OCEANS × Forbes JAPAN Vol.86
2021.11.25
FASHION

着られずに捨てられる服をアップサイクル。原宿にできた「ラボ」は何を生むのか?

当記事は「Forbes JAPAN」の提供記事です。元記事はこちら

原宿に誕生した「NewMake Labo」

日本では、年間15億着もの服が「誰にも着られることなく」廃棄されている。近年サステナビリティが重要な経営課題となるなか、ファッション業界では「衣料品の大量消費・大量破棄」が大きな問題となっている。

そこで注目されているのが、捨てられるはずの服の価値を高めて再販売する「アップサイクル」である。不要になった衣料品を回収して、もう一度原料として活用する「リサイクル」ではなく、元の製品に新たな付加価値を持たせて、別の新しい製品にアップグレードする取り組みだ。

そんな「衣料品のアップサイクル」をテーマに、企業と個人が共創できる空間「NewMake Labo(ニューメイクラボ)」が7月26日、東京・原宿に誕生した。アパレル企業から提供を受けた余剰在庫の衣料品などを、新たな作品にアップサイクルできるラボで、若手デザイナーらがアップサイクルを通してつながる場をつくることで、未来のファッションシーンを盛り上げる狙いもある。

手ぶらで行っても服作りができる場所

「たくさんの想いと手を通じて生み出された新しい服が、誰の物語を纏うこともなく捨てられていくことのないように」。そんな想いから生まれたニューメイクラボを手掛けるのは、東急不動産と、体験型シェアリングサービスを提供するSTORY&Co.、ブラザー販売の3社。

東急不動産が無償で提供したラボ内には、ブラザー販売が無償提供したミシンやプリンターをはじめとした洋裁道具や素材などが揃い、手ぶら行っても服作りができる環境となっている。ラボを使用するには、STORY&Co.が運営する循環型ファッションのコミュニティ「NewMake(ニューメイク)」の会員(会費無料)になる必要がある。

「アップサイクル」の作業は、基本的にラボ内で行うルールだ

STORY&Co.の細川拓CEOによると、ニューメイクは「Sustainable」「Story」「Share」という3つの特徴を持つ。

「Sustainable」は、メンバーがともに「廃棄品を生み出さず、けれどファッションらしいワクワクを携えた新しい価値を生み出すにはどうしていけばいいか」を考えること。「Story」は、提供を受けた洋服や自分自身、そして仲間のストーリーを理解することで1人では成しえない新しい価値を創造すること。「Share」は、技術だけでなく作品に対する想いや楽しさを拡散すること、である。

NEXT PAGE /

蓋を開けてみると「熱意」ある若者ばかり

オープンから約3カ月が経った現在、会員数は465人。アパレル業界を中心に社会人として5〜7年のキャリアを積んだ人が多く、平均年齢は27歳だという。なお、経験を問わず誰もが会員になることができ、選考もない。

会員に共通しているのは、サステナビリティに対する熱い想いがあること。会員の申込フォームには、ヒアリングのため「興味を持った理由」や「やってみたいこと」を書く欄があるのだが、細川はその熱意に驚いたという。

「個人では何もやりようがなくて困っていた、という方が多くて。専門学校を卒業すると、仲間と一緒に作品制作をする機会が少なくなってしまうので、『コミュニティで仲間を見つけたい』というニーズもありました」

STORY&Co.の細川拓CEO

「アディダス」など大手ブランドが協力

このような熱量の高い会員に、企業側も期待をかける。スタート前から、ミッソーニ、アディダス、ニューバランスなど15を超えるブランドが素材提供に協力した。近年のサステイナビリティ機運の高まりで、ブランド側もリメイクへのハードルが低くなっているとみられる。

「ブランドさんにご協力いただいた理由を聞くと、ファッションへの関心が高く、かつ環境意識も高いクリエイターの方々に、ブランドのサステナビリティに対する姿勢について理解・共感いただきたいという声が多かったですね。彼らを巻き込みながら最終的には消費者へと伝えていきたい、という想いがあるようです」

