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コルテッツ、スウェード、ジャックパーセルは、どのように傑作に成長したのか?

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服もクルマもスニーカーも、時代に淘汰されず歴史を紡いできたものこそが傑作たり得る。誰もが知る6ブランドの6足。その来歴を、専門誌「シューズ・マスター」(実業之日本社刊)の編集長でありオーシャンズ世代の榎本一生さんと振り返る。M996、キャンパス、スリッポンに続く今回は……。

榎本一生
えのもといっせい●1976年、千葉県生まれ。2004年より年2回の刊行を続ける「シューズ・マスター」の編集長。趣味はラン。昨年の東京マラソンは3時間16分(!)で完走。




イノベーションの哲学はこのスニーカーから始まった
ナイキの「コルテッツ」

イノベーションの哲学はこのスニーカーから始まった。ナイキの「コルテッツ」
8000円/ナイキ スポーツウェア(ナイキ 0120-645-377)

「現在あらゆるジャンルのシューズを生産するナイキですが、その始まりは陸上競技用のランニングシューズ。そして、その元祖というべきモデルが『コルテッツ』です」という榎本さん。「コルテッツ」の登場は1972年。初代モデルとしてナイロン製のアッパーとレザーアッパーの2種類が用意された。

コルテッツを語るためには、ナイキの2人の創業者について触れなければならないだろう。そのひとりビル・バウワーマンは米オレゴン大学陸上部のコーチであり、もうひとりのフィル・ナイトはその陸上部に所属する中距離ランナーだった。

その後ナイトはスタンフォード大学でMBAを取得し、’64年にバウワーマンと共同でナイキの前身「ブルーリボンスポーツ」を設立。「コルテッツ」の原型となる日本製シューズを設計・開発した。そしてブランド名「ナイキ」を商標登録した’71年の翌年、改めて「コルテッツ」はアメリカ市場にデビューしたのである。

「コルテッツ」の画期的な点はソールにあった。2枚の柔らかいスポンジラバーの間に硬めのラバーを挟み込み、衝撃吸収性とクッション性を大きく向上させたのである。榎本さんは「新たな切り口、新たなアイデアから生まれた技術を積極的に採用するナイキの企業哲学は、ここから始まっていると思います。『コルテッツ』はナイキが“イノベーションカンパニー”であることの礎となるシューズなのです」と語る。

その後、現在までナイキのクッショニングシステムの根幹を支え続ける「エア」が’79年に発表されると、「コルテッツ」はランニングシューズとしての第一線の座を後進モデルに譲ることになる。

しかしながら、その履き心地の良さはライフスタイル用スニーカーとして新たな価値を生み、今日でもナイキのプロダクトの一角を担う存在として君臨。もちろんファッション的にも、ミニマルで完成されたそのデザインが愛され続けていることは言うまでもない。

白×赤の「コルテッツ」が映画の中で“アメリカ横断”

© Photofest/Aflo

1994年後悔の映画『フォレスト・ガンプ/一期一会』に登場。トム・ハンクス演じる主人公が、アメリカ横断を何往復も走り続けていたときに着用したのが「コルテッツ」だ。

スポーツマーケティングにおけるPRのスタンダードを確立

© NIKE JAPAN

’73年、当時米国国内記録を多数保持していた中距離ランナーのスティーブ・プリフォンテーンと契約。以降、ナイキはブランド認知のために多くの有名選手と契約を交わしていく。


当時も今もファッショニスタを刺激するローカット
プーマの「スウェード」

当時も今もファッショニスタを刺激するローカット プーマの「スウェード」
8900円/プーマ 0120-125-150

1968年に誕生したプーマの「スウェード」は、今日まで高い人気を保ち続けているプーマの傑作だ。その名のとおりアッパーにはスエード素材を纏っている。この「スウェード」、スニーカーファンたちの間でその原点がバスケットボールシューズという認識が持たれている。この認識は正しくもあるのだが、より正確には「多目的に使えるトレーニング用スポーツシューズ」として開発されたモデルなのだ。

