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2020.09.14

“走ることの楽しさ” を最優先する「アバルト 595」を識者6人が徹底解説

アバルト 595は、いわゆるホットハッチと呼ばれる車種だ。刺激的な走りが特徴だが、コンパクトサイズということもあって決して扱いづらいものではなく、むしろ気持ち良さがウリ。
大人4人が乗れるし、荷室容量(185L)が許容できれば、これほど楽しい車はほかにはないのだ。
ABARTH 595 アバルト 595
全長3660×全幅1625×全高1505mm 300万円〜。
ABARTH 595 アバルト 595
アバルトはもともと、主にフィアット車をベースにチューンした競技車両の開発やパーツ販売をしていた会社で、今ではイタリアを代表するブランドに。昔から得意としてきた「走ることの楽しさ」を最優先する造りは、今や“エンスー”だけでなく、多くの人に受け入れられていることを右肩上がりの販売実績が証明している。

この車、大まじめに遊んでます

日本におけるアバルトブランドの販売台数は、フィアット傘下においての展開開始から10年余、ほぼ伸びっぱなしなわけですが、その当初から看板を支えてきたのがフィアット500をベースとしたアバルト500系、現在のアバルト 595となります。
さらに特徴的な数字を挙げると、販売におけるMTモデルの比率は約5割。つまり道端のアバルト 595の2台に1台は、わざわざクラッチとシフトレバーを操作して走っているわけです。そんな車はほかにマツダ ロードスターやホンダ S660くらいではないでしょうか。つまり非常に趣味性が高い銘柄のひとつとして受け入れられていることになります。
確かにMTを駆使して走るアバルト 595はめっちゃ楽しい。街でも山道でもサイズとパワーを思い切り活かして自由自在に立ち回れる、この小兵ぶりが好き者心をくすぐります。そう、最近のスポーツカーは車線に収めるだけでも大変なくらい肥大化してしまいました。それらに比べるとこの車は素っ裸で素振りしているような開放感や爽快感が味わえるんですね。
可愛い見た目にガチの中身。この、大まじめに遊んでる感じがアバルト 595のキモではないかと思います。そして、その辺の洒落のさじ加減や味の利かせ方、イタリア人はうまくやるんですよ。街中でいい感じのアバルト乗りのおじさんをちょいちょい見かけますが、選ばれる理由はわかるような気がします。
自動車ライター
渡辺敏史
出版社で自動車/バイク雑誌の編集に携わったあと、独立。自動車誌での執筆量が非常に多いジャーナリストのひとり。車の評価基準は、市井の人の暮らしにとって、いいものかどうか。
 

イタリア人の良さが濃縮された車

20代の頃、1カ月だけのつもりでフィレンツェに行ったのですが、居心地が良すぎて結局3年いました(笑)。イタリアの何がそんなに気に入ったかといえば、やっぱり「人」なんですよね。今の東京人からは消えてしまったイタリア人の人懐っこさというか優しさみたいなものに、とことんやられてしまったんです。
以前アバルト 500に乗っていましたが、アバルト 595を見て思うのは「イタリア人のいいところが濃縮されてる車だな」ということです。彼らは、内面的には実は根暗だったりもするのですが、表面上はとても明るいというかサービス精神が旺盛で、そして伝統を重んじる。だから、アバルト 595の先祖にあたる昔のフィアット 500も、今なおすごく大事にされてますよね。
アバルト 595は、往年のフィアット 500から続く伝統を十二分に重んじながら新しいモノを上手に融合させている。でも過剰に新しくさせることはなく、現代的な制御は必要最小限に抑えている。だから、運転していて楽しいんです。
そういった意味で、もしもアバルト 595を料理に例えるとしたら「唐辛子を多めに利かせたアーリオ・オーリオ・ペペロンチーノ」。ニンニクとオイルのイタリア伝統のソースをベースに、ピリッと唐辛子でアクセントを加えたパスタ。これは日本人がざる蕎麦を愛する感覚に近いかも。だからきっと、日本人もアバルト 595に乗れば好きになると思います。
ラビータ オーナーシェフ
須田祐司
東京・四谷にあるイタリアンレストランのオーナーシェフ。「フィレンツェの裏通りにあるトラットリア」が店のコンセプト。アバルトを専門にチューンする会社に勤めていた経歴も持つ。
 



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