そこが知りたい! 女性が好きな男服 Vol.30
2020.09.18
FASHION

英国クラシック×ウーマンデザイナー=我々を“女性目線”で素敵にしてくれる逸品

英国ブランドならではのクラシックで上品な佇まい。そこに女性デザイナーのセンスが加わった逸品を集めてみた。

女性ならではの感性と発想から生まれたプロダクトに見て取れる、“理想の男性像”。それぞれの想いに耳を傾けながら、じっくりと紐解いていこう。

 

「ジェンダーレスこそ今の価値観そのもの」
STELLA McCARTNEY ステラ マッカートニー

新たなカプセルコレクション「MNMO(メンバーズ アンド ノン-メンバーズ オンリー)」/ステラ マッカートニー
21万円/ステラ マッカートニー 03-4579-6139

ステラ マッカートニーというブランドはデビュー当初からアクティビストであった。動物愛護の精神に則り天然皮革とファーはいっさい使わない。サステイナブルな素材を用い、環境保護活動に積極的に取り組む。

ファッションとしての美しさの追求に加え、服作りを通じて社会にどんな変化をもたらすことができるのかを、常に考え続けてきたのだ。

「ブランドを始めた頃はこんなビジネスモデルは成功しないと言われました。でも今では多くの人々が私たちの哲学に共感してくれています」。

ステラ・マッカートニーさんはこう語る。その後2017年スプリングコレクションより満を持してメンズラインをスタート。当時オーシャンズをはじめ多くのメディアに報じられた。

実はステラさんはセントラル・セント・マーチンズ時代に、サヴィルロウ(ロンドン・メイフェア通りのテーラーが集うエリア)で紳士服作りを学んでいる。メンズに興味がなかったわけでは決してない。

「ただメンズウェアの世界は客層が限定的で、ルールに縛られている部分がありました。ですから最初のコレクションは、エフォートレスな空気を表現したかったのです。父(ポール・マッカートニー)のワードローブにも大きな影響を受けました」。

かつてステラさんが語ったように、ブリティッシュテーラリングの基本を押さえながらも、音楽、アート、ストリートの闊達さを表現したコレクション。「現代のメンズウェアとは何か」を鮮やかに披露し、世界中から厚い支持を得たのである。

背ヨークを大胆なチェック柄に切り替えたコート

さて時は流れ、’20年。ブランドは今、さらなる変化を提示しようとしている。それはジェンダーレスだ。新たなカプセルコレクション「MNMO(メンバーズ アンド ノン-メンバーズ オンリー)」にその主張が込められている。

背ヨークを大胆なチェック柄に切り替えたこのコートをはじめ、男性でも女性でも楽しめるラグジュアリーで都会的な服が揃う。

「今の若い世代はオープンマインドでジェンダーも流動的。多様性を認め合い、気候変動や社会不安に立ち向かう彼らの姿はとても美しい。その価値観はまさに私たちと同じ。だからこそ今、フェミニンとマスキュリンが融合するコレクションを作ったのです」。

デザイナー
ステラ・マッカートニーさん
イギリス生まれ。1995年、ロンドンのセントラル・セント・マーチンズ卒業。2001年に自身のブランドを設立。’17年にメンズラインをスタート。デビュー以来一貫して「サステイナブル」を根底に置いた服作りを続けている。 ©Mary McCartney

 

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「あからさまでなく静かに語る大人服」
STUDIO NICHOLSON スタジオ ニコルソン

シャツジャケット&イージーパンツからなるセットアップは、ソフトでハリに富むオーガニックコットンツイル製。/スタジオ ニコルソン
ジャケット3万9000円、パンツ3万9000円/ともにスタジオ ニコルソン(キーロ 03-3710-9696)

「幼い頃から興味の対象はまるで男の子のようでした。そして今も私のクローゼットは、メンズ服ばかり」。そう語るのはデザイナーのニック・ウェイクマンさん。そんな彼女のミューズは、デヴィッド・ボウイなのだそう。

彼の魅力について「経験豊富でありながら、それをあからさまに表には出さず、内にしっかりと自分を持っている」と話すとおり、スタジオ ニコルソンも個性を見せつける服ではなく、デザインはシンプル。上質で上品な素材と仕立てによって人々を魅了する。