さて当時のバスケットボールシューズといえばキャンバス地のアッパーが主流。そんななか颯爽と現れた「スウェード」に惚れ込んだNBAプレーヤーがいた。当時ニューヨーク・ニックスに在籍し、ポイントガードとして頭角を現し始めていたウォルト・“クライド”・フレイジャーである。フレイジャーはスエードアッパーのシューズ製作をプーマに依頼。こうして’73年に彼のシグニチャーモデルとして「クライド」が誕生した。

「スウェード」と「クライド」が非常によく似ているのには、こんな経緯があったのだ。当時「GQ」誌の表紙を飾るなど、コート外でもファッションアイコンとして注目されていたフレイジャーが履くことで、「クライド」、そして見た目がほとんど変わらない「スウェード」の人気は瞬く間に高まっていった。

「’60〜’70年代はバスケットボールシューズとして人気を高め、’80年代はヒップホップ黎明期のミュージシャンの足元を飾り、’90年代にはグランジなど古着系スタイルのスニーカーとして支持されてきた『スウェード』。もちろんスケーターのなかにも愛用者は多かったと思います。実に50年以上にわたって、ファッションとともに歩んできたスニーカーなんですよね」と語る榎本さん。確かに、発売当初から「ファッション目線」でも評価されてきた稀有なスニーカーだ。この先の50年も、スニーカー好きはもとより服好きにも愛される一足として、存在感を発揮し続けていくことだろう。

NBAプレーヤーを虜にしたカラフルなスエードアッパー

「スウェード」から派生したモデルが、1973年に登場した「クライド」。写真は’70年代のクライドの広告。ボールを手にしているのはウォルト・“クライド”・フレイジャーだ。

’80sヒップホップを描いた伝説のカルトフィルムにも登場

NY・サウスブロンクスを舞台に、当時のヒップホップカルチャーを描いた’83年の映画『ワイルド・スタイル』。ファットシューレースを通した出演者たちの「スウェード」が話題となった。


“スマイル”の内側にある外様としての来歴
コンバースの「ジャックパーセル」

“スマイル”の内側にある外様としての来歴 コンバースの「ジャックパーセル」
6000円/コンバース 0120-819-217

コンバースが誇る傑作スニーカーとして、「オールスター」と肩を並べる存在といえる「ジャックパーセル」。トウ先端のラインは“スマイル”、ヒールに左右対称に配置された2つの三角形の図案は“ヒゲ”と呼ばれ、ファンに長く親しまれてきたスニーカーだ。しかし意外なことに、この「ジャックパーセル」はもともとは他メーカーによって作られてきたシューズなのである。

1935年、当時のバドミントン界で最強王者として君臨したカナダ人プレーヤー、ジャック・パーセルが、スポルディング社とともに新たなコートシューズを開発。これが初代「ジャックパーセル」だ。販売はスポルディング社、生産はタイヤメーカーのB.F.グッドリッチ社が行っていた。トウに“スマイル”はあったがヒールラベルに“ヒゲ”はなかった。

その後’50年代には販売もB.F.グッドリッチ社に移行する。ヒールラベルに“ヒゲ”が現れ始めたのは’60年代になってからのことだ。当時はインソールの内くるぶし側を高く、外側を低く設計していたことに由来する。ヒゲのデザインは、実はこのインソールシステムを図案化したものだったのだ。

“コンバースの「ジャックパーセル」”として新たなスタートを切るのは、さらに時を経た’72年のこと。B.F.グッドリッチ社のフットウェア部門がコンバースに統合されたのである。「バスケットボールシューズの元祖である『オールスター』は確かに大定番ですが、僕らのような年齢になってみると少し若く見えるのかなという感じもします。その点、『ジャックパーセル』はより上品な印象に映りますし、今の時代感にも合っているのではないでしょうか」と榎本さんは語る。

確かに「ジャックパーセル」にはどこかノーブルな雰囲気がある。それは、イギリスの上流階級のスポーツとして始まったバドミントンのためのシューズ、という出自にあるのかもしれない。「ジャックパーセル」は白ベースがやっぱりいい。そう感じるのは、こんなコートシューズとしての来歴を持っているからなのだ。

「オールスター」と融合したようなハイカットモデルの正体は?

コンバース以前に販売・生産を行っていたB.F.グッドリッチ社では、1950〜’60年代に兄弟ブランドとして「プロ・パーセル」を展開。バスケットボールシューズとして販売された。


鈴木泰之=写真 加瀬友重=文

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