デザインや素材の妙、はたまたブランド力で。袖を通した途端に湧き上がる特別な高揚感がある。それがモードの魔法。Tシャツの上にさらりと羽織るだけで、いつもの休日とはひと味違うプレミアムな一日の始まりだ。
HERMÈS
エルメス
しっとりと柔らかい極上のラムスキンを贅沢に。きわめて薄く鞣されたそれは、レザーであることを忘れるほどに軽量だ。そして、しなやかなライニングによって完結する着心地は、体感的な気持ち良さを超え、心をも満たしてくれる。レザーの賢人の手にかかれば、着慣れたベーシックなカーディガンさえも、スペシャルな日常着へと生まれ変わるのだ。
DIOR HOMME
ディオール オム
クリエイティブ ディレクター、クリス・ヴァン・アッシュが奏でるパンクマインドを秘めたコレクションは、若かりし頃の奔放な自分を呼び覚まさせる。スムースタッチのカットソーボディ、そのラグランスリーブに沿って光るのは、シームではなくメタルステープルの装飾。ランウェイでも象徴的だったディテールが、我々の中に眠るヤンチャ心を刺激する。
SAINT LAURENT
サンローラン
青春時代に親しみ、今でもバーシティジャケット、いや“スタジャン”に目がないOC世代は多い。サンローランのそれは、古着やオーセンティックなものとは違い、らしさ溢れるカラーリングと洗練されたフィッティングで野暮ったさなど微塵も感じさせない。しかも薄手のコットンウール製で裏地を排しているため、春でも心置きなく着られる。そりゃ手が伸びるってもんだ。
VALENTINO
ヴァレンティノ
“Gジャンといえば”のトラッカータイプ。しかし、右腰にはスタッズで飾られたポケットを加え、前立てには別のデニム地のセルビッジ部分を縫い付けるなど、リメイク風のカスタムが。完成された名デザインをリスペクトしつつ、それだけでは退屈だと言わんばかりに新たな造形を構築する。人々を惹きつけてやまないモードの力、ここにあり。
BOTTEGA VENETA
ボッテガ・ヴェネタ
こちらのステンカラーコートは、滑らかなシルクを鹿の子状に織り上げた豊かな表情と羽衣のような軽い着心地が持ち味。そして、爽やかな春風に揺れて際立つ、美しいシルエットと柔らかいドレープが何げない休日をエレガントに彩る。アルチザンによるクラフトマンシップを重んじるブランドらしい、丁寧な仕事の結晶だ。
LOEWE
ロエベ
裾回りと袖口にあしらわれた大胆なゴールドの箔プリントが、まず目に飛び込んでくる。いたってシンプルなハイゲージニットのカーディガンをアバンギャルドに変革させたそのクリエーションに、まず感服。そんな痛快なルックスに加え、最上級のヴァージンウールを編み立てたドライな肌触りも爽快そのもの。才色兼備とはまさにこうした一枚を指す。
FENDI
フェンディ
定番やトレンド、汎用性は確かに大事。だけど、それだけってのも正直つまらない。この春夏、「太陽と楽しさ」をテーマに遊び心たっぷりのコレクションを繰り広げるメゾンの逸品では、ロンドンを拠点とする気鋭のアーティスト、ジョン・ブースのグラフィックをフィーチャー。シルクのボディを豊潤な色彩で包んだリバーシブルアウターが、ファッションの醍醐味を再認識されてくれる。守りに入ったお洒落なんて、まだまだゴメンだから。
清水健吾=写真 菊池陽之介=スタイリング Taro Yoshida=ヘアメイク いくら直幸=文