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2017.07.04

たべる

元気になれるワインバーって? ネガティブ・クルージングのススメ


前回は、うれしい気分を高めるために、ひとりでポジティブフードを食べに行くことをおすすめしました。反対に、嫌なことがあって悲しい気分のとき……ひとりでいたいことって、ありますよね。頭のなかに渦巻くネガティブな思考を整理するために、ひとりになりたい。
「ゼロから学ぶオッサンひとり飯」を最初から読む
とはいえ、ひとりで部屋に閉じこもっていても、気分が沈むいっぽう。どこか外に出て、人のぬくもりを感じていたい。同じ落ち込むにしても、にぎやかな場所でひとり、考え事をするほうが落ち着く。話し上手の店長さんとおしゃべりをして、ちょっと元気を出したい。そんなときって、ありませんか?
本連載のアドバイザー・本郷義浩さんが、うれしいことがあったときに「ポジティブ・クルージング」をするのは前回お伝えしたとおり。反対に、落ち込んでいるときは「ネガティブ・クルージング」に出かけるんだとか。さて、その詳細は?
富永:落ち込んでいるとき、本郷さんがひとり飯に出かけるのはなぜですか?
本郷:めげているとき、弱い自分にひとりで浸れる場所があるといいと思うんです。落ち込んでいる原因の解決にはならなくても、ちょっと現実逃避をすることで、その時間が「時間ぐすり」となって、気持ちをやわらげてくれる。人の温度を感じながら、リラックスして過ごせる場所はクッションになって、人生を少し楽にしてくれると思います。
富永:クッションになってくれるような場所は大事ですね……以前にお話いただいた「サードプレイス」と関連していますが、人生には家と職場以外の「居場所」がたくさんあったほうが、やはりいいですよね。
本郷:たとえば失恋したとき、悲しい映画を観て思いっきり泣きたいこともあれば、楽しい映画で笑って気分転換したいときもある。それと同じで、選択肢はたくさんあったほうがいいと思います。
富永:そんな場所で本郷さんは、どんなふうにして過ごしていますか? お店の人に相談したり、愚痴ったりします?
本郷:僕のポリシーは愚痴と泣き言を絶対に言わないことなので(笑)。落ち込んでいても、そのことには触れないですね。ネガティブな気分のときに行きたい店は、大きく分けてふたつあります。ひとつは、とくに人と会話せず、ひとりで内面に向き合えるお店。いい意味で放っておいてくれる店に行って、自分のペースで食べて飲みながら、気持ちを整理したり、頭を冷やしたりします。
富永:ひとりでいたくないけど、にぎやかに騒ぎたいわけでもない。そんなとき、行きつけのお店の人の笑顔を見るだけで、少し元気が出ることってありますよね。
本郷:もうひとつは、やる気に満ちあふれていたり、勝気だったり、テンションが高かったりと、そばにいるだけで元気をくれる人のいるお店。元気って、人からもらえることが多いと思うんですよ。こちらがどんなテンションであろうと、気にせずガンガン引っ張ってくれるような人って、エネルギー源になる。相談や愚痴は言いませんが、そんな人のいるお店に行くこともありますね。
富永:たしかに、つい「つられて笑顔になっちゃった」経験ってありますね! 本郷さんは、そんなお店を数軒はしごされるとか?
本郷:はい、それを僕は「ネガティブ・クルージング」と呼んでいます。落ち込んでいるとき、気持ちが楽になるまで、気の置けない店を2軒か3軒回ります。そこは居心地の良さももちろんですが、僕にとっての「ポジティブフード」を食べることも多いです。
富永:ポジティブフードとは、前回ご説明いただいた「気分が落ちているときに食べると元気で前向きになれて、嬉しいときに食べると、喜びを倍増させてくれるもの」のことですね。
本郷:はい、僕は落ち込んでいるときはとくに「にんにくが効いているもの×味の濃いもの」を求める傾向があります(笑)。 ですので、ポジティブフードのなかでも、にんにくがガッツリ入った味噌味のちゃんぽんとか、前回ご紹介したお好み焼きと焼きそばとか、大好物の麻婆豆腐とか、カロリーの高そうなメニューを選びますね。自分で「これを食べれば元気になる」と決めて、それを信じること。そうすれば、多少落ち込んでいても、体のほうが元気になったと感じてくれて、立ち上がることができると思うんです。
富永:自分にとって、元気をくれる場所や人、食べものって、どんなものだろう? それを考えることは、同時に「私という人間を考える」時間にもなる気がしますね。読者の皆さんも、ぜひ一度、考えてみていただけたらうれしいですね!
今回は、本郷さんがちょっと落ち込んだとき、元気をもらうお店を紹介してもらいました。大阪にある素敵なワインバー「レ・クルール」です。

「元気で、少し気の強い女性ソムリエが、ひとりでやっているお店です。料理もおいしいのですが、僕は大概、2軒目にひとりで行きます。辛いことがあったときは、シャルドネの白ワインを1本開けて、ソムリエにも一杯勧めながら、くいくいと飲みます。ソムリエの『今日、本郷さん、元気ないですね! 元気出しましょうよ!』という一声で、なんとなく元気になれるんです」
本郷さんはここでももちろん、愚痴や泣き言は言わないそうですが、常連だからこそお店の方も「いつもと様子が違うな」と察して、励ましてくれるのかもしれません。

「1本飲むとほろほろに酔うのですが、帰って寝ると、翌日なんとなく元気になっているお店です。僕のエネルギー源のひとつですね」
そんなお店があるなんて羨ましい……と思った、あなた。きっと、みなさんにとっても「ここに行けば大丈夫」「これを食べると元気になる」と思える場所や人、食べものがあるはずです。今夜はそれを探しに、ひとり飯に出かけてみましょう!

「レ・クルール」
問:06-6881-2000
住:大阪府大阪市北区天神橋3-10-4 ラフォルム与力レジデンス 1F
営:ランチ12:00〜15:00、ディナー17:00~22:00(金・土曜は~23:00)
休:毎週月曜、月2回は日曜休みの日もあり
lescouleurs.info/
取材・文/富永明子
フリーライター。レシピ本の企画・編集、グルメ記事の執筆など、食に関する仕事のほか、美容やヘルスケア、ダイエットに関する書籍・記事も多数。趣味はクラシックバレエ。
取材協力/本郷義浩
毎日放送プロデューサー。1964年、京都生まれ。早稲田大学第一文学部を卒業後、88年毎日放送に入社。「真実の料理人シリーズ」「ラーメン覇王」「ビビビのB級グルメ覇王」「あまからアベニュー」「水野真紀の魔法のレストランR」など、多くのグルメ番組に携わる。番組関連で取材した飲食店はのべ1万軒、プライベートでの食べ歩きも1万軒以上。近年は、世界でただひとりの麻婆豆腐研究家を名乗り「麻婆十字団」を結成。著書に『うまい店の選び方 魔法のルール39』(KADOKAWA)、『自分をバージョンアップする 外食の教科書』(CCCメディアハウス)がある。

『自分をバージョンアップする 外食の教科書』
本郷義浩(CCCメディアハウス)
「外食」を通して世界を広げることが、仕事もプライベートも今より充実させ、自分をバージョンアップさせる! 本郷さん自身の経験をもとに「冒険的外食術」「リーダーとしての外食術」「モテる外食術」など、具体的な外食の方法を解説した一冊。



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