そのため作品制作の参加者には、ブランドのストーリーを理解してもらうために、企業による「オンライン講習会」の受講を必須としている。それを受けてリメイク作品のデザインを考え、応募する仕組みだ。扱うブランドは約1カ月ごとに入れ替え、毎回会員の中から参加メンバーを募集する。応募者多数の場合は、デザイン画などを元に提供素材の数などに合わせて選考される。

選ばれた参加者は、ラボを使って2〜3週間ほどで作品を制作。完成品はラボで展示される。今後はオークションでの販売も視野に入れているという。

「扱う商品によって、アップサイクルに必要なスキルも異なります。同期間に数十人のデザイナーが選ばれるのでそのスキルを持つ人が、持たない人に教えてあげるなど、お互いに学び合うことができる点もコミュニティのメリットです」

NEXT PAGE /

百貨店の「余剰在庫」に疑問

ニューメイクラボのオープン後、第一弾プロジェクトとなったのが、イタリアのラグジュアリーブランド、ミッソーニの商品のアップサイクル。セールやアウトレットに流す前の商品の提供を受けた。

ミッソーニのアップサイクル作品。左からそれぞれ、「an/eddy」ニットクリエイターの渡辺千紘、「YuumiARIA」デザイナーの鈴木ゆうみが手掛けた。

このプロジェクトに参加したデザイナーの一人、水野夢子(MIZU代表)は、ポンチョ・ブラウス・チューブトップ・ドレスの4アイテムに分解できる洋服を制作した。

ミッソーニの創始者、故オッタヴィオ・ミッソーニの話から着想を得て、フィレンツェを象徴するサンタ・マリア・デル・フィオーレ大聖堂からインスピレーションを得たデザインに仕上げたという。

水野がアップサイクルした作品

水野は大阪文化服装学院卒業後、百貨店に出店するアパレルブランドでチーフデザイナーとして勤務。3年後、フリーデザイナーとして独立し、ファッション系の専門学校5校でデザイン講師も務めている。

彼女がニューメイクに関心を持った背景には、百貨店時代に多くの余剰在庫を目にして「同じデザインの服を大量につくって消費するというのは、いまの時代に合っていないのではないか」と感じた“原体験”がある。

「ファミリーセール(関係者向けに行われる値引きセール)を開催していることからも分かると思いますが、百貨店では毎シーズン7割くらいのアパレル商品が売れ残ります。とはいえ、“在庫ゼロ”では店舗として成り立たないので、消化率80〜90%が目標となっています。つまり、始めから余剰在庫が出る計算なんですね」

こうした課題を解決したいと、独立して受注生産のブランドを起業。リメイクへの関心も高まり、個人的に作品を手掛けるようにもなった。「ただの“お直し”ではなく、新しい価値を持たせるためのリメイクは、正直、通常の洋服の制作よりも難易度が高いと思います。ただ、新しいジャンルに挑戦することができるので、幅が広がります」

未来を担うデザイナーが生まれる場所に

第二弾はスポーツブランドのコールマンのプロジェクトを実施し、約30人が参加。今後も様々なジャンルのブランドと協業し、制作を通じて若手デザイナーの育成にもつなげる。

細川は「ラボはファッションの聖地・原宿に立地するので、日本のアパレル業界の未来を担うデザイナーたちが生まれる場所になることを願っています。そして、コロナ禍で元気のない街全体にも、刺激を与えられる存在になればと思います」と期待する。

水野も「私は受注生産のブランドをやっているので、一人のデザイナーとして、新たな仕事につながるような接点にできればと思っています」と、夢を語った。

 

田中友梨=文

記事提供=Forbes JAPAN

# アップサイクル# サスティナブル# フォーブス
更に読み込む
一覧を見る