乗りたかったのは、キブンが乗るクルマ Vol.4
2018.06.21
CAR

カーライフに大きな影響を与える、クルマのエネルギー問題

Quality 0f CAR LIFE向上委員会
何人乗りか、積載量はどれだけか。「乗る」 量はクルマのひとつの価値ではあるけど、何よりもまず、 乗らなきゃいけないのはキブンじゃないのか? キブンが乗るクルマはいいクルマ。そんなクルマ選びを、 モータージャーナリストの島下泰久さんと突き詰める。高めよ! Quality of CAR LIFE

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今やハイブリッドカーは当たり前だし、電気自動車も頻繁に見かける。燃料電池自動車だって耳にするようになって何年経っただろう。かといって、ガソリンやディーゼルで動くクルマが廃れたかといえば、そうでもない。

そう、今はクルマの“次世代動力源”のまさに黎明期。我々は何を基準に、どう選べばいいのか? 電気・ハイブリッド・燃料電池・ガソリン&ディーゼルという主に4つの選択肢との向き合い方を、島下さんに教えてもらおう。

 

弱点を克服した「電気自動車」はこれからのニュースタンダードか!?

すでにフランスやイギリス、中国も国として電気自動車を推進していくことを発表。2017年には日産が満充電すればカタログ値で400km走るというリーフを発売した。やっぱり今後の主役は電気自動車か?

「電気自動車は航続距離が短いというイメージがあるかもしれませんが、リーフは実走行でも250〜300km走りますから、もうフツーに使えるレベルです。例えば、約300kmの東京〜名古屋間も途中1回の充電でOK。そもそも300kmの距離を走るなら1回は休憩しますから、そのときにトイレに行ってコーヒーでも飲んで、軽くストレッチ……なんて30分も経てば充電完了です。街乗りにはまったく問題ない航続距離ですし、電気自動車の大きな課題だった“1充電あたりの走行距離が短い”というデメリットは克服されたと言っていんではないでしょうか」。

日産自動車の「リーフ」
日産自動車の「リーフ」。1回フル充電すれば400km(JC08モード)の走行が可能。また高速道路で加減速やハンドル操作をアシストしてくれる「プロパイロット」も装備。291万7000円〜

「いつかは」ではなく「次は」電気自動車という人も増えてきたと島下さん。今後も進化した電気自動車がどんどん出てくるだろうし、これからの主役が電気自動車になってもおかしくはないのだ。

 

プラグインタイプの登場で「キング・オブ・高燃費」になったハイブリットカー

エンジンと電気モーターの両方を使うハイブリッドカーは、トヨタのプリウスなら1回給油すれば1000km程度走る。選べるボディタイプも軽自動車からコンパクトカー、ミニバン、セダン、SUVなど増えており、多くの輸入車でもハイブリッドモデルを用意している。

「ライフスタイルやクルマの好みに合わせて選びやすい選択肢」だと島下さん。

「さらに、普段は電気自動車として、電池が切れたらガソリン車として走行できるプラグインハイブリッドのプリウスPHVなら、普通のハイブリッド以上にガソリン消費量が少なくなります。もう前に給油したのがいつだったか忘れてしまいそうですよ。ガソリンスタンドに行く手間すら省けるのがありがたいです」。

トヨタの「プリウスPHV」
トヨタの「プリウスPHV」。電気自動車モードで68.2km走行可能。充電は家庭用コンセントからもできるほか、駐車中に太陽光から充電するソーラーパネルも用意されている。302万円〜

プリウスPHVなら普段の街乗りは電気自動車として乗れて、週末に遠出したいときには燃料のことを気にせずどこまでも行けてしまう。ボディタイプの選択肢が多いことも含めて、平日は買い物や子供の送り迎え、休日は海へ山へとアクティブに過ごしたいというファミリーユースに最適な選択といえるかもしれない。

 

「燃料電池自動車」は正真正銘ミライのクルマ。乗る楽しみも格別だ

電気自動車とともに次世代のクルマとして注目されているのが燃料電池自動車。水素と空気を使って電気をつくり、それでモーターを回すという、いわば「発電機を背負った電気自動車」だ。

