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ロシアからなら、渡航費150万円

ウラジオストクからなら渡航費はしめて150万円、大学の学費より少し安い程度くらいだ。もちろん英国からロシアへの航空運賃、乗船前にロシアでのホテル代は別途かかる。
出港まで、ロシアの船会社との手探りのやりとりが繰り返される。なにせ最初は信頼関係もなく、渡航費も「150万円全額前払い」と言われたが、交渉の結果、60%は前払い、40%は船を降りる時にキャッシュで、という条件でまとまる。つまり「残金を払わなければ船から降ろさない」約束だったので、「お前って人質みたいだな」が航海中の定番ジョークだった。実際にはローワット氏は航海中、デッキの下に、残金40%を入れたバッグを意図的に置いておいたのだが。
結局、ロシア人ベテラン船長のほかに、ロシア人船員2人の乗員も決まり、出航が決まった。乗船メンバーは、ヨットで日本一周を経験したこともあるベテラン船長と、2人の船員。
東アジアの海を知り尽くす3人のロシア人船員とともに、奇妙な船旅が始まった。ちなみに偶然、エンジニアと料理人は2人ともアレックスだったので、ローワット氏は彼らを「アレックス1」、「アレックス2」と呼んでいたという。3人とも、東アジアの航海に慣れた手練れのメンバーだった。
1回目の渡航の乗員たちとローワット氏(左から2人目)

「コロナによる世界の死者数が1万人超え」の日に出発

ローワット氏は、まず2020年9月24日に飛行機でロンドンを出発、ウラジオストクに到着後、29日に出港する。ちなみにこの日は、コロナ禍による世界の死者数が1万人を超えた日だったという。
ヨットはニュージーランド製の「ティブロン(スペイン語で「サメ」の意)」。全長約13メートル、速度は速い時でも8ノット(時速15km)ほどだ。
実際のところは、ローワット氏と乗員との信頼関係は出港前から証明されていた。というのも出港予定日にまだ60%の渡航費の入金が確認できない、という状況が起きていたのだが、船長のディマンが「ティブロンのオーナーには話をつけたよ」と言って、予定通り出港してくれたからだ。
1回目、昨年の航海の船長ディマンと、2回目、今年の航海の船長、セルゲイ
強い船の揺れに翻弄され、日々予想外の発見を体験しながら、ロシア出国から15日間経った10月14日、午前10時すぎ、ヨットは博多港に入港した。
しかし入管では、係官がパスポートを持って奥に入ったもののずっと出て来ない。そして別の係官が現れ、ウラジオストクを出港した日付(9月27日)と、その日の日付(10月14日)を見比べ、「たしかに14日、2週間経っている」と確認する。
条件は満たしているということで上陸許可は降り、無事に日本への入国が叶った。



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