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2019.04.29

ファッション

虫食い、縮み、型崩れ……押し入れにしまうニットを悲しくさせない三原則

正しいメンテと賢い収納術【冬服編】●4月に雪が降る異常事態を終え、そろそろアウターをクローゼットにしまい込んでも良さそう。でもその前に、ちゃんとメンテした? 次の冬も仲良くするための適切なケアと保管方法についてプロに聞いてきた。
涼しいときは1枚で、寒くなったらインナーで。汎用型のニットは、その分汚れやすいアイテムでもある。それが原因で起こる、虫食い。間違った洗濯による縮み、型崩れ。意外と懸念事項の多いニットの正しい扱いを、押し入れにしまう前に知っておこう。

古着を山ほど見てきた男の、残念なニット話

「しまってた ニットを広げて気付く 虫の穴」(服好き川柳)。
こんな経験、誰もがしたことあるはずだ。ヴィンテージに精通する中目黒の名店・ハレル店主、加瀬善隆さんもこう話す。
「昔、デッドストックでイギリス軍のガンジーニットを何枚か仕入れたことがあるんですよ。ボートネックで、ごわついたウール素材のヤツ。でも、実際に届いた箱を開けたら1/3は虫に食われていて店に出せませんでした。カシミヤなどの高級素材だけがターゲットじゃないんですよね」。
続けざまに残念なエピソードが。
「あとは形ですよね。縮んで着丈が短ランみたいになっていたり、タイトすぎてウエットスーツみたいになっていたり。形を整えようと引っ張ったら、羊毛がホコリを吸って硬くなっていてちぎれたり。あなたのソレも、適当にタンスに入れておくとそうなりますよ、ハハハ」。
笑いごとじゃありません。さぁ、正しいメンテナンス方法を学びましょう!
加瀬善隆さん●「ハレル」代表。10代で古着にハマり、ヴィンテージショップで働き始める。その後、渋カジ世代にもお馴染みのセレクトショップで買い付けなどに携わったのちに独立。2014年、中目黒の路地裏で「ハレル」を開店する。造詣の深さには業界からの信頼も厚い。

 

ニットの長期保管で自信を持つための三原則

これまで何万着ものニットをクリーニングしてきた名店、レジュイールの榎本裕介さんによる、自宅でできるニットケア。過去の失敗は繰り返さないために、手取り足取り教えてください!
こちらが榎本さん。この道15年以上という、クリーニングのベテランで、特にシミ抜きの技術なら右に出る者なし。

【1】手洗い、ぬるま湯、中性洗剤。

「衣替えでしまう前に、まずはニットをキレイにしないといけませんよね。ドライクリーニングに出す方も多いと思いますが、家庭で洗うのも選択肢のひとつです」。
家庭でニットを洗うって、負け戦の予感しかしないんですが……。愛用の1着がチビニットになるのだけはご勘弁を。
「洗濯機はダメですよ。絶対に手洗いで。ウールがフェルトのように縮むのは繊維のキューティクル同士が絡まるからなので、手でゆっくり洗っていけばそうならずに、汚れだけ落とせるんです」。
具体的な方法としては、液体タイプの中性洗剤を溶かしたぬるま湯を風呂桶やバスタブに張り、そこで洗うのが良いとのこと。
「水は暖かい方が汚れは落ちやすいんですが、ウールやカシミヤは熱を加えすぎると急激に縮んでしまうことがあるので、あまり熱いお湯は使わないでください」。
生地はあまり揉まずに、手で押すようにしながら洗っていくとなお良し。綺麗になったら、洗った時間の倍以上をすすぎにかけるように、とのこと。
 

【2】シルエット維持は、干し方次第。

キレイになったら、あとは干すだけ。だが、ここで注意が必要。間違ってもハンガーに掛けないように。
「ニットはただでさえ柔らかく型崩れしやすいので、ハンガーで吊るすと服自体の重みで伸びてしまいます。今は平干しできるネットなどがたくさん売られているので、そちらに置いて干すと、シルエットを崩さずに乾かせますよ。すすぎを終えて水気をある程度切ったら、まず手で軽く引っ張りながら形を整えてください。洗う前に採寸しておいて、それに合わせるのがベストですね」。
さぁ、あとは乾くのを待つだけだ。
形を整える際には、広げて全体のバランスを見ながら行うこと。そうしないと、局所的に妙なバランスになってしまうことがある。
 

【3】畳み方にもひと工夫

ニットの保管は、干し方同様に平置きがベスト。しっかり乾いてさえいれば、もちろん畳んでOKだ。
「両袖を胸の前で交差させてボディの中央で折りたたむと、形を維持したまま収納できて、ほかのニットとも重ねやすいです。その際に、ニットの間や腕などが重なる部分に不織布を挟んでおくとより良いですよ」。

まず、両袖を前に一度折りたたむ。

次に体の中央で一度畳んで……

最後にフードやネックを折る。これなら重ねやすく、スペースも取り過ぎない。
「あとは、絶対に忘れちゃいけないのが防虫剤と湿気取りです。防虫剤は置きで使えるタイプにしてください。湿気取りもカビ対策には不可欠ですよ」。
 
保管は、もちろん日陰で通気性のある場所というのも大切だ。こうすれば最高の状態を保てるとわかった以上、次の秋冬は今まで以上にお世話になりたい所存です。
ってことで、次に会う日までニット君、ひとまずオヤスミ!
Rejouir(レジュイール)●約35年の歴史を持ち、現在では世界的メゾンからのクリーニング依頼も途絶えない東京・南麻布の高級クリーニング店。熟練した職人がアイテムごとに最適な処理を見極めて、1点1点に膨大な手間をかけてケアしてくれる。
住所:東京都港区南麻布1-5-18 FRビル
電話:03-5730-7888
営業:9:00〜18:00
日・月曜、祝日定休
今野 壘=取材・文


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