次の週末スタイルが必ず輝く、大人の“スポカジ”ガイド Vol.1
2018.09.04
FASHION

ファッションジャーナリストに聞く、今“スポカジ”が注目される理由。

スポーツウェアがどんどんお洒落になってきている。今やハイファッションを提案するランウェイショーの現場でも、スポーツ系の素材やスタイルが欠かせなくなってきているのだ。

なぜ今、街でスポーツウェアを着る“スポカジ”が注目されているのだろうか? ファッションジャーナリストの増田海治郎さんにそのワケを訊いてみた。

ミラノのランウェイではスポーツの提案が花盛り

サッカーの元イングランド代表デイビッド・ベッカムは、パーカ×ショーツというスポーティな出で立ち。アクティブな週末カジュアルにもってこいのスタイルだ。©︎ FameFlynet UK/AFLO

——最近、スポーツウェアとカジュアルウェアの境目がなくなってきています。この流れはどこからきているのでしょうか?

増田海治郎(以下、増田) まず、アメリカのアスレジャーの流れがあると思います。ノームコアのムーブメントが一段落した3〜4年前、日本へも本格上陸したわけですが、ファッションとしては思ったより根付かなかった印象です。

男子は象徴的なスタイルがありそうでなかったし、女子は体の線が出るレギンスを街ではくのに抵抗を感じる人が多かったのかな。ギャル文化の元祖であるパラギャルのときは、みんな膝上丈のレギンスをはいてたのになぁ……(遠い目)。1991〜’92年頃ね。

——比較対象が昔すぎます(笑)。なぜアスレジャーは定着しなかったのでしょうか?

増田 単純にファッションとしてあまり魅力的じゃなかったからかな。オッサンが街でレギンスはいてモッコリしてたら嫌でしょ?(笑)。’80年代のようにアメリカの流行をそのまま真似する時代でもないし、今やスポーツやアウトドアを街着に取り入れるテクニックは日本人のほうが上手だしね。

あと、カジュアルとスポーツが接近しているもうひとつの理由として、高機能素材の進化と普及が挙げられます。昔は高機能素材って最低生産数が多くて、規模の大きいスポーツブランドやアウトドアブランドじゃないと使えなかった。

でも、最近はそのハードルが下がって、小規模のファッションブランドでも気軽に使えるようになってきている。ユニクロのヒートテックとエアリズムで、高機能素材の良さが一般層に浸透したのも大きいと思います。

『グレイテスト・ショーマン』で主演を務めたヒュー・ジャックマンはオール黒のスポカジスタイル。このままジムへ通えそう。©︎ Backgrid/AFLO

——最近はモード系のブランドがスポーツの要素を取り入れています。

増田 6月に開催された海外メンズコレクションでは、スポーツを主軸に据えるブランドが爆発的に増えていました。特にミラノはスポーツ一色! エルメネジルド ゼニアやニール・バレットなどが、どんどんスポーティにシフトしている。あと、イタリア勢では、最先端の機能を追求しているストーンアイランドの人気が再燃してますね。

——プラダが今秋冬のランウェイで、かつてのプラダスポーツを想起させるプラダ リネア・ロッサを提案しました。

増田 そう、オーシャンズ世代には涙モノのあの“赤いライン”が帰ってきました!’90 年代後半に登場したプラダスポーツは、モードとスポーツを融合させた先駆者です。

で、スポーツブランドとランウェイを結び付けたのは、’98年にプーマとのコラボレーションスニーカーを発表したジル・サンダー。それからヨウジさん(山本耀司)とアディダスとの協業ブランドであるのY-3などが出てきて、今日のスポーツとランウェイの蜜月につながるわけです。

往年のプラダスポーツを彷彿させる、今季のプラダ リネア・ロッサは、懐かしさとともに新しさも感じさせる絶妙なセンスに脱帽。Courtesy of PRADA

オッサンにも似合うけれど、痩せたほうが様になる!

