「長く愛されるもの」を作り続けたい

いわたたかのり●1989年、名古屋市出身。2010年に三代目 J SOUL BROTHERSのメンバーとしてデビューし、パフォーマー、アーティスト、俳優として活躍。2014年に加入したEXILEを25年6月に卒業して話題に。俳優としては、16年の映画『植物図鑑 運命の恋、ひろいました』で初主演を果たし、数々の新人賞を受賞。その後もNHK朝の連続テレビ小説『虎に翼』をはじめ、多くの作品に出演。一方、ソロアーティストとしてアルバム「SPACE COWBOY」のリリースやライブなど、活動の幅は多岐にわたる。
ステージでのパフォーマンスや俳優として映画やドラマに出演する輝かしい姿が印象的な岩田さん。
一方で、自身がプロデュースを手掛けるユニセックスブランド「ゴッド オンリー ノウズ」や、クリエイティブディレクターを務めるシューズブランド「ナード マインド」を通じて、“もの作り”に携わる意欲的な姿勢も、特別賞の受賞に際しての大きなファクターとなっている。
自らの手でひとつのプロダクトを作り上げるということは、それだけ研究心や繊細なマインドを必要とする。そんな岩田さんの目には、今回身に着けた「1968 ダイバー」は、どのように映ったのだろうか。
「シンプルに、すごく格好いいですね! 撮影中も着用していて、気分がアガりました」。
真っ先に口をついたのは、その端正なビジュアルについてだ。
じっくりと手に取りながら、愛でるように発せられたその言葉からは、腕時計好きを自認する岩田さんにとっても、魅力を存分に感じたことが見て取れる。
「セイコー プロスペックス ダイバーズ 1968 ヘリテージ GMT」。1968年当時に世界最高水準のハイビートムーブメントを搭載した革新的なメカニカルダイバーズを現代的に再解釈。300mの空気潜水用防水や約72時間のロングパワーリザーブを備える。SSケース、ケースサイズ縦48.6×横42㎜、自動巻き。24万7500円/セイコー プロスペックス(セイコーウオッチ 0120-061-012)
「ブルーとホワイトのカラーリングが爽やか。差し色のレッドもいいですね。非常に洗練されたビジュアルなのですが、着用するとぐっと重厚感が漂います。さすが、伝統と格式のあるセイコーだなという感じですね」。
腕時計好きらしく、セイコーというブランドが持つ背景にも思いを致す。
「一般的に腕時計って高級品じゃないですか。僕は、宝物のように大事に扱ってしまうタイプなんですが、そんな僕でも、コーディネイトに合わせていろいろなシーンで着けてみたいと思わせてくれます。とにかく気分がアガる一本ですね」。
エレガンスとエモーションが同居する本作の魅力を体感した岩田さん。クリエイターとしての目線では、どのように感じたのだろうか。
「僕がクリエイティブで大事にしているのは、“長く愛されるもの”を作るという視点。自分の生活のなかで、“あったらいいな”を、自分のフィルターを通して生み出していく。デザイン性と実用性や機能性のバランスを取るのは、意外と難しいものなんです。
そのなかで、“ありそうでない”という絶妙なラインを探っていくことが、ディレクターとしての自分のやりがいにもつながっています」。
デニムの濃紺とブルーセラミックスのベゼルがナチュラルに共鳴。クラフトマンシップを感じるプロダクトという意味でも、両者は共通している。
岩田さんのクリエイティブに向き合う姿勢は、革新的な名作モデルを継承しながらも現代のニーズに即し、モダンにアップデートを遂げた「1968 ダイバー」に通じるところがある。
「僕らが若かった時代は、人気のスニーカーやアクセサリーを目指して行列に並んだり、抽選に挑んだり、と能動的に情報を追い求め、なんとか手に入れていましたよね。今は、世に溢れている数多の情報のなかから気になるものをチェックして、SNSなどでワンクリックすれば、購入するページにすぐ飛べる。とても便利になったと思います。
僕らのブランドを見つけて、選んでくれたお客さんに対して、当然ながら自分が納得できないものを提供するわけにはいきません。まずは自分の感覚で最高と思えるものをアウトプットして、それを気に入ってもらえたら嬉しいなと日々感じています」。
一方で、もの作りの難しさについても吐露してくれた。
「商品を作る立場になって初めて、ビジネスの視点が備わりました。芸能の世界もそうですが、好きなことだけをやって、ちゃんと需要もついてくるという関係が理想。でも、現実はなかなか思いどおりにはいきません。だから、好きなことにしっかり全振りできるように、我慢するところは我慢する。そんなビジネス的なバランスが少しは身についたかな(笑)」。
理想だけではない“もの作りの真髄”を知る岩田さんが認めるものというのは、相応な価値があるように感じられる。
3/4