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2022.08.31

ライフ

Tシャツの寿命は洗い方で決まる! 洗濯王子が実践する「洗い方のコツ」を指南



夏コーデの基本となるTシャツ。

お気に入りの1枚とはなるべく長く付き合いたいが、登板回数が多いだけに“汚れ”や“劣化”はつきもの。

そんなTシャツの永遠の課題を解決する手立てはあるのか? “洗濯王子”の愛称で親しまれる、洗濯のプロ・中村祐一さんに聞いてみた。
教えてくれたのはこの人

中村祐一さん●1984年生まれ。創業から70年以上の歴史を持つ長野県伊那市のクリーニング会社「芳洗舎」の三代目。「洗濯から、セカイを変える」という信念のもと、2006年より自ら「洗濯アドバイス」という分野を切り開き、「洗濯王子」の愛称で、テレビ・雑誌など、さまざまなメディアにも出演している。

中村祐一さん●1984年生まれ。創業から70年以上の歴史を持つ長野県伊那市のクリーニング会社「芳洗舎」の三代目。「洗濯から、セカイを変える」という信念のもと、2006年より自ら「洗濯アドバイス」という分野を切り開き、「洗濯王子」の愛称で、テレビ・雑誌など、さまざまなメディアに出演している。

「洗濯さえしていれば汚れが落ちていると思いがちですが、それは間違い。普段の洗濯では十分に洗えていない可能性があります」。

中村さん曰く、洗濯のたびにしっかり汚れを落とせばTシャツの黄ばみも予防できるらしい。そこで今回は、自宅で簡単にできるTシャツの洗い方を教えていただいた。

まずはTシャツの“要素”をチェック!

色は黒、素材はコットン100%。大きめのプリントがポイントの1枚。

色は黒、素材はコットン100%。大きめのプリントがポイントの1枚。


実際に洗濯するのは、こちらのTシャツ。編集部員Yの私物だ。まだ数回しか着ていないので見た目は綺麗だが、できるだけ長く愛用したいと考えている。中村さんは、コレをどう洗うのだろうか?
 
「これはすべての衣類に言えることですが、洗濯をしたあと、また着ることが大前提にあります。そのため、汚れを落とすことよりも、その服を壊さないことを優先します。洗ったあと着られなくてもいいならどんな洗い方をしても良いですが、それでは洗濯をする意味がありません。

服を壊さず汚れを落とすために、洗濯前に最初に確認していただきたいのがタグです。ここで素材と洗濯表示をチェックしておきましょう」。

服には洗濯できる“許容範囲”があり、それを超えた強さで洗ってしまうと色落ちや生地の劣化が起こる。だからこそ、事前にどのくらいの強さで洗っても問題ないかを確認しておくことが重要だ。



必ず見ておくべきは、左端に記された桶のマーク。そこにバツがついていれば、そもそも「家庭での洗濯NG」。桶の下に何もない、あるいは1本線が入っているものは「洗濯機の標準コースで洗える」。2本線か手のイラストが入っているものは「デリケートに扱う必要がある」と覚えておこう。ちなみに、桶の中の数字は水温の上限値だ。
 
今回のTシャツでいうと、素材はコットン100%で、線なしの家庭洗濯表示(水温は50度)が記されている。中村さんによると、「洗濯機の標準コースで、50度の水温で洗っても問題ないTシャツ」ということがタグから読み取れるという。

色や素材、洗濯表示で洗い方をチョイス!

「洗濯表示と素材を加味して、このTシャツをどう洗うかを決めます。例えば汚れが目立つTシャツは、洗い時間やすすぎの時間を長く設定して洗濯で汚れをしっかり落としたい。ですが、その分生地は傷みやすくなります。

反対に生地を傷めたくないTシャツならば、繊維を保護するおしゃれ着用の洗剤を使い、時間も短くして優しく洗います。ただし、これだと洗浄力が落ちるので、汚れが残る可能性が高くなりますね」。
 