——ルイ・ヴィトンのアーティスティック・ディレクターに就任したヴァージル・アブローも話題ですね。

増田 彼は現在のモード×ストリート×スポーツの流れを先導する、最重要人物です。この4〜5年、世界のストリートで最大派閥になっているラグジュアリー・ストリート(ラグスト)は、彼と彼のグループが作ったトレンド。スニーカーに再構築の概念を持ち込んだナイキラボの「ザ・テン」は、スニーカー史に残る偉業だと思います。

ラグストで全身を揃えるのはオーシャンズ世代には難しいけれど、いつものスタイルにスニーカーや小物を挿すだけで、グッと今っぽくなる。ヴァージルの愛弟子、ヘロン・プレストンもオススメ。NASAとのコラボで話題を集めています。宇宙をフィールドにしちゃうなんて、ある意味、究極のスポーツウェアかも?

NASAとのコラボレーションを発表したヘロン・プレストン。スポーツウェアの可能性は宇宙にまで及ぶ。

——ダッドスニーカーも大人には難しいですよね?

増田 だって自分たちがダッドだから(笑)。ミレニアルズがギャップ狙いでオッサンぽいスニーカーを履くから新鮮なわけで、ダッドがダッドを履いたらまんまになっちゃう。

だから、ハイブランドは上級者に任せておいて、スポーツブランドの厚底物やデザイナーとのコラボモデルが初心者にはいいかと。今日のダッドブームの元祖的存在のアディダス バイ ラフ・シモンズの「オズウィーゴ」とか、ホカ オネオネのトレイルランニングシューズとかですね。

ミレニアル世代のファッションモデル、ベラ・ハディッド。ボディラインを強調した本場のアスレジャースタイルだ。©︎ Splash/AFLO

——そのほかにオーシャンズ世代が取り入れやすいスタイルやアイテムはありますか?

増田 ’80〜’90年代に着ていたアイテムに再チャレンジするのが、とっつきやすいと思います。例えば、RUN DMCらが着始めたトラックスーツ、渋カジの初期に流行したNBA、MLB、NFLなどのアメリカのプロスポーツ物。

今秋冬では、ミラノのマルセロ・ブロンは、MLBとNBAとコラボしたパーカやジャージーを発売するし、あのグッチもMLBとコラボしてます。ヤンキースのワッペンを張り付けたスーツは、ギャップがあって最高に魅力的! あとは、こちらも懐かしいラガーシャツとオールドテニス。こうした“懐かしモノ”は古着もいいけれど、注意すべきは現代のアイテムに合わせること。全身古着だとイタいオッサンになっちゃうから。

スポーツウェアをファッションとして着用した先駆けであるRUN DMC。と同時にハイブランドのブートレグウェアも好んで着ていた。©︎ Shutterstock/AFLO

——ジャージー上下というのも、体育教師みたいでハードル高いです。

増田 確かに(笑)。なので、ジャージを上下で着るなら、テーラードスーツ感覚で着られるハイブランドのものがオススメかな。スポーツブランドのトラックジャケットやナイロン系のブルゾンは、トラッドやモードに1点挿すだけでヌケ感が出ます。最近のスポーツブランドは、デザインやシルエットが向上してるし、モードとの親和性も高い。

グッチとMLBのコラボは、スポーツ×ファッションの新たなアプローチとして話題に。胸にあしらわれたチームロゴが新鮮だ。

——そもそもなんですが、中年体型のオッサンがスポーツウェアを着てもいいんですか?

増田 大丈夫です。ウエスト90cmの自分も着てますし、トラックパンツはウエストがゴムで楽チン(笑)。自分はトラックジャケットをコートのインナーに取り入れたり、スーツにスニーカーを合わせたり、トラックパンツをトラウザーの代わりにはいたりすることが多いかな。

でも、贅肉がないほうが様になるのは間違いない。身体に投資するのは世界的な傾向で、ミラノやパリでも街を走る人が目に見えて増えてきているし、ランウェイを“見る側”もデブが減っている。流行に乗り遅れているのをヒシヒシと感じております。

——なるほど。次回の対談までに頑張って痩せてください(笑)。

増田 頑張りまっする!

 

ますだかいじろう●ファッションジャーナリスト。1972年生まれ。メンズ誌を中心に健筆を振るう。初の著書『渋カジが、わたしを作った。』が好評発売中。モードからアメカジ、スポーツまで、幅広いジャンルをカバーする。

 

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