OCEANS × Forbes JAPAN Vol.80
2021.10.13
FASHION

記憶に残る「朱色」のジャージ。快適すぎると評判だった理由はこれだ

当記事は「Forbes JAPAN」の提供記事です。元記事はこちら

アシックス アパレル・エクィップメント統括部 大堀亮

「表彰台にいる選手の表情を見ていると安心した」

声の主は、アシックスのアパレル・エクィップメント統括部デザイン部DTC/SMUデザインチームに所属する大堀亮だ。日本代表選手団のオフィシャルスポーツウェアの開発を担当した。

なかでも、ポディウムジャケット(表彰式や選手村で着用)は、同社の技術が最大限に搭載されているという。今夏、ポディウムジャケットはじめウエアやシューズのレプリカモデルが販売となった。選手らが着用していたこれらのアイテムの開発背景について大堀氏に聞いた。

1つのデザインで選手全員が正しく着用できるウエア

日本代表選手団のウエアといえば、朱色のそれだ。サンライズレッドといい、朝日が昇る力強さをイメージした鮮やかな色が採用されている。

このカラーはここ数年のあらゆる国際的なスポーツ大会で着用されてきた。遠くから見ても日本人選手がすぐわかるくらい、インパクトのあるものだ。

しかし、このウエアは、見た目の鮮やかさだけで語るにはもったいないほどの仕組みが搭載されている。

「表彰台にはジャケットを着用して参加するという決まりがあるのですが、日本の夏は非常に暑い。そんな中でも快適に着用するためには何が必要かと考えました。肌に触れると冷たさを感じる接触涼感素材があるのですが、これでは一時的にしか体を冷やしません。

アシックススポーツ工学研究所で検討を重ねて『通気性』に着目。二層のメッシュ構造で通気性を高め、ジャケット内の温度を効果的に下げる『ACTIBREEZE-TECH(アクティブリーズテック)』という構造を開発しました」。

スポーツウエアにおいて、通気性はあればあるほど良いというわけではない。空気が通り過ぎると今度は体を冷やしすぎてしまうという問題がある。アクティブリーズテックでは、全体的にメッシュ構造とするのではなく。

体が熱くなりがちなゾーンを導き出し、そのポイントに対して重点的にメッシュの編み目を大きくした。そうすることで、メッシュ構造内で空気が流れるようになり、効率的な通気が可能となるのだ。

実際に歩いているだけで、振った腕から風が入ってくるので不思議だ。風を通すことで衣服内環境を整える。日本の高温多湿の気候に対応した同ウエアは、多くのシーンで選手が着用することとなった。

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「今回は、一つの競技のウエア作りではなく、競技、年齢、性別が異なる日本代表選手団のウエアとなります。コーチをはじめとするスタッフの方も着用しますよね。体が熱くなりがちなゾーンというのは、着用者によってそれぞれで位置が異なります。

1つのデザインで全員が正しく着用できるよう表現する部分が最も難しかったです。我々が作るものは、選手が安心して着用できて、またカッコよく見えるものです。実際に表彰台にいる姿を見ていると、凛とした表情で逞しく見えたので安心できました」。(大堀)

ライフスタイルウエアに適応されるアシックスの技術

「障がいのある方が着用しても、スムーズに着脱できるようになっています」。(大堀)

というのも、同ジャケットのフロントファスナーは珍しい仕様となっている。簡単にファスナーの左右が組み合い、そのまま少ない力で持ち上げることができるのだ。

また、ジャケットを脱ぐ際はスライダーより上側を左右に引っ張るだけで、簡単にファスナーが開く。いずれも片手で脱着が可能であることを意味している。

ファスナーの端があまり見ない形状になっている。着脱が容易になるという形だ。

シューズにもこういった工夫が。サンライズレッドが採用された選手のシューズは、車イスのアスリートや義足アスリートにも対応するため、履き口が広く設計されている。

足が不自由だったり、義足であっても、スムーズにシューズに足入れができるのだ。紐も軽く引っ張るだけで締まってくれるので、履く人を選ばない。

スポーツウエアの進化は日進月歩である。今回のこの日本代表選手団オフィシャルスポーツウェアの衣服内環境を保ち快適性を担保する技術は、「軽量性」「速乾性」「はっ水性」でも、高いレベルで表現している。また、いずれアクティブリーズテックは、Tシャツなどのライフスタイルウエアにも適応されていく予定だと大堀氏は話す。

今回、このポディウムジャケットなどのレプリカモデルが販売されている。一般にレプリカモデルは形が異なるモデルが多いが、今回はほぼ同じと言える。

ポディウムジャケットは、上記の機能を搭載した選手モデルである(エンブレムデザインや一部の仕様は異なる)。47300 円(税込)と高額ではあるが、公式ECを見るとXS〜M、XL~3XLが完売していることから、その注目の高さがうかがえる(2021年9月6日現在)。

インパクトあるサンライズレッドの高機能ウエアに身を包んで、選手に想いを馳せてみるのも良いだろう。

 

上沼祐樹=文 西川節子=写真

記事提供=Forbes JAPAN

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