服づくりから街づくりまで。ノーボーダーに活躍するデザイナーの足跡
フロントランナーたちの足跡●どのジャンルにもいる、業界の先駆者やイノベーターたち。生き方や考え方はそれぞれ異なれど、共通するのは「ボーダーを作らない価値観」だ。同じく、ノーボーダーなモノ作りをしてきたコール ハーンと探る、彼らの足跡。
「物語を感じさせる服や靴が好きです。注目するデザイナーの服はコレクションするつもりで買っていますね」。
そう語る小田雄太さんは、デザイナー、アートディレクターとして活躍する、その界隈では今もっとも脂の乗ったひとりだ。

「一方、ファンクションのあるものも好きで、いろんなメーカーがドレスシューズのアッパーとスニーカーソールの融合に取り組んでいますが、コール ハーンの伝統に敬意を払いイノベーションしてゆく姿勢には、とても共感できます。」。
デザインの核心は「伝統と革新の融合」だ
4月1日(水)に下北沢の線路街に開業する「ボーナストラック」は、店舗住宅一体型のSOHO4棟と、4つの商業棟からなる新たな商業施設だ。オープン前から話題になっているこの施設のVI・サイン計画を手掛けたのも小田さんである。
「ボーナストラックは、下北沢の『今まで』と『これから』の歴史が交わる場所です。僕がアイコンに選んだのはダルマでした」。

さらに小田さん続ける。
「シモキタは古くから職住一体の街として栄えてきて、商店主の多い街なんです。今、若い人たちが新しい街をつくろうとしていますが、一方で、営々と積み上げてきたものも忘れてはならない。ダルマといえば商売繁盛の象徴ですから、まさに下北沢に相応しいと思いました」。
デザインにあたって、小田さんは常に歴史的な文脈を重視する。ナショナルチェーンを並べていっちょあがり──そんなのは街づくりではない、と豪語する。
外見と内面のギャップが磨いたデザイナーの感性
この気鋭のデザイナーは、いかにして誕生したのか。そのルーツを探ってみよう。

体育教師の両親のもとに生まれた小田さんは、子供の頃から体が大きかったという。しかし、そのルックスには似つかわしくないほど病弱で、当時は喘息用の吸入器が手放せなかったそうだ。
「子供心に、外見と中身のギャップには悩んできました。外からどう見られているのかずっと気にしていました。でも、そのギャップを埋める作業にこそデザインの本質があるし、そういう意味では子供の頃からデザイナーとしての感性を鍛えてきたと言えるかもしれません」。
そんな少年時代の忘れられない記憶が、コム デ ギャルソンの発行したビジュアル・ブック『Six』である。
「ふらりと寄った古本屋で、好きなマンガの隣に無造作に突っ込まれていました。その本は人間のユーモアとかグロテスクとかが混然一体となっていて、今思えばファッションやデザインへの初期衝動を覚えたきっかけになってますね」。

長じて小田さんはファッションやグラフィックの世界を志し、多摩美術大学のグラフィックデザイン学科へ進学。卒業後は明和電機に入社した。小田さん曰く、明和電機は“中小電機メーカーに偽装した芸術ユニット”である。
2003年、明和電機は世界的な芸術・先端技術、文化の祭典「アルス・エレクトロニカ」のインタラクティブアート部門で準グランプリを獲得。世界で巡回展を行うことが決まった。そこで急遽グラフィックデザインができる人間が必要となり、小田さんに白羽の矢が立ったのだ。
その後は数社のデザイン会社を渡り歩いたが、一から十までセルフプロデュースで乗り切る明和電機で鍛えられた小田さんにとって、それらの仕事は勉強になりつつも、自分なりのやり方を模索する必要を感じていたそうだ。
そうして2011年、デザイン会社「コンパウンド」を立ち上げて独立する。
仕事に壁はなし。縦横無尽なデザインワーク

