OCEANS

SHARE

仕事の意味について議論をしているか



このように、同じ仕事でもワーカホリックになるのか、ワークエンゲージメントが実現できているのかで結果は大違いです。では、どうすればエンゲージメントは高まるのでしょうか。

リクルートマネジメントソリューションズの組織行動研究所の「ワーク・エンゲージメント」実態調査(2020)によると、エンゲージメントを高めるさまざまな因子があることがわかりました。

まずは「仕事に対する意味づけ」です。職場において、今の仕事の意味・意義に関する話や将来の見通しについての話、仕事の質を高めていくことについての議論などがあると、エンゲージメントを高める可能性があるようです。

同じ仕事でも、無意味に感じている人が多ければ「やってられない」となるのは当然でしょう。
 

本人の希望が配置に反映されているか

また、同調査によると「自己申告、社内公募など、本人の希望をできるだけ尊重される配置を実現する制度や仕組み」もエンゲージメントを高めるようです。

どんな仕事でも、「自分で選んだもの」と「相手から押し付けられたもの」ではやる気に違いが出るのは、これまた当然のことです。

エッセンシャルワークにおいては、「自分で選ぶ」とは言っても、選択肢には限界があるとは思います。しかし、たとえ選択肢が2つしかなかったとしても、できる限り「どちらをやりたいか」と希望を聞いて仕事をアサインすることで、厳しい環境に耐えられるかどうかの度合いは変わってくることでしょう。
 

組織の方向性を明らかにしているか

ほかにも、「経営の重要な情報の従業員への開示」をしているかどうかが、エンゲージメントの高低を分けているという結果も出ています。

日々バタバタと忙しいエッセンシャルワークにおいて、現場の従業員の方々に直接的には関係のない、また彼らがコントロールできるわけでもない組織全体の大きな方向性を、いちいち伝えても無駄と思うかもしれません。

しかし必要があるのかと思うかもしれないのですが、自分が最前線でやっている個々の仕事が、回り回って最終的にはどんな価値を社会に生み出しているのかがわかると、仕事の意味や誇りを感じやすくなるものです。

むしろ、現場で忙しくしている人だからこそより一層、大きな経営方針の説明に力を入れるべきかもしれません。

自粛中の私生活の充実も重要



最後に、仕事そのものではなく、仕事以外に打ち込めるものがあって私生活が充実していることも、エンゲージメントを高めることがわかっています。

懇親会や飲み会などは感染対策上無理かもしれないのですが、コロナ禍において全国的に自宅で楽しむための工夫や方法、商品・サービスがたくさんでてきました。

レストランに行けなければフード宅配、イベントに参加できなければテレビゲーム、ジムに行けなければ自宅トレーニングなどなど。

このような私生活のサポートをもし会社ができるなら、仕事では厳しい状況を強いられているエッセンシャルワーカーにとっては喜ばれるかもしれません。
 

本質的な解決策でなくとも、意味はある

さて、本稿で述べた対策は、すべてある意味非本質的で対症療法的にすぎないかもしれません。

ただ、冒頭で述べたように、たとえ厳しくともエッセンシャルワーカーの皆さんに頑張ってもらうためには、少なくともこのような側面だけでも支援すべきではないでしょうか。

もちろん本当は、エッセンシャルワーカーの皆さんの待遇改善や、それに伴う採用環境の改善によって、もっと人が集まる業界にするということが本質的・根本的解決策の本筋でしょう。業界の生産性などを考えると、国や自治体の公的な支援も必要だと思います。

新型コロナへの対応はしばらくかかるでしょうから、従業員のワークエンゲージメントを高める対処をしていくのが、せめてもの上司の役目ではないでしょうか。

グラフィックファシリテーター®やまざきゆにこ=イラスト・監修
曽和利光さんとリクルート時代の同期。組織のモヤモヤを描き続けて、ありたい未来を絵筆で支援した数は400超。www.graphic-facilitation.jp


曽和利光=文

SHARE

次の記事を読み込んでいます。