名店① 塩淡麗の最高傑作! 「麺道 千鶏」
最初にご紹介するのは「麺道 千鶏」。
同店の店主・大海氏は、信州が誇る鶏出汁淡麗ラーメンの実力店として、その名が必ず挙がる「麺道 麒麟児」の店主・星氏に師事。2021年9月28日、上田市において、晴れて独立オープンを果たした若手実力派職人だ。
この店では現在、レギュラーメニューとして、醤油ベースの「中華そば」と、塩ベースの「塩そば」を提供。
いずれも甲乙が付けがたい完成度を誇るが、特におすすめしたいのが「塩そば」だ。
「ただただ偉大」「信州ラーメンの金字塔」。塩そばを形容するに相応しいのは、そんな賞賛の言葉に尽きる。
先行して千鶏に足を運んだ複数のラーメンマニア仲間が、異口同音に塩そばを褒めたたえていたので、期待値を上げて実食に臨んだが、想像を軽々と凌駕した。
実感を虚飾なく表現すれば、食べている最中、思わず笑みが浮かんでしまうほど、そして、「美味い」という言葉でさえ軽々しく感じてしまうほどのスケール感を持ち合わせる。
では、この一杯の凄さを解説しよう。
まず、スープ(出汁)が異次元の出来映えだ。上田市が誇る高級地鶏「真田丸」のうま味とコクを明快に表現しながらも、味わいは、身体中の細胞に沁みわたるように穏やかで柔和だ。
3種類の塩をブレンドし、適量の羅臼昆布と貝の滋味を溶かし込んだ塩ダレが、「真田丸」の存在感を更に際立たせ引き立てる役割を全うする。舌上で刻々と移ろう繊細な旨味は、まるで日本の四季のよう。一度手を付けたら最後、レンゲを持つ手が止められない会心の出来映えだ。
麺もまた、スープに負けずとも劣らないクオリティを誇る。麺肌は、高品質なシルクのように滑らか。喉元へと抵抗なく吸い寄せられる軽やかなすすり心地も、食べ手に鮮烈な好印象を刻み込む。
信州はもちろん、現存する全国の塩ラーメンの中でも五指に入る「塩淡麗の最高傑作」だと断言できる。
知名度が上昇するにつれ、足を運ぶお客さんの数は増える一方。発券システム(受付時間から整理番号を配布)を導入するほどの人気ぶりを誇る同店だが、万難を排して足を運んでもらいたい。
理屈ではなく、身体が欲するこの一杯。一度は口にしておかなければ、人生における致命的な損失となるだろう。
3/5