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2022.08.21

ライフ

家電ブランド「カドー」副社長兼デザイナーの原動力「作りたいものがあればどこへでも行く」

株式会社カドー 取締役副社長・デザイナー 鈴木 健

株式会社カドー 取締役副社長・デザイナー 鈴木 健


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“空気をデザインする”をモットーに、シンプルでスタイリッシュなデザインと優れた機能性を兼備した家電を作り続けている「カドー」副社長兼デザイナーの鈴木 健さん。

そんな鈴木さんのFUN-TIME事情を直撃!

酒を飲みながら絵を描いているときが最高にFUN!

「よかったらこれ、飲んでくださいね」。そう言うと鈴木は、よく冷えたお茶をすすめてくれた。自らデザインしたという雪だるま形の愛らしいグラスは、リビングに違和感なく馴染む。

それもそのはず。この自宅は、2年ほど前から鈴木が図面を引きリノベーションをしたのだ。

メゾネットタイプの室内中央にはお洒落な螺旋階段が設えてあるなど、内装は自身が手掛けるブランド、カドーのプロダクトのようにスタイリッシュ。鈴木は、ステンレスで統一したキッチン回りを眺めながら「搬入するのが本当に大変でした」と、目を細める。

カドーは2011年に設立し、翌年に家庭用空気清浄機を発売して以来、老舗がひしめく日本の家電市場において絶大な支持を獲得している家電ブランド。革新的なデザインと優れた機能性を兼備したプロダクトは、家電業界の注目の的となっているのだ。

鈴木は副社長兼クリエイティブディレクターとして社を牽引している。そんな鈴木にとってのFUN-TIMEは、やはり物作りと関連があるようだ。

「次は何を作ろうかなって考えながら、絵を描いているときですね。iPadを持って酒を飲みながらひとりで思いつくままに描いているのですが、そのときこそが自分にとってのFUN-TIMEです。

この家を作っているときはそのことばかりを考えていました(笑)」。

そして、今作りたいと考えているのは電動モビリティ。

「電動キックスケーターが今年の4月に道路交通法が改正されたことによって手軽に乗れるようになったので乗りたいですね。

実は電動キックスケーターのデザインもしてみたいと思っているのですごく興味があります。どんなモビリティがあるのか気になり、YouTubeなどでついチェックしてしまいます」。

「あ、もちろん外遊びも大好きです」と、続ける。オーシャンズはよく読んでいるというだけに、取材の勘どころもちゃんと掴んでいる。

「最近は川遊びが多いですね。先日も解禁になったので鮎釣りに行ってきました。今流行っているサウナテントも発売してすぐに買ったので、それを持って出かけたり……。

あと滋賀県の実家では農家を営んでいるので、その手伝いのために年に4、5回くらいは帰っています。そこで遊んだりもしますし」。



物作りに活かせるようにと、普段から多くのアンテナを張っているという鈴木は、ふたつの会社を運営しているのだ。

「ひとつは先ほど話したカドーというメーカーで家電の製造と販売を、もうひとつはアエテというデザイン事務所を運営しています。アエテではカドーのクリエイティブ全般をやる一方、プロダクトデザイナーとして、いろんなクライアントさんのデザインを手掛けています。

僕は家電作りが得意ですが、4年ほど前から日本の伝統工芸もデザインしたいと思い始めて。でもやりたいからといって、そんなに都合良くくるものではないので、いろいろな伝統工芸の産地を実際に回り、勉強をしながら仕事をもらっていました。

いつも、やりたいことや作りたいものがあれば自分から売り込みに行きます。(冒頭のグラスを持ちながら)ちなみにこれは双円(ソウエン)という自社のブランドのグラスなのですが、能作という富山県にある鋳物メーカーさんへ工場見学をさせてもらうなどし、関係性を構築し商品化を実現しました。

作りたいものがあれば、いつも先方へ直接足を運んで教えを請うている感じです」。

好きなものを作るのであれば、家電と関係なくてもいいと断言する。この考えにいたるには、カドーをスタートさせる以前、大手家電メーカーのインハウスデザイナーとして働いていたが、そこを辞めたことが大きいと振り返る。

「インハウスデザイナー時代は、ずっと家電のことしか考えなくなってしまい、自分のデザイン力が向上していかないと感じたのと、もっと本質的なことを考えてひとつのデザインを極めていくような仕事がしたいと思い始めたのをきっかけに独立しました。

独立をすれば、家電だけではないプロダクトのデザイン、工場などで使うような大きな作業機械や食器、家具、今いるこの自宅もそうですし、いろいろなことができるわけじゃないですか。

そして、さまざまな企業の方たちと交流を持つことで、僕のメインである家電のデザインに新しいアイデアが生まれたり、勉強になることがたくさんあると思ったんです。

だからこそ会社をふたつに分け、デザイン業を分担すればカドーのデザインも成長するでしょうし、さまざまなメーカーのデザインに携わることが増え、実践的なアドバイスもできるようになるわけです。ふたつの軸足を持っていることは、お互いにいい影響を与え合っていると感じています。

そういった意味ではこれからの時代、どんな仕事でも軸足をいくつか持つということはすごく大事なことだと思います。僕の場合は本職に対してクオリティの高いアウトプットが出せていると感じています」。

会社のスローガンである“空気をデザインする”という言葉には、単に空気をクリーンにするだけではなく、空間の雰囲気までをもデザインするという思いが込められている。

コロナ禍から徐々に立ちなおりかけている、今の世間に漂う“空気”についてはどう思っているのだろうか。鈴木は顔を歪めながら即答で「嫌ですね!」のひと言。

「この行き詰まった雰囲気が嫌いなので変えたいですし、変わってほしいと思います。変わることで良くなるかはわかりませんが、現状がすごく嫌。

こんな空気だからこそ自分の仕事も、何もしないで止まっているよりも、失敗してもいいから何かしないと! という気持ちはすごくあります。とにかく新しいことにチャレンジしたいという思いが強いです。

デザイン業界ひとつをとっても、僕のように家電のデザインを手掛けつつ、伝統工芸をデザインするような人が増えていて“自由な空気”が生まれていますし、今後はそういうポジティブで開かれた空気が、もっと世の中全体に広がらなければいけないと思っています」。


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