その礎にはファブリックへの深い見識と確かなテーラリングがある。クラシックな紳士服が備える品の良さ、正統性に強く感化されつつ、そこにタフさ、ストリートな感覚、デイリーウェアの要素を小気味良くミックスする。

「写真のシャツジャケット&イージーパンツからなるセットアップは、ソフトでハリに富むオーガニックコットンツイル製。ゆったりしたシルエットや落ち着きのあるショコラ色をワントーンで採用することで、大人のエレガンスを表現しています」。

無作為に合わせてもマッチする“モジュラー ワードローブ”と名付けたブランド理念のもと、セットアップでも上下別々でも、合わせる服を選ばず着回しやすい。装いの主役・脇役にと、つい頼ってしまう使い勝手のいい逸品だといえよう。

デザイナー
ニック・ウェイクマンさん
イギリス生まれ。美術大学でファブリックについて学び、イギリスのテーラーで技術を習得。2011年、クラシックな紳士服の要素を取り入れコンテンポラリーに昇華したウィメンズブランドを発表。’17年、待望のメンズラインを始動。

 

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「祖父の服を、父の服を覚えている」
MARGARET HOWELL マーガレット・ハウエル

そういえば私が初めてつくったジャケットは、理髪店を営んでいた祖父の上着にそっくり。/マーガレット・ハウエル
ジャケット8万5000円、パンツ4万5000円/ともにマーガレット・ハウエル(アングローバル 03-5467-7864)

一貫してシンプルかつ実用的な服を発信し続けてきたマーガレット・ハウエル。50周年を迎える今季コレクションでは、メンズ、ウィメンズの各レーベルを多様に組み合わせ、よりタイムレスでジェンダーレスなショーを披露した。まるでブランドの原点へと立ち返るように。

「元来、メンズとウィメンズのデザインを分けて考えていません。基本的にイギリスのテーラード、ワーク、ミリタリースタイルをモダナイズすることが“デザインの面白み”。ただ、メンズには柔らかさを加えてマスキュリンになりすぎないようにし、逆にウィメンズにはテーラリングの要素を加えてバランスを取っています」。

マーガレット・ハウエルさんがこう語るデザインの要諦は、老舗毛織物メーカー、フォックスブラザーズの生地を使った写真のセットアップにも表れている。「英国フランネルの代名詞」と呼ばれる伝統素材を用いながら、ソフトな仕立てで、現代的なシルエットを作り上げている。

「初めてこのメーカーを知ったのは1970年代の終わり頃。ロンドンで開催されていた毛織物の展示会を訪ねたときです。ブースに老紳士がひとりで座っていました。それが当主のデヴィッド・フォックス氏。そのとき彼が着ていたスーツと生地見本を見て、この会社こそ私の探し求めているものだと直感したのです」。

200年以上にわたり受け継がれたノウハウに忠実に、ベストクオリティなものづくりを続ける。その揺るぎない信念に敬服しているという。そしていつしかマーガレット・ハウエルも同じようにタイムレスな服をつくり続けて50年を経たというわけだ。

「チャリティバザーで見つけたピンストライプのメンズシャツが私の服づくりの原点。素材は柔らかくステッチは繊細。こんなシャツをつくりたいと思ったんです。

そういえば私が初めてつくったジャケットは、理髪店を営んでいた祖父の上着にそっくり。また、父が着ていた園芸用コートや袖をロールアップして着ていたシャツを今でもよく覚えています」。

職人やアーティスト、彼女の父や祖父のようにリアルに働く男性がインスピレーションの源のようだ。

デザイナー
マーガレット・ハウエル さん
イギリス生まれ。ロンドン大学ゴールドスミス・カレッジでファインアートを学び、卒業後は自宅でアクセサリーを製作。1970年に初のメンズシャツの製作を機にブランドがスタート。現在イギリス内に7店舗、日本では90店舗を展開。

 

鈴木泰之=写真 菊池陽之介=スタイリング 加瀬友重、いくら直幸、秦 大輔=文

# マーガレット・ハウエル# イギリスブランド# ウーマンクリエイター# 女性目線
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