小田さんの勢いは止まらず、現在抱えているプロジェクトはおよそ10。同時進行の数もさることながら、驚きはその領域の広さだ。縦横無尽な仕事ぶりはこれまでの実績を振り返れば明らかになる。
ニュースメディア「NewsPicks」のVI計画やユーザーインタフェースの開発、ディスクユニオンの「DIVE INTO MUSIC」、そしてコム デ ギャルソンの「ノワール ケイ ニノミヤ」のデザインワーク、本にまつわる雑貨ブランド「ビブリオフィリック」のブランディングなど、まさにノーボーダーである。
そして、その手は今や街づくりにまで広がった。きっかけは「まちづクリエイティブ」の代表、寺井元一さんだった。「まちづクリエイティブ」は、その名のとおり持続可能な街づくりをコンセプトとする会社だ。

「宮下公園やセンター街の壁面をグラフィティライターたちに開放した仕掛け人ということで、深夜のドキュメント番組で偶然知りました。彼らは事前に、描いた絵の除去を約束をすることで、行政から正式に『合法に描いていいよ』と許可を得たんです。時代を象徴するようなカルチャーを発信してきた渋谷らしいアイデアだと思いました」。
知人を介して寺井さんと知り合った小田さんは、「仕事を手伝って欲しい」という寺井さんのオファーを二つ返事で引き受けた。
その後、小田さんは「まちづクリエイティブ」取締役に就任、今に至る。
ノーボーダーな歩みに寄り添う靴とともに

小田さんはデザインを武器に“常識”という見えない壁を取り払い、一歩一歩、着実に歩んできた。そう考えれば、「スニーカーのような革靴」という、常識破りの靴を生み出したコール ハーンと親和性が高いのもうなずける。

コール ハーンはフィジカル面でも相性が良かったようだ。新作に足を滑り込ませた小田さんは「足を入れた瞬間から喧嘩しない靴は初めてです」といって目を丸くした。
両親譲りの恵まれた体格を持つ小田さんの足は、その体を支えるべく威風堂々としている。いわゆる甲高幅広である。そんなわけで、これまでは履き心地に定評のあるブランドでも数カ月の靴擦れに耐えなければならなかった。
靴はそういうものだとなかばあきらめていた小田さんにとってコール ハーンは手放せない一足となるに違いない。そして、今後のノーボーダーな歩みをともにしてゆくだろう。
小田さんが共感するコール ハーン
「履いた瞬間から足に馴染みます」
この日、小田さんが着用した「オリジナルグランド ウィング オックスフォード ラグジュアリー」。上質なカーフレザーが高級感を生む一方で、独自素材のソールによって弾むような履き心地を実現。「見た目は品のある革靴なのに、歩く感じは高機能なスニーカー。まさに伝統と革新の融合です」。3万8000円/コール ハーン(コール ハーン ジャパン 0120-56-0979)
「オリジナルグランド ウィング オックスフォード ラグジュアリー」の詳細はこちら
「ドレッシーで配色も美しいですね」
新たに登場した「フェザークラフト グランド ブルーチャー オックスフォード」は、クラシックなドレスシューズの装いながら、とことん軽量化にこだわった一足。「見た目からは想像できないほど履き心地は軽やか。ダークブルーのアッパーとブラウンのシューレース、ソールも好配色で美しいですね」。3万5000円/コール ハーン(コール ハーン ジャパン 0120-56-0979)
「フェザークラフト グランド ブルーチャー オックスフォード」の詳細はこちら
「こんな軽いスニーカーは初めてです!」
足の負担を極限まで減らした超軽量のスニーカー「グランドプロ ラリー コート スニーカー」。フィット感と機動性、通気性にも優れたオールマイティな一足。「こんな軽いスニーカーは初めてです」と小田さんが衝撃を受けたのも納得の、片足約310グラム(USサイズ8.5で計量)。2万7000円/コール ハーン(コール ハーン ジャパン 0120-56-0979)
[問い合わせ]
コール ハーン ジャパン
0120-56-0979
www.colehaan.co.jp
清水健吾=写真 竹川 圭=取材・文