サザンオールスターズの名曲のひとつ「C調言葉に御用心」。「C調」とは「調子いい」の前後をひっくり返したいわゆる符牒で、1960年代の音楽業界で使われていた言葉だ。2019年の今あえてその言葉を借りれば、セリーヌの新作シャツは今季最も「C調」なシャツではないだろうか。
素材はコットンポプリン。清潔感と大人らしさを漂わせる、シャツの王道ファブリックである。デザインもいたってシンプルだ。襟はコンパクトなスキニーカラー。
袖口はシングルカフ。前立てはオーセンティックな巻き縫いのダブルステッチで、身頃には余計な装飾はもとより胸ポケットもあえて省略している。ジャケットのインナーにはもちろん、デニムに合わせて1枚で着てもいい。そう、シャツはこれでいい。いや、これがいいのだ。
唯一の遊び心は、シャツの裾の脇に刺繍されたセリーヌのイニシャル“C”。上品このうえなし。モード好きであれば「調子いいシャツを着ているな」と、ひと目でわかる符牒でもある。
清水健吾=写真 柴山陽平=スタイリング 加瀬友重=文