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2017.08.31

かぞく

すこぶる快適! 「趣味」と「心地良さ」が一体となった家の理想形とは?

趣味も高じれば3度のメシより好きになる。そして、やがては快適な生活に必要不可欠な存在へ。だから心地良く暮らすためのヒントを得たければ趣味人の家を参考にするといい。
楽しさを追求したがゆえに得た個性は家屋のデザインとして還元され、「ないものは作ってしまえ」という姿勢が家を進化させ続ける。ご紹介する3家族は、趣味という世界が快適を後押しした理想のケースだ。
 

Case 1:「ないものは創る」。趣味のいい趣味好き夫妻のDIY生活


「ないものは創る」というスタイルは一台のテーブルから始まった。家の外へ飛び出し、ガーデンキッチンやガレージも増築。そして、いっそうハマっているのが家庭菜園である。食べたい野菜まで自作する彼らの“美味しい”暮らしをのぞいてみよう。

なんでも自作。それが家に愛着を持てる最大の要因

檀 拓磨さんと千早さんの家にはカーテンがない。窓から見える八ヶ岳連峰の大パノラマが、まるで絵画のように部屋の中を彩っているからだ。そして、家の外には4つの調理コーナーや家庭菜園、収納小屋が続く。どれも温もりのある木造でどこか統一感が感じられる。それもそのはず。敷地内にあるほぼすべての建造物は、檀さんが自作したものだからだ。

裏山のトレイルにマウンテンバイクなどで入っていくアプローチ階段や通路、収納小屋、グリルスペースに焚き火台、そして薪窯。10年前にアウトドアの魅力を体験できる施設として「CLUB3719」をオープンして以来、徐々に自作モノが増えていった。最新作は、アメリカのバークレーで見かけ実践している菜園用のコンテナボックス。ここで、自分たちやゲストたちが食べる野菜やハーブ類を育てている。
そんな拓磨さんのDIY活動の原点は、1台のダイニングテーブルにある。新築祝いで知人からもらったダイニング用の照明器具の全長が長く、それに見合うダイニングテーブルが見つからなかったため自ら作った。そのテーブルは11年経った今でも現役で活躍している。場所に合うものを探す労力を考えれば作ったほうが早く、自分の世界観も表現しやすい。その感覚は当時に芽生え、今も変わらないとか。
夫妻の間では当初、キッチンへのこだわりはあまりなかったという。しかし、拓磨さんが料理に凝りだしてからは一変。外に自作の調理コーナーが増えた。そして、今後また家を作るなら、キッチンを軸にしたスタジオのようにしたいという願望もある。拓磨さんのDIY魂はとどまるところを知らない。
檀 拓磨さん(47歳)、千早さん。拓磨さんは、世界5カ国でチャンピオンに輝いたことのあるマウンテンバイクのライダー。結婚を機に信州へ移住し、アウトドア体験施設「CLUB3719」を開設、主催する。後ろにあるのは家庭菜園。米国・バークレーに住む友人が実践していた手法を参考に自ら自作。
庭にある独立したシャワールームも自作。屋根にかけた半透明の波板は一部を開けられるように工夫した。そのため、緑や空を眺めながらシャワーを浴びられる。
 

Case 2:インドアもアウトドアも楽しむ、多趣味な家族のスマートな住まい!

小川 泰さん(36歳)、未季さん。泰さんは歯科クリニックを近所に開業。妻の未季さんはフォトグラファーとして出版社に勤めている。
趣味が増えれば当然荷物も増える。混沌となりがちな住空間の悩みをプロの知見により解決したのが小川さん夫妻のお住まいだ。数多の本や登山グッズが見事に収納され、モダンなインテリアとともに絶妙な調和が図られている。