中村さんは「ハード」「ミディアム」「ソフト」という3段階の洗濯の強さを設けている。Tシャツの洗濯表示や素材、色、プリントなどの要素に、汚れ具合を加味して、3つの洗い方のうちその服にあった洗い方を選ぶのがおすすめだ。ハードに洗えば汚れが落ちるが生地が傷みやすく、ソフトなら汚れ落ちは鈍いが服へのダメージは少ない、というのが基本的な考え方だ。




黒いコットン地のTシャツなら、中間のミディアムで洗うのがいいという。理由はいくつかある。
 
「洗濯表示上は標準コースでガシガシ洗っても問題ないですが、黒(色物)でプリントがついている点を考慮して少し優しく洗います。多少汚れ落ちを犠牲にしても、黄ばみが目立ちません。



また、コットンのTシャツは洗濯によって毛羽立ちやすく、黒が色褪せたように見えてしまいます。コンディションを保つには、あまり強く洗わず、摩擦を避けた方がいいでしょう」。
 
また、状態良く着続けたい場合には、たとえTシャツであってもクリーニングに出すことをおすすめしているという。

あとは水温だ。洗濯表示には「50度」とあったが、温度が高いほど洗浄力も高いので色落ちしやすい。色を保ちたい場合は、常温で洗濯した方がいい。

洗濯で重要なのは“3つの量”とすすぎの回数



「洗濯の効果を最大限発揮させるためには、水の量、洗濯物の量、そして洗剤の量が大事。多すぎても少なすぎても良くありません」。
 
まずは水量。完全に洗濯物が浸るまで水を入れないと、汚れ落ちが悪くなるのはいうまでもない。そうなると、洗濯物の詰め過ぎも問題だ。洗濯機の中で衣類が十分に動かず、汚れを水に移すことができない。水と洗濯物の量にあった洗剤を入れよう。


 
また、洗濯機が縦型かドラム式かでも、対応が微妙に変わることを覚えておこう。
 
縦型の場合、衣量は7〜8割にとどめ、水量は自動設定だと足りない場合があるので1〜2段階、水位を上げた方がいい。


 
一方のドラム式はタタキ洗いで汚れを落とす仕組みなので、衣類が中で動かないと話にならない。洗濯物は洗濯機の半分くらいの量にした方が(多くても2/3まで)、中でしっかりタタキの効果が出る。水量は“高め”や“多め”に設定しよう。


 
「もうひとつ、すすぎの回数にも注意してください。しっかりすすぎを行わないと、汚れと洗剤が落ちきらず、臭い残りや黄ばみの原因になります。

『すすぎ1回でOK』と表示された洗剤も増えていますが、基本的にすすぎ1回では不十分。黒や色の濃いTシャツはあまり黄ばみを気にする必要がないので2回で問題ありませんが、白Tシャツなど、汚れやくすみが目立つものはすすぎ3回がマストです」。
 
ちなみに風呂の残り湯での洗濯はどうだろうか?
 
「水温が上がることは利点ですが、残り湯の汚れが服につくリスクを考慮し、洗剤の量を少し増やしたり、すすぎをさらに入念に行ったりする必要があります。残り湯を利用してもあまり節約効果は期待できないと思います」。
 

Tシャツの劣化を防ぐには、実は部屋干しが最適

Tシャツを乾かす際にも注意したいポイントがある。

「洗濯機での脱水のしすぎは禁物。しかも、コットン素材は繊維自体に折れやすい性質があるのでシワになりやすいんです。Tシャツなら、脱水は1〜3分程度で十分です」。


 
また、干す際にもひとつ注意点がある。カラッと天日干ししたいところだが、実は部屋干しや陰干しがベスト。特に色物は紫外線による日焼けで変色の進行が早まるので気を付ける必要がある。
 
部屋干しで臭い残りを気にされる人が多いのですが、それは洗いが不十分な証拠です。僕は長年この洗濯法を実践していますが、部屋干し臭がすることはありません」。
 
服を壊さずに、汚れを落とすためのTシャツ洗濯術。次回は、すでに黄ばんでしまったTシャツの復活法を紹介しよう。

▶︎黄ばんだTシャツの洗濯方法を知りたい人はこちら

外山壮一=文

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