがですか? 京都伏見の澤屋まつもとさんの『まつもと』という日本酒のソーダ割りです」
ハイボールの上をさらに行くので「ハイヤー」ボール
ハイボールのさらに上を行くので「ハイヤー」ボール
日本酒のソーダ割りは初めて飲む。
なんだこれは。めちゃめちゃ美味しい
なんだこれは。めちゃめちゃ美味しい
アルコール入りのペリエのようなスッキリとした飲み口だ。そして、銀座にも関わらず1杯350円という角打ち価格。
「澤屋まつもとの杜氏さんがたまにいらっしゃるのですが、これを飲んで『うーん、アリだね』とおっしゃっていました(笑)」
こちらはフードメニュー
こちらはフードメニュー
いずれもシンプルながら、素材にこだわり抜いた逸品だ。2杯目は、これまたオススメだという「シュワッ酎」(400円)をいただこう。鹿児島の「刀」という芋焼酎をソーダで割ったものだ。
たこ焼き(500円)とともに
たこ焼き(500円)とともに
先ほどと打って変わって、芋のエキスが喉にぐっと来るパンチが効いたお酒だ。こちらもソーダがいい仕事をしている。
さらに、熱々ふわふわで出汁が香るたこ焼きがすばらしい。元フレンチのシェフが大阪で営む「たこりき」というお店から仕入れているそうだ。
本日、角打ちで飲めるワインたち
本日、角打ちで飲めるワインたち
店の奥にはワインセラー
店の奥にはワインセラー
説明文にも愛がこもっている
説明文にも愛がこもっている
ところで、気になることがある。店内にやたらとロックバンドの額が飾られているのだ。
左下はギタリスト・渡辺香津美さんのサイン
左下はギタリスト・渡辺香津美さんのサイン
神村さん、これは?
「社長が大のロック好きで、自分でも年に数回コンサートに出演しているんですよ」
おお、いいですねえ。一番好きなバンドは何でしょうか?
電話をかけて聞いてくれる神村さん
電話をかけて聞いてくれる神村さん
「ひとつには絞れなくて、強いて言えばローリング・ストーンズとザ・フーだそうです。あ、社長は『日本酒や焼酎の普及に貢献するんだ』と言ってお酒がテーマのCDも出しています」
disk unionで発売中の「焼酎パラダイス」
disk unionで発売中の「焼酎パラダイス」
こちらで視聴できるが、楽曲もPVも想像をはるかに超えていた。
さて、ラストの1杯は決めている。
1杯2000円、「最高峰の日本酒」だ
1杯2000円、「最高峰の日本酒」だ
姫路の本田商店という酒蔵に頼んで特別に作ってもらっている君嶋屋オリジナルである。
奥吉川(おくよかわ)生酛純米大吟醸、行きます
奥吉川(おくよかわ)生酛純米大吟醸、行きます
うわ、すごい……。日本酒に詳しいわけではないが、確かに2000円分の説得力がある。日本酒を「ライスワイン」とはよく言ったものだ。
「原料の山田錦は通常より穂が長い品種を使っているんですよ」
稲にパワーがあるため倒れない
稲にパワーがあるため倒れない
近くにお勤めの方、何かいいことがあった日は自分へのご褒美としてこの日本酒を飲んでほしい。写真を撮らせてくれたお礼に、先ほどのグループにもひと口ずつ振る舞った。
言葉を失う男性
言葉を失う男性
同じく試飲した女性がおつまみをくれた。
「チーズの味噌づけ」をどうぞ
「チーズの味噌づけ」をどうぞ
狭い空間で立って飲むと、こうした交流も生まれやすい。さて、ごちそうさま。一瞬忘れかけていたが、外に出るとそこはやはり銀座の街だった。
ネオンきらめく午後8時
ネオンきらめく午後8時
神村さん、銀座にこんな素敵な天国を作ってくれたロックな社長によろしくお伝えください。
取材・文/石原たきび

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