高低差や色使いの妙で多彩な趣味を緩くつなぐ

趣味が違えば使う道具や世界観まで異なる。そして気づけば住空間はカオス状態に、というのが一般的である。登山、読書、クルマと、多趣味な小川さん夫妻もまた、一歩間違えれば世の道理に倣いそうなもの。しかし、その影はまったくと言っていいほど見られず、一体感のある快適空間が築かれている。そのきっかけは、同年代の建築家との出会いだった。
特徴的なのは空間と空間を共存させたアイデア。テイストの異なる各部屋をスキップフロアで区分けしつつ、暗につながりをもたせた。リビングは洗練されたデザイン家具が置かれ、上階の書斎の湾曲する壁を本棚として活用。双方の雰囲気は異なるが、書棚の一部を解放し、高い天井高のリビングにある吹き抜けへとつなげている。

幅広のガレージには2台のクルマが並ぶ。うち1台のユーノスロードスターは、泰さんが耐久レースで走らせるクルマだ。20年選手だがまだまだ現役。そのワケも、どうやら広々としたこのガレージで気兼ねなくメンテナンスが行えることにありそうだ。
車のメンテナンス以外にも、ここには山登りアイテムを壁面に収納し、逆の壁にはボルダリングのホールドを設置している。やんちゃさが増してきた長男も興味を示し、今では2段目まで足をかけられるようになった。趣味を理解した同世代の建築家との出会いが、心地いい「多趣味な家」を生み出したのだ。
キッチンの上は夫婦の書斎スペース。カーブを描いた壁面の棚には本がぎっしりと並ぶ。網のかかった窓のような部分はリビングの吹き抜けに面して開いている。中央のデスクは未季さんが長く愛用するヴィンテージ品。
ガレージの片方の壁面はクライミンググッズの収納スペースに。ザックやシュラフ、アイゼン、クライミングシューズなどをオープンラックに置いたり吊るしたりしている。
 

Case 3:ガレージハウスとタイニーハウス。趣味を充実させる2拠点!?生活


大きなガレージハウスには、多くの趣味を想起させるアイテムがズラリ。と思えば、自作の“移動式住空間”ごと遊びのフィールドへ赴くことも。我流で生み出したすこぶる享楽的な2拠点生活。その暮らしとは?

家ごと移動できれば、趣味を存分に満喫できる!

田園風景の中を走り抜ける1台の車に、誰もが驚きの表情を浮かべながら振り向いていく。それもそのはず。家がクルマに引かれ目の前を通り過ぎていくのだから。移動していく高さ3.8m、幅2.5m、奥行き6mの小さな家は、車台の上に小屋を作って据えた佐久間さんの“タイニーハウス”。地元、新潟・南魚沼にある工務店との共同開発により完成させたものだ。車輪が付いているため、好きな時に好きな場所への移動が可能だ。

エアストリームのようなトレーラーハウスは日本でも人気だが、佐久間さんは“住める”空間を作りたかったと、和と洋のタイニーハウスを作った。建材にこだわり使用しているのは天然の無垢材。和風モデルには畳を敷き、自宅の和室が移動しているような質を求めた。
その“小さな”家も、普段はガレージハウスのある広大な敷地内に停められている。
幅15m、奥行き10mもあるガレージハウスの中を覗くと、スノーボードをはじめとるする多彩な趣味の道具が整然と並べられ、来客をもてなせるリビングもある。2階へ目を移せば、板を貼ったキャットウォークに子供用テントが張られ、さながら秘密基地のようだ。


聞けば、歩いていける湖でのカヌーやSUP、イワナやヤマメが釣れる渓流でのフライフィッシング、そしてスノーボードと、山はフルシーズン楽しめるという。その言葉からも、タイニーハウスが1年を通して活躍していることが分かる。ガレージハウスとタイニーハウスによる異色の2拠点生活は、山という自然のリズムに寄り添う暮らしを楽しむ上で格好のツールとなっていた。
佐久間 洋さん(45歳)、あゆみさん、健さん。洋さんはプロスノーボーダーとして活躍後、新潟・湯沢の地で夏はキャンプフィールドを運営し、冬はバックカントリーのガイドを行っている。父の健さんは、隣地にアトリエを構え、絵を描きながら週末を中心に過ごす。
ガレージハウスの1階には大人数のゲストでも窮屈しないリビングルームがある。夏は窓とつながるデッキを駆けるそよ風が心地いい。一方、寒さの厳しい冬に向け断熱をしっかり施し、薪ストーブを導入している。
永禮 賢=写真


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