改めてデニムと向き合う。そこで気付いたんだ。デニムがあるからできるあんなコトやこんなコトが、山ほどあるということを。
新しいブランドと出合えたり、小さな変化に心を動かされたり……。そして、そんなデニムが大好きだということを。
前編に続き、後編へ突入!
デニムがあるから僕たちは……
⑤思わずワクワクするような新しいブランドとの出会いがある
デニムは羅針盤だ。ブランドはデニムで方向性を示唆できる一方、僕らはそれを基準に選べるから。デニムに惚れることは、ブランドの哲学に惚れることと同義。それゆえ僕らはいつも新たなデニム探しの航海に、胸を弾ませる。そうしたワクワクをもらえるブランドを、ここに集めた。
まずは今季より始動した新ブランド、ユアセルフは、“不自由な格好良さ”を掲げ、33インチと38インチの2サイズのデニムのみを展開。どのサイズをどう着るかは、あなた(yourself)次第というわけだ。
日本の物作りに敬意を表したブランド、キジは「生地」選びに注力。一年を通して快適に過ごせるよう、コットン×テンセルのさらりとした仕上がりはまさに新感覚。
最後はツキ、性別の区分をしないボトムスブランドだ。ヘヴィな14オンスのデニムをマリンパンツに仕立てた本作。女性にはちょうどいいかもしれない短丈もご覧のとおり楽しめる。
デニムがあるから僕たちは……
⑥小さな変化であってもたまらなく心を動かされる
共通点はその生地。あとはどうであってもデニムはデニム。遊心に溢れる楽しいヤツから、ギミックのさりげなさにセンスを感じるヤツまで、ディテールやデザインの多様性ものみ込む魅力がある。ここに挙げるのは、間違いなくディテールで惚れ込める3本だ。
まず1本目。注目は腰回り右側の、前後を入れ替えたようなデザイン。フロントにバックヨークやポケット跡をあしらいヒップ側のデザインを採用する、独特なクレージーパターンだ。「よく見れば」というところに男心をくすぐられる。
次いで、シルエットを調整できるファスナーを背面に、それぞれ2本ずつ付けた手法が独創的なリメイクブランドの1本。フロントはいたってノーマルだが、後ろ姿が個性的で楽しい。
ラストは腰元に配置された左右2本のインプリーツが特徴的。’40年代のイギリス軍のオフィサーパンツが元ネタになっているという。楽しみ方は三者三様、個性を見せるのか隠すのか。はきたくて、ウズウズしてこない?
デニムがあるから僕たちは……
⑦はかないデニムも好きなんだ
着込むほどに味が出る。インディゴ染めの綾織り生地の魅力は、アウターとなっても低下することはない。むしろデザインの幅広さから、楽しめるチャネルが増えることを喜びたい。
左は、パリのモードを牽引するジャパンブランド、ファセッタズムより。肩位置がドロップしたワイドシルエットのGジャン。ヨークから袖にかけて入る起毛したリブが、唯一無二の存在感。
右では、英国の正統派ブランド、マッキントッシュのステンカラーコートが、あのゴム引きではなく、日本製の生デニムに生地替え。一昨年から始まる取り組みで、なかでも評価の高い逸品。育てる楽しみもある。
デニムがあるから僕たちは……
⑧理屈や規律に縛られずいつだって自由でいられる
デニムをはきこなすルールが知りたい? そんなものはない(はずだ)。カラー、シルエット、レングス、裾の処理……。
長い歴史のなかで、どんなムーブメントのなかでも姿形を自在に変えながら、常に真ん中に鎮座してきた。それは、自由な存在であることの証し。反体制の看板を背負った時代もある一方、最近ではデニムの制服を採用する工房・企業などもあると聞く。
いよいよジャンルレス、ボーダレスの様相。だからこそ、そのはきこなし方に理屈や規律はない。
例えば、デニム・オン・デニムだって、上はブラックで下はブルーの一見チグハグな組み合わせも、自由に楽しめばいい。なんていいながら……オーバーサイズトップスにタイトボトムスでバランスを取ってみたり、上下のフェイド感を揃えてみるなど、細かな微調整があるっていうのはここだけの話。
まあ、結局のところ、こだわるも自由。縛られたくないからこそ、僕らはこれからもデニムをはきたくなるのかもね。
川田有二=写真 菊池陽之介=スタイリング 勝間亮平(masculin)=ヘアメイク 髙村将司=文