2014年にトヨタがMIRAIを発表し、ホンダやGM、メルセデスベンツも販売を計画している。実は島下さん、MIRAIに乗っているという。

トヨタの「MIRAI」
トヨタの「MIRAI」。1回の水素充填で650km(トヨタ測定値)走行。水素ステーションは原稿執筆時点で日本全国に101カ所ある。充填時間は1回3分程度とガソリン車なみだ。670万円〜

「実はトラックなど重たいクルマほど燃料電池車が向いているんです。重たいクルマを動かすには低速からトルクのあるモーターのほうが適しているのですが、電気自動車ではクルマが重くなるほど、バッテリーもたくさん積まないといけなくなります。そうなると余計に車重がどんどん増えてしまいますし、なにより充電に途方もないほどの時間がかかってしまいます。でも燃料電池自動車であれば、水素の充填に必要な時間はエンジン車と変わりません。商用車ほど、時間を無駄にはできないものですから、これはとても大事なポイントなんです」。

重たいクルマが得意なら、トラックだけでなく、トヨタのタンドラやフォードF-150といったフルサイズのピックアップトラックや、キャデラック・エスカレードなど大きなSUV、キャンピングカーなどでの活躍も期待できる。

「電気自動車は100年前からあったけれど(フォードがT型フォードを発売するまでクルマの動力源は蒸気・電気・ガソリンの三つ巴だった)、燃料電池自動車は“これから”の技術。既に水素を高密度にして貯める技術も登場していますから、水素タンクはますます小さくなっていくでしょう。そう考えると、まだまだ想像を超える進化を遂げてもおかしくないんです」。

 

“走ってる感”のある「ガソリン車」も、もちろん進化も遂げています

新しい動力のクルマがそれぞれの分野で進化を遂げているのはわかった。ではこれまでの主流だったガソリン車やディーゼル車は、もう古いのか?

「そんなことはありません。ガソリン車の熱効率(燃料を動力として変換する割合。数値が高いほど良い)は、これまで約30%でした。しかし2016年、トヨタが不可能と言われていた40%を達成しました。これからさらに効率が上がっていく可能性は大いにあります」。

マツダ「CX-3」
マツダ「CX-3」。5月のマイナーチェンジで1.8Lの新クリーンディーゼルエンジンを搭載。従来の1.5Lより低燃費化を図り、アクセル操作に対するレスポンスを高めた。197万円〜

「ディーゼル車も、東京都の排ガス規制以来、国内ではしばらく普及していませんでしたが、技術の進化で排気ガスがきれいになりました。すると、ディーゼル車ならではの燃費の良さや、アクセルを深く踏み込まなくても力強く加速する走りの良さが注目を集め、人気は盛り返しています。初体験だと“新しい乗り物”と感じると言っても過言ではない乗り心地で、走る楽しみを与えてくれます」。

 

次のクルマは、「どの技術にワクワクするか? 」で選んでいい

そのうえで、今何を選ぶべきかと聞いたところ「どの技術にワクワクするか? で選んでみてはどうか」と島下さん。

「燃料電池車は産声をあげたばかりだし、電池が進化すれば電気自動車の航続距離はさらに延び、ガソリンやディーゼルエンジンの熱効率ももっと高くなるかもしれない。それぞれ得意な分野で進化していくでしょうし、どの分野でどんな技術革新が起こるかわからない。じゃあどうするかと言えば、僕なら“自分がワクワクする技術”を持ったクルマに乗ります」。

“大きな買い物だから、失敗したくない”という気持ちは誰もがある。自分の用途やライフスタイルに必要な条件を満たすことはもちろん大事だ。しかし、これから何が主流になり、何が廃れていくのかわからない今だからこそ、「乗っていてワクワクするクルマ」という判断が、後悔のない選択のために必要なのだ。

自動車が産まれて100年以上、その歴史の中でこれだけの動力源が“選べる”なんて初めてのこと。そんな瞬間に居合わせることができている我々は、素直にその幸運を楽しもうじゃないか。

■話を聞いた人
モータージャーナリスト 島下泰久さん
島下泰久さん●モータージャーナリスト。1972年神奈川県生まれのオーシャンズ世代。『間違いだらけのクルマ選び』の著者。性能、車種、最新技術からブランド論まで、クルマ周りのあらゆるジャンルをカバーする。歯に衣着せぬ物言いにも“定評”があるクルマのオーソリティ。

ぴえいる=取材・文

# エネルギー# カーライフ# クルマ# 動力源
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