幼魚の格好いい生き様が表れる模様や色
では、具体的に幼魚の魅力とは何なのだろうか。その前にまず、幼魚と稚魚の違いを聞いてみた。
「実は、幼魚の定義は学術的にも曖昧なんです。正式には、卵から生まれてすぐの段階を『仔魚』、生殖能力を持つようになった魚を『成魚』と呼び、その間の長い期間は『稚魚』に分類されます。
でも、それだけでは説明が雑になるので、体が透明で、ただ水の中を漂う時期の魚を『稚魚』、自力で泳げるようになり、色や模様が出てくる段階の魚を『幼魚』と呼ぶのが僕の認識です」。
稚魚でも成魚でもなく、幼魚に魅了される理由がまさにここにあると話す香里武さん。
「幼魚たちの体にある模様や形には、すべてに意味があるんです。無意味なものがひとつもない。進化の過程で、どうやってこんな形になったのか、なんでこの色を選んだのか……。知れば知るほど、そこにはドラマがあります。
僕が幼魚に惚れているいちばんの理由はそれ。彼らの十種十色の生き様が格好いいからです」。
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