連載「The BLUEKEEPERS Project」とは……大阪・関西万博2025に出展し、海洋保護の重要性を来場者の五感に訴えている「ブルーオーシャンドーム」。建物自体がゼロエミッションを体現し、展示物でも万人にマイクロプラスチック問題の緊急性を提示している。
今回は
前回に引き続き、OCEANS SDGsアドバイザーの井植美奈子さんが聞き手となり、同パビリオンを手掛けるNPO「ゼリ・ジャパン」理事長の更家悠介さんに建物と展示の魅力を伺った。
▶︎すべての写真を見る 話を聞いたのは……
[左]井植美奈子さん⚫︎ディビッド・ロックフェラーJr.が米国で設立した海洋環境保護NGO[Sailors for the Sea]のアフィリエイトとして独立した日本法人「一般社団法人セイラーズフォーザシー日本支局」を設立。京都大学博士(地球環境学)・東京大学大気海洋研究所 特任研究員。総合地球環境学研究所 特任准教授。OCEANS SDGsコンテンツアドバイザー。[右]更家悠介さん⚫︎1951年生まれ。’74年大阪大学工学部卒業。’75年カリフォルニア大学バークレー校修士課程修了後、翌年にサラヤ入社。工場長を経て98年代表取締役社長に就任。日本青年会議所会頭などを歴任。エコデザインネットワーク副理事長、ゼリ・ジャパン理事長などを務める。2010年藍綬褒賞、’14年渋沢栄一賞受賞
建物すべてリサイクルを前提に設計
井植 更家さんからブルーオーシャン・ドームの展示の背景に、「海洋の環境を守る仲間を増やしていきたい」という意思があると聞いて、とても納得しました。
今日もたくさんの方が来場していますが、一人ひとりが「海を大切にしないといけない」という意識を少しでも抱けば、少しずつ現実も動いていくと思います。万博という場は、まさにそうしたメッセージを力強く伝えるのに最適であり、そのために出展されたということがよくわかります。
更家 企業展示ですから、ふつうは「サラヤパビリオン」といった名称にしたほうが、わかりやすいのは確かです。それをあえてゼリ・ジャパンとして出展したのは、「海」という存在そのものが、企業活動やビジネスをはるかに超えて、人類はもちろん地球の全生命にとってかけがえのないものだから。
ゼリ・ジャパンというNPO組織の展示であることで、他国の公的な機関や、他の非営利組織も、関わりやすくなる。ブルーオーシャン・ドームの構造は3つのA、B、Cの各ドームに分かれていますが、ドームCでは、毎日入れ替わり立ち替わり、海洋や環境に関わる人たちのセミナーやパネルディスカッションを開催しています。
そこでぜひ、いろんな団体、人々に自分たちの取り組みを発表してほしいと願っています。
井植 このブルーオーシャン・ドームの建物自体が、環境への影響を考え抜いた素晴らしいコンセプトのもとで設計されていますね。
更家 設計をお願いしたのは、建築界のノーベル賞と言われるプリツカー賞の2014年度の受賞者で、環境との調和と持続可能性を考えた建築の第一人者でもある坂 茂さんです。
井植 坂さんは2000年のドイツ・ハノーバー万博における日本館の構造を、リサイクルできる紙製の丈夫な管で作ったことでも有名ですね。
更家 ブルーオーシャン・ドームも万博が終わったあと、すべてリサイクルができるように設計されています。3つのエリアがあり、「ドームA」は木よりも丈夫で強い竹を材料に、「ドームB」はカーボンファイバー、「ドームC」は紙管を使って構造を設計しています。従来の建物に比べて構造が非常に軽いので、埋立地の万博会場でも深い杭を打つ必要がありません。
万博の終了後には、ドームそのものがモルディブのリゾート地に移設されることが既に決まっています。
2/3