言葉③「対立的な意見も自分のため。大切なのは、どう変換するか」
Q:サッカーもビジネスも、人との連携が不可欠ですが、どのように意識していますか? 僕は、自分の中だけで答えを見つけられるタイプじゃなくて、人との対話の中で「あ、そのアイデアいいよね」とか、人からヒントを得ることが多いです。発明はできないですね、僕は。
Q:人からヒントを得るために意識していることとはありますか? まず自分がどういう人間で、どういう思考であるかっていうことをしっかりと分かってもらうことですね。そのうえで、自分のことも話しますけど、周りの人達がどんな考えなのかなっていうのも興味があるので、話を聞く。
他者との会話っていうのは、すべて自分のためになると言うか。要はどのように変換するかだと思うんです。 Q:その考え方は企業のトップとしても生きていますか? ある人に、「自分にとって耳障りなことを言ってくれる人を、必ず近くに1人は置きなさい」ってアドバイスをもらったことがあるんです。「嫌だと思うかもしれないけど、絶対にそれは必要だよ」と。
いろんな見方がある中でそれを言ってくれる人は価値があるし、それが仮に間違っていたとしても、愛情を持ってちゃんと苦言を呈してくれる人、自分のためを思って言ってくれる人であれば、その人を安心させるために自分を成長させればいい。
それって、つまりサッカーのサポーターなんですよ。僕はサッカーで、人生のほとんどを学びました。全部詰まってるんですよね、サッカーに。
Q:「結果」が必ずしも解でないケースもあると? これ、サポーターと話をしていて、気づいたんです。僕は勝てばいいと思っていたんですよ。勝つのが全てだろうと。
そしたら、サポーターから言われたんです。「分かってないな、啓太は」って。「じゃあ求めるもの何なの?」っていろいろ聞いていくじゃないですか。
そしたら、ほぼ全員が「戦う姿を見たい」って言ったんです。
「美しいサッカーが見たい。でも美しいけど戦ってないサッカーは美しくない」と。これ、めちゃくちゃ面白いなと思って。
だから浦和レッズが強くて、結果を出して、お客さんがいっぱいいたっていうのは、ただ強かったからじゃないんです。 みんな戦う集団だったからなんです。社長も選手も、みんなそうなんですよ。戦ってる姿をみんな見たいんですよね。
Q:最後に鈴木さんのこれからの夢、目標を教えてください。 最高に楽しい人生を歩むことですね。何のために生まれたかって、幸せになることじゃないですか。
僕はサッカーをやって、今ベンチャーをやって、後々クラブの経営とかやりたいですけど。それも全部幸せで、楽しい人生を歩みたいっていう手段だと思うんです。
生きてるだけで楽しいですし、悩んでる時間なんてもったいない。あと何年生きるんだろうって考えれば、毎日が感謝で、こんなに楽しいことないでしょって。
だから何やっても最高なんですよ。失敗したって最高なんですよ。失敗を恐れてチャレンジしないことの方が、もったいないなって。
大丈夫です。大概のことは、「すみませんでした」って謝れば何とかなるんです(笑)。
[Profile]鈴木 啓太(すずき・けいた)1981年7月8日静岡市生まれ。東海大翔洋高校卒業後にJリーグの浦和レッズに入団すると、06年にJ1優勝、07年にはAFCチャンピオンズリーグ優勝に貢献し、2年連続でJリーグベストイレブンを受賞。06年には日本代表に初選出され、28キャップ。15年に現役引退し、腸内フローラに関するコンディショニングサポート事業を展開している『AuB(オーブ)株式会社』の代表取締役を務める。