OCEANS

SHARE

2020.08.28

フィアットの初代「パンダ」の歴史。最小限のコストで生まれた最高の大衆車

「中古以上・旧車未満な車図鑑」とは……

vol.13:「パンダ」
フィアット、1980年〜2003年

フォルクスワーゲン「ゴルフ」やマセラティ「ギブリ」、「デロリアン」「エスプリ」…… と数々の名車をデザインした、イタリアの工業デザイン界の巨匠、ジョルジェット・ジウジアーロ。
なかでもフィアットの初代「パンダ」は彼の並外れた才能が発揮された名作のひとつであり、彼の最高傑作として挙げる人も多い。
初代パンダ
初期モデルのグリルはこのように縦スリットが入る。左右どちらに入るかは、搭載されたエンジンの種類によって変えられた。
何しろ、優れたデザインによって製造コストまで削減し、見事クライアントであるフィアットの期待に応えたのだから。
ルパン三世でお馴染みのフィアットの2代目「500(チンクエチェント)」は、イタリア人はもとより、世界中の人々の心を鷲掴みにした名車だった、しかしデビューは1957年。
戦後の復興に向かう人々の生活の足として20年も働き続け、ようやく1977年に引退。そのあとは「126」が引き継いだ。
1982年以降に追加されたモデルから徐々にフロントグリルが変更された「パンダ」。写真のように5本スリットが斜めに入るタイプになっていく。またボディ下部を覆っていた樹脂コーティングもサイドのラインだけになった。
しかし暮らしが着実に豊かになっていった1970年代において、「500」同様の空冷2気筒エンジンをリアに搭載して後輪を駆動させ、しかも全長わずか3m程度と小ぶりなサイズの「126」では、人々の生活の足には物足りなかったようで、販売台数は思うように伸びなかった。
では、これからの時代のベーシックカーはどうあるべきなのか? そんなコンセプト作りの段階から、フィアットはジウジアーロに協力を依頼したのである。その回答が、初代「パンダ」だった。


2/2

次の記事を読み込んでいます。