フィアット、フォード、ベンツ。スタイル重視派には輸入車キャンパーを
軽キャンピングカーしかり、日本製のキャンピングカーはサイズもそれほど大きくないので、日本の道での取り回しに優れている。
一方でトラックやワンボックスベースなので「もっと自分好みのスタイルや見た目のキャンピングカーがあれば……」という声があるのも事実。
そこで注目したいのが輸入車をベースにしたキャンピングカーだ。

例えばフィアットの小型商用車「デュカト」は、バンからトラックまでボディタイプが豊富に用意されていて、しかもキャンピングカーなどへの架装を前提として頭だけ(前席とエンジン部)だけを販売し、シャーシからビルダーが製造することもできるようにしている。
一方、本場であるアメリカのキャンピングカーも根強い人気だ。アメリカのキャンピングカーはクラスA(バスに近い形状のボディを架装)、クラスB(バンの室内を架装)、クラスC(キャブ付きキャンピングカーの荷台を架装)に分類される。
ヨーロッパ、アメリカともにキャンピングカーで長期の旅を楽しむ文化が根付いているので、装備類も豪華。優雅な旅を楽しみたい人にも打ってつけなのだ。
では、以下でこれら輸入キャンピングカーの具体例を見てみよう。
■グローブバスGT(フィアット「デュカト」ベース)

デスレフ(Dethleffs)はドイツの老舗キャンピングカーメーカー。その歴史は1931年まで遡る。最初はキャンピングトレーラーの製造からスタートし、1980年代にキャンピングカー市場に参入した。現在は「デュカト」をベースにさまざまなキャンピングカーを製造している。
「グローブバスGT」はコンパクトサイズのフルコンバージョンで、全長5.99mの「I1」(写真上)と、全長6.95mの「I6」が日本仕様として輸入されている。
全幅は2.2m、全高は2.81mと日本のキャブコンやバンコンと比べるとかなり大柄だが、車両を俯瞰から見下ろしているような映像を映し出すトップビューカメラが標準装備になっているので、駐車場などでも実は扱いやすい。
車体後方に常設されるベッドは「I1」がダブル、「I6」がツインとなる。シートレイアウトを変更してベッドにするタイプと異なり、厚いベッドマットが使われているので、寝心地は抜群。
ベッド下には自転車も収納可能な大型のラゲッジスペースが備わっている。また、運転席上にはプルダウン式のダブルベッドも用意されている。
フロントウィンドウ、サイドウィンドウが大きいので採光も良い。フロントシートを回転させると4人で語らえる広々としたリビングスペースになる。
■V670(フィアット「デュカト」ベース)

フィアットの「デュカト」をベースにした日本製キャンピングカーもある。埼玉に本拠を構えるバンテックが製造した「V670」は、大柄なボディと豪華な装備をしっかり受け止められるよう、タイヤやサスペンションにこだわった本格的なキャブコンタイプのキャンピングカーだ。
デザイン性の高さはもちろん、日本でのキャンピングカーの使われ方を熟知したビルダーならではのアイデアがふんだんに盛り込まれている。例えばリアのラゲッジ扉は駐車場など狭い場所でも荷物の出し入れがしやすいスイングアップ式を採用。
ラゲッジには左右両方からアクセスも可能だ。車内にアクセスするステップには、暗い場所でも踏み外さないよう、間接照明が備わる。
ベッドは90年以上の歴史がある老舗ベッドメーカーである日本ベッドのマットを採用。ベッドルームにはサンルーフがあり、横になりながら星空を楽しむこともできる。サイズは6.7×2.25×2.75m。乗車定員は6人。もちろんリビングも最大6名で寛げる設計だ。
■フューズ 23F(フォード「トランジット」ベース)

欧州フォードが販売しているフルサイズバンの「トランジット」をベースにしたキャンピングカーも人気だ。先のキャンピングカーの分類でいえばクラスCとなる。ちなみに「デュカト」がFF車なのに対し、「トランジット」はFRだ。
アメリカのモーターホーム(キャンピングカーのアメリカでの呼び名)ビルダーであるウィネベーゴが手掛けた「フューズ 23F」の特徴は、スライドアウト機構を備えていることだ。
目的地に着いたら、電動操作でリビング部をソファやテーブルごと50cm外側に拡張することで、居住スペースを広げられる。もちろんこのソファはベッドにもなる。
リビング部の室内高は2.02mあるので大人が立っても圧迫感がない。キッチンには3バーナーのガスレンジが備わっており、旅先で仲間とたくさんの料理を囲みながらパーティーをすることだって可能。
車両後部には127cm×184cmの大きなダブルベッドが備わる。ベッドにはクッションがついたヘッドボードもついているので、寝る前にリラックスしながら読書を楽しみたいときにも便利。
広大なアメリカ大陸を快適に旅するための知恵が詰まったモーターホームだ。
■マルコポーロ ホライズン(メルセデス・ベンツ「Vクラス」ベース)

輸入モーターホームは魅力的だが、どれも全長が6mを超え、全幅も2mを軽く超えるサイズなので、普段使いをするのには向いていない。保管場所にも困ることから、もっと気軽に使えるものが欲しいという人も多いだろう。車中泊仕様のこんな輸入車はどうだろうか。
メルセデス・ベンツ Vクラスに用意された「マルコポーロ ホライズン」は、2名まで寝ることができるポップアップルーフが備わり、室内はフルフラットにできるベンチシートと回転機能付きのフロントシートでリビングを作ることができる。
運転席下にサブバッテリーが備わっているので、エンジンを切ったあともバッテリー上がりを気にせず電装品を使うことができる。
ボディサイズは他のVクラスとほぼ同じとなる全長5150mm×全幅1930mm×全高1960mm。これなら街中での普段使いも困らないはずだ。
高橋 満=文