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自動車業界に吹き入れるベンチャーの風

昨今のテック系ベンチャーらしく、2021年4月には「キャンパス」と呼ぶ新社屋の建設も発表された。自社製品の生産・開発のみならず、他社へのバッテリーシステムのOEM供給も決まっているそうだ。
約2500名の従業員を迎え入れる「キャンパス」もは生産工場だけでなく、R&D施設やテストコースも備えられる予定。
新社屋の予想図。敷地内ではオーガニック食品が生産され、羊も放たれるという。
また従業員の待遇を最優先し、ゲームルームやジム、幼稚園、ミュージアム、牧場なども完備されるらしい。ブガッティ・リマックの本社もここに入居するが、ブガッティの生産は従来通りフランスのモルスハイムで行われる。
つまりEVのハードウェアの基礎はリマックが担当し、ブガッティとリマックの「製品」としてのテイストや仕上げはそれぞれで異なる、ということだろう。
新社屋で気になるのは、テストコースにはドリフトをしないと曲がれないコーナーが設けられる、と噂されていることだ。リマック・グループはYouTubeで積極的に動画を公開するメーカーなので、そのうちドリフトするテスト車両が見られるかもしれない。
ネヴェラの航続可能距離は550km(WLTCモード)。車両本体価格は200万ユーロ(約2億6000万円)からで、150台の限定生産となる。
というのもリマック・グループは新興EVメーカーらしく、従前の自動車メーカーとはマーケティングのアプローチも異なる。
一般的に開発途中の車両情報は自動車メーカーから一切発信されないものだが、ネヴェラも「C_Two」の名前で開発が進められてきたときから積極的にYouTubeで公開されてきた。
あらゆるデータを収集して、ドライバーがサーキットをより速く走れるためにアドバイスする、世界初のAIドライバーコーチ技術も用意されている。
今回の発表はリマック・グループが“ハイパーEVメーカー”としての立ち位置を確立させたことと同義だ。またブガッティが昨今のEV化の流れに乗るという表れであり、そのためにリマック・グループの技術力を高く評価しているという証でもある。
なおリマック・グループの株式はポルシェが24%、現代自動車12%、創業者37%、その他24%が保有している。
「その他」にはジャガーやケーニグゼグ、中国のバッテリーメーカー「キャメル・グループ」、カナダの大手自動車部品メーカー「マグナ」などが株主として名を連ねている、と言われている。
E30でレースを楽しんでいた21歳が、今や世界中の自動車関連会社を魅了している。「いつかはスーパーカーに」と憧れるなら、業界の“第7世代”の急加速から目を離さないほうが賢明だろう。
 
古賀貴